研修の狙いと効果を語る 社内の対談をご紹介いたします。
企業が求めるヒューマンスキルのかたち
「ヒューマンスキル」とは
- ――まず「ヒューマンスキル」という言葉ですが、はっきり申し上げて意味不明の言葉です。しかし今、企業で大事なスキルは部下を指導していく上での「ヒューマンスキル」、いわゆる人間力というようなものが欠かせないといわれ、注目されているそうです。実際、管理者養成学校の研修に派遣されるお客様の方から「ヒューマンスキルを伸ばして欲しい」というようなニーズはあるものなのでしょうか?
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生方 「何をもってヒューマンスキルというのか」これをまず明確にする必要がありますが、今挙げた部下を指導していく上での人間力、そういう観点でのニーズは確かにあります。
例えば、管理者にとってのヒューマンスキルといえば「具体的に部下に仕事を与える」「会社のビジョン・方針を伝える」などがあります。その他にも「どのように部下と関わったら良いのか」「仕事を通じてどのように部下の能力を引き出したら良いのか」などの問題もあります。要するにコミュニケーションスキルですね。そういう観点でいくと、やはり非常に大きなニーズといいますか、求められているところは多いですね。
- ――源講師は、受講生や派遣責任者の方からそういった抽象的な注文や指導の依頼があることはありますか?
- 源 ヒューマンスキルという言葉ではないですけれども、それはあります。今言った部下との関わり方や部下の動かし方、部下との信頼関係など「この辺を特に重点的に気づかせてほしい」「何か分からせて欲しい」などの要望はあります。
ヒューマンスキルが生まれた背景
- ――この指導力開発訓練の狙いというのは、何になるのでしょうか?
- 元橋 その前に「ヒューマンスキル」という概念についてお話します。実はこの兆候、そんな古いものではないんです。大体3~4年ぐらい前から流行り言葉のように出てきたんです。「人間力」と置き換えても構いません。
では、一体なぜこの言葉が生まれたのか。私なりに捉えているのは「世代が大幅に変わってしまった」ということです。つまり、管理者自身が育てられてきた時の上司との関係と、自分が上司になった時の部下との関係、この辺が時代とともに大きく変わってしまったんです。
にも関わらず、自分たちが受けてきたような気持ちで部下に接しようとすると、部下の反応が非常に悪い。さらに厳しく叱ったり、厳しく注意したりすると、すぐに部下は切れてしまう。あるいは、逆にやる気を失ってしまう。こうしたことから生じる管理者側の悩み、これが時代とともに大きくなっているというところから派生してきているんじゃないかと思いますね。そこで私はお客様からそういった要請がある時は「指導力開発訓練コース」をお薦めしているのです。
指導力開発訓練のポイント
- ――「指導力開発訓練コース」で最低身につけなければいけないことはなんですか?
- 源 まず根底にあるのは、リーダーとしての精神や心構えです。いかに部下の能力を引き出し、強い精神を養わせるか。それが「指導力開発訓練コース」だと思うのです。そのために、まずは自分がリーダーとして自覚をもって部下に正しく仕事を与えたり、褒めたり、あるいは注意しながら育てていくことを指導します。
しかし、当然部下の反発もありますから、説得力も養わないといけません。そこで、褒め、注意、仕事の与え方、それから説得を大柱として、色々なロールプレイを行います。その体験を通してレベルアップして頂く。これが「指導力開発訓練コース」です。
管理者研修における人間力教育
- ――問題なのは、派遣責任者の方が派遣した社員をどのように仕上げたいのかビジョンをもたずに、とりあえず派遣しているケースだと思います。「帰ってきて声が大きくなりました」「礼儀正しくなりました」だけでは、成果があったと言えないわけです。「指導力開発訓練コース」で得たものを、現場でどのように活かすのか」というのが、具体的かつ数値化された目標値として表せると良いと思うのですが?
- 源 難しいところですね。数字的に「これだけになった」というのは、残念ながらないと思います。それがヒューマンスキルというところの難しさだと思います。
元橋 しかし「指導力開発訓練コース」を受けた指導者によって、今までうまく機能していなかった部門が生き生きと機能し始めたという評価は派遣元の企業様から頂いています。これはとても大事なことです。
今まではどちらかというと、技術力の方を優先して管理者になっているわけです。ところが、今は時代的にも人間力の方が求められています。預かった部下・部門を活性化し、部下が生き生きと仕事をしてくれる。仕事をしてくれるということは、当然業績に反映するわけです。そういう意味で「活性化力」につながるのが、この人間力教育だと思うのです。そういう面では、私共の「指導力開発訓練コース」というのは貴重な存在だろうと考えています。
企業・派遣責任者が期待するもの
- ――「指導力開発訓練コース」に対して企業が期待する、もしくは派遣責任者が期待する仕上がりといいますか、会社に帰ってきてどのようなことができていると「管理者養成学校の指導力開発訓練にいって良かったな」という評価が下されるのですか?
