フランスからのレポート
フランスのTV番組「ENQUETE EXCLUSIVE」にて社員教育研究所が2回にわたる特集を組まれ、放映されました。
前編
- ナレーター
- 日本の中央部に位置する静岡県、JR富士宮駅前。
- 歌声
- 「額に、汗して~~~」
- ナレーター
- 通行人が当惑した表情で、この訓練を見ている。
この訓練の目的は正確に歌うことではなく、羞恥心を捨て、誰の前でも大声で歌うことによって自信をつけること。
- 歌声
- 「人の2倍を歩くのさ~~」
- 訓練生
- 「ありがとうございました!」
- ナレーター
- ×だったら、だめ。やる気が足りないということで、やり直しになる。
- ナレーター
- 日本は、労働力で世界第2位の経済大国になった国である。週の平均労働時間は55時間、有給休暇は1年で2週間以下。現在、不況の真っ只中にある日本だが、現状は殆ど変わることはない。今回、入社もしくは昇格のためには通らざるを得ない訓練を紹介する。この訓練は、通称「地獄の訓練」と呼ばれている。
- 講師
- 「スピーチの志願者は?」
- ナレーター
- 上司の尊重。
- 講師
- 「ひとつ、社長の命令に従うこと」
- ナレーター
- 厳しく、効率的に。
- 講師
- 「遅い!遅すぎ!用意!」
- ナレーター
- 彼らは13日間、衝撃的な訓練によって様々な試練を受けることになる。今回私達は訓練生である鈴木将之氏と後藤卓也氏の訓練を取材することになった。数年間、失業状態だった鈴木将之氏は、つい最近、会社員になったばかりである。そして、鈴木氏とは全く違うタイプの25歳の社員、後藤卓也氏。
訓練生鈴木将之
- ナレーター
- 東京湾、横浜市。実家で暮らす33歳の鈴木氏は、3日後、仕事に対する意欲を高めるため、管理者養成学校へ行く予定である。建築を専攻したが、学校卒業後、仕事が見つからず、悩んでいた。
- 鈴木
- 「消極的な人間ですので言いたいことがうまく言えないのです」
- インタビュアー
- 「仕事を探す時にそれは問題になりますか?」
- 鈴木
- 「仕事を探す時は問題ないですが、職場ではやる気が感じられないとよく言われています」
- 母
- 「将之、ご飯ですよ」
- ナレーター
- 息子のことを考えると母親は心配を隠しきれない。4年間無職で、ようやく最近、工場での仕事が見つかった。 管理者養成学校ですべての訓練に合格し、修了する事はとても難しいそうだ。
- 母
- 「短気だからね。ちゃんと食べないと心配になるから、ちゃんと食べなさい」
- インタビュアー
- 「管理者養成学校に向かうに当たって伝えたいことはありますか?」
- 母
- 「途中でやめないで、頑張って、ね」
- ナレーター
- 母のためにも会社のためにも、鈴木氏は管理者養成学校で訓練を受け、試験に合格するしかない。
- ナレーター
- 翌日、川崎市、朝7時半。通勤に1時間かけ、鈴木氏は工場に到着する。今夜、管理者養成学校へ入校するため、荷物も持ってきている。
- 鈴木
- 「おはようございます」
- ナレーター
- 建築を学び卒業をしたが、この会社では、流れ作業による液晶テレビや車で使うチップの故障確認作業を行っている。
会議室には社長を含め、社員達の修了証書が壁に飾ってある。社長は2回ここ管理者養成学校で訓練を受け、修了した。
出発の前に課長が最後の激励の言葉をかける。訓練で鈴木氏は後藤卓也氏と同行することになる。
- 課長
- 「後藤さんは問題ないと思います。去年は最優秀社員だったから」
- ナレーター
- 課長は、鈴木氏は気が小さく内向的であると感じている。
- 課長
- 「鈴木さんの場合、ちょっと厳しいかなと思っています」
- ナレーター
- 課長にとって一番大切なことは、訓練中は講師の言うことに素直に従えるかどうかだと思っている。
- 課長