- 元橋 派遣責任者の方が「指導力開発訓練コース」に求められるものというのは、注意、叱り方、その比重が一番大きいですね。それから、次は褒め方です。そのあとは、仕事の与え方です。「注意、叱る」、「褒める」。それから「仕事を与える」。また、「説得」というのも大きなテーマです。ここに評価のポイントがあると思います。
- ――その辺りというのは、むしろ親が子供に教育する点ですよね。
- 元橋 そうですね。でも今は、それができない。
源 どうやって褒めたら良いか、注意したら良いか、叱ったらいいかというのは意外とできないんですね。でも、参加された方から一番よく聞くのは「褒め方や叱り方以上に、自分が部下に全然関心がないことに気づかされた」ということなんです。
また、よくお客様から「コーチングとどう違うんですか」ということを質問されるんですが、私が思うに「指導力開発訓練コース」には、コーチングの内容が全部入っていると思います。そしてさらに「説得」をテーマに事例研究とロールプレイを進めます。これによって「指導力開発訓練コース」は、総合的な人間力がトレーニングされるという感じを持っています。
要するに、本人のスキルのみならず上司部下の人間関係などの心理的なところまで突っこんだ訓練をします。だからこそ、説得力がアップする。これが「指導力開発訓練コース」の大きな特徴だと思います。
「説得」の必要性
- ――「説得」といわれると、何か嫌なことを聞かされるような気がしますが、具体的にはどういった時に必要なのですか?
- 元橋 本当に説得するとなると、例えば「退職したい」などと部下が言った時になります。そうした社員の辞めたい理由を聞いたり、その人の必要性を話していると、中には「自分は期待されていないんだ」と勘違いする身勝手な人がいます。普段は言わなくても、そういう時は「会社はこのように期待しているんだ」という話をしっかりとしてあげる必要がありますから、それで気持ちを治めるといったことによく使います。
生方 「指導力開発訓練コース」の説得の事例としては「配置転換や部門同士でのちょっとしたいざこざをうまくまとめる」などがあります。特に「こんなときに説得をしなさい」とか、そういう話ではないのです。褒めるや注意するも全部そうなのです。
部下との信頼関係
元橋 人間関係ができていれば、説得というのは非常に効き目があります。伝えたいことと、相手の理解度が高まるのです。説得というのは、とても難しいのです。説得をするには、説得する人とされる人の間に信頼関係がなければいけない。それに、説得するというのはものすごく体力がいる。だから、皆できないんですよ。
その一方で「説得しなきゃいけない」「なんとか理解させなきゃいけない」という立場の上司が、相手の気持ちを聞いて「分かった」と簡潔に答えを出してしまう。これも説得ができないタイプですね。 説得するという技術は多面的に体験しておかないと、管理者たる者の資格には劣るということになるでしょう。
- ――説得というのは、見返りがないような気がするんです。そうすると、それは技術として成立するものですか?
- 生方 技術的なものもあるのでしょうが、私は訓練というのはトレーニングしていくうちに技術が感情に移入していくことじゃないかと思っています。感情の啓発というか、感情面、情的な面に入っていく。そこで初めて信頼関係や情関係が結ばれて成功するというか、成立するのではないでしょうか。
- ――ということになると、まず信頼関係を築くための訓練をしないと駄目ですね。
- 元橋 信頼関係というのは、そんなに簡単にできるものではありません。まず上司は上司たる、管理者たる意識と行動を示していかないといけません。そうすることが、総合的に社員から信頼性を高めることなんです。そうすれば、何か説得をされた時に理解力が全然違ってきます。私は総合的に人間力やコミュニケーション力というものは、訓練によってかなり高まるだろうとみています。また、それをお客様は期待されているはずですし、指導する側もそういう方向で指導しています。
指導力開発訓練で克服できる4つの弱点
時代に即した訓練
- ――「指導力開発訓練コース」で、時代にそぐわないというものはありませんか?
- 元橋 本質を変えることなくその都度改革しているので、それは全くありません。
- ――では、 若い管理者の方が受講された時に「今そんなことやんないでしょう」といったことはないですか?
- 源 ないですね。
生方 逆に、今はそういったことが必要です。私が、参加して良いなと思ったのは「叱る」というテーマでのロールプレイです。「えっ、これって『叱る』なの?」と、目からウロコでした。普通叱るというと、間違ったことをあげつらって、注意して、非難してというイメージなのですが、全然違うんです。ロールプレイを行っていて、これは学校の先生に必要なものじゃないかなと思いましたね。
- ――具体的に話して頂けますか?
- 生方 非常に元気のない今風の若者である部下に対して、問いかけるように、語りかけるように話をしていくのです。そして、次第にその部下が身を乗りだすようにして「はい、ありがとうございます」と言うようになる。そういう、積極的に感謝の言葉を自ら発していくロールプレイです。私は、“叱る”ということの捉え方が一変しましたね。
源 「指導力開発訓練コース」は、全て一方的ではないのです。「なんで俺の気持ちが分からないんだ」ではなく、何をどう考えているのかを突き詰めて聞いていく。そして、本当にそれで良いのかを本人に考えさせて、さらには答えを出させる。
元橋 それがこの訓練の特徴です。「指導力開発訓練コース」は、教えるんじゃない。レクチャーじゃないんです。こういう方法が管理者養成学校の訓練の特徴であることを、もっと明快に打ち出した方が良いかもしれませんね。
業界を問わない
- ――「指導力開発訓練コースをこのようなお客様に勧めたい」というのがございましたら、教えて下さい。
- 生方 私は「業界問わず」必要であると思います。どんな業界・業種でも、いずれ自分達が会社からいなくなるという状況が訪れます。その中で、部下や後継者をどう育成していくのか。そういう時に、やはり指導力が求められるのです。部下を育成していく手法を身につけて、部下や 後継者 を育成していく。ですから、業界を問わないんです。
元橋 中でも、特に技術系の会社はコミュニケーション能力ができていません。技術力があっても、ヒューマンスキルがない技術系の人達には、正しい仕事の与え方や正しい人間関係のあり方を勉強してもらいたいと思いますね。
- ――これまでに「指導力開発訓練コース」を受講された企業様で「うまくいきました」というような成功事例はございますか?
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元橋 1つ挙げると、ある物流企業です。その企業はそれまで「 管理者養成基礎コース」がメインの研修で「指導力開発訓練コース」は受講していなかったのです。そこで、私はその会社の支社長に対して「指導力開発訓練コースの受講をオススメします」という話をしました。
その後受講されたのですが「部下を育てなければいけないんだ」という自覚が管理者に身につき、修了生が一段下の係長5~6名を集めて、自分が学んできた内容を一つひとつ指導するようになりました。この指導制が非常に理解度が高く、浸透したわけです。
ヒューマンスキル維持のために
- ――「指導力開発訓練コース」修了後「訓練受講前と変わらない状態に戻ってしまった」というようなお話はございますか?
- 源 「管理者養成基礎コース」では「大きい声だったのが小さくなった」といったことはあるのですが「指導力が元に戻った」という話は聞いたことがありません。
- ――修了後、再度受講される方はいらっしゃいますか?
- 源 これはいらっしゃいます。2回受けた方はもちろん、場合によっては3回、4回と受講されている方もいらっしゃいますね。
- ――それは何が理由なのですか?
- 源 結局、1回だけではなかなか難しいですから「よくつかめなかった」という方が参加されているようです。また「もっと勉強したい」「感動が大きかったからもう一度その感動を味わいたい」という方もいらっしゃいますね。
- ――2回目来られる方はかなり確信犯なわけで、中には具体的に 部下の顔を頭に浮かべながら受講される方もいると思います。そうなると、直接に問題とその解決法の相談を受けるといったこともあるのではないですか?
- 源 ありますね。「自分はこういうことを分かってもらいたいんだけれど、何故分かってもらえないんだろうか」と、そういう相談を訓練の合間にされたりします。
- ――そういう場合「失敗したからもう1回」ということが多いですか?
- 源 いえ、それはどうか分かりません。結局、正解は1つではないんです。「こうやったら絶対うまくいく」というのがあれば一番良いですが、残念ながらそれがないので皆さん苦労されています。ただ、方向性ははっきりしてくると思います。
テーマは4つの柱
元橋 そもそも管理職というのはやることが多すぎて、何に絞って良いか分からないんです。ところが「指導力開発訓練コース」はテーマが多くありません。テーマを考えてみると、「注意・叱る」、「褒める」、「正しく仕事を与える」、「説得」。この4本の柱なんです。そして、この4つの柱は色んなことに関連しています。
源 それを言葉できちんと表わすと「指導力開発訓練コース」でやっていることがすごく明快になります。
生方 「注意・叱る」、「褒める」といった スキルを身につける訓練、ということですね。
元橋 それともう1つ「指導力開発訓練コース」で学ぶ4本の柱は、管理職にとって一番弱い面なのです。「注意・叱る」、「褒める」、「仕事を与える」、「説得」。これは弱点なんです。人間の弱点なのかもしれませんが、皆これから離れてしまうんです。
しかし、これらの弱点を克服できれば、非常に大きな力に変わると思います。これは、営業的なトークに使えるのではないかと思いますね。
- ――「管理者の弱点4項目の克服コース」ですね。
- 元橋 その中でも特にできない部分は「注意・叱る」と「褒める」です。そして「仕事を与える技術」。経営者は管理者が注意していないことが分かっているから、研修ニーズのヒアリングの時にそれを話すだけで納得されますね。「管理者が最も弱点としていることを補います」。これだけで、立派なトークになります。
源 「指導力開発訓練コース」は、言葉と言葉の間の取り方と言い回しにもすごくこだわります。
元橋 要するに、指導者という立場で取るべき行動と感情表現ということです。
演技力を磨け
- ――ある意味「役者になれ」ということですね?
- 元橋 そういうことです。表現力ということ自体、演技力が重要ですから。
生方 管理者としての演技力を育成します、ということですね。
元橋 規律を守り、先頭に立ち、ビジョンを示し、正しく仕事を与える。そして褒めて、叱って、時には涙を流し、部下を育成する。そうすることで業績は上がる、ということです。
――本日はありがとうございました。
【指導力開発訓練】
部下の指導研修とコーチングに。コミュニケーションスキル・リーダーシップをトレーニングして部下育成の指導力を強化します。