- 「訓練では色々やらされます。ま、でもあくまでも外部でのことだから、恥を掻いてきてもらって結構です。泣いても大丈夫。自分の欠点を全部捨ててきてください。頑張るしかないです。訓練が終わったら、何か変わったことに同僚も気づくと思います。気をつけてください。頑張ってください」
- ナレーター
- 会議室から出た2人は胸が詰まる思いだ。
- 鈴木
- 「すごく緊張します。業務に集中できません」
- 後藤
- 「気にしないようにしています。もう、頑張るしかないと思います」
- ナレーター
- 15時、工場から出て、管理者養成学校へ向かう。これから、13日間、インターネットも電話もできない、都会から200キロ以上離れた富士山の麓での訓練に没入することになる。
訓練開始前夜
- ナレーター
- 19時、夕暮れの雨の中静岡に到着。駅から管理者養成学校のミニバスで36人の訓練生と共に現地へ向かう。訓練生達はお互いのことを全く知らない。全国から様々な職種の人たちが訓練を受けにきている。
- ナレーター
- 到着時の最初の教え:受付に誰もいない。テーブルの上に書類や制服があるのみ。現状を理解するまでに20分はかかる。
- 後藤
- 「ここに書いた?」
- 鈴木
- 「書かなきゃ」
- 後藤
- 「本当?」
- ナレーター
- 20分間の孤独、それは訓練生の緊張感を高めるため、自分で考えて行動させるためである。
- 鈴木
- 「どこ行けばいいのかな~?」
- 後藤
- 「ここから・・」
- 鈴木
- 「外へ行く?」
- 後藤
- 「ここから訓練はもう始まっているんだと思うな」
- ナレーター
- 指示する人はだれもいない。自分の訓練室を見つけるために訓練棟を廻る。初っ端から管理者養成学校の基本方針を感じさせられる。快適とは言えない。
- 鈴木
- 「失礼します。3班はここですか」
- ナレーター
- 鈴木氏はすぐに慣れることができないようだ。13日間、7人の訓練生と共にこの大きな訓練室で生活を共にするのだ。
- 鈴木
- 「びっくりしました」
- インタビュアー
- 「何を着ているのですか?」
- 鈴木
- 「学校の制服です」
- ナレーター
- 訓練棟や訓練服。訓練生は軍隊の様な環境と出会う。そしてその管理者養成学校の講師達。翌日朝8時半。富士山の麓、朝焼けの中、訓練が始まる。
訓練初日
- ナレーター
- 訓練1、挨拶の基本。
- 講師
- 「座って!座ってと言ったらすぐに座って。正座の場合、背中を真直ぐ、指も体にくっつけて。休め!起立!遅い!」
- ナレーター
- 朝8時半からいきなり訓練は始まる。
- 講師
- 「正座!起立!」
- ナレーター
- 講師が矢継ぎ早に指示命令を出す。
- 講師
- 「正座!」
- ナレーター
- 同じ動作を何度も反復練習する。
- 講師
- 「おはようございます。1、2、3。おはようございます。1、2、3。おはようございます。1、2、3。お辞儀して下さい。もっと、45度。45度は90度の半分です」」
- ナレーター
- 講師が1人1人の短所を確認し、正す。
- 講師
- 「真直ぐ、あごを下げて、頭を真直ぐ。あごを下げて。はい、良し」
- ナレーター
- 鈴木氏にとっては、これだけでも努力を必要とする訓練だ。
- ナレーター
- 訓練2、発音
- 講師
- 「あ!あ!繰り返し、あ!あ!声が聞こえない。口を開けて、平行に指3本を口に入れてください。指を抜いて、声を上げて、はい!はい!口の開き具合が足りない。やり直し。指3本を平行に口へ」。
- ナレーター
- 「あ」から「わ」まで、全部1文字ずつ。
- 講師
- 「口の開き具合が足りない、もっと!」
- ナレーター
- なめらかに言えるようになるまで繰り返す。1つ目の訓練の試験が始まる。訓練生たちは1人ずつ、自己紹介及び管理者養成学校に来た目的を皆の前で述べる。
- 講師
- 「金子祐基」
- 訓練生
- 「はい、神奈川県から参りました金子祐基と申します」
- 講師
- 「聞こえない!声を上げて!」
- 訓練生
- 「会社ではいつも作業を後回しにしてしまいます。完成まで時間がかかるのでこの訓練でそれを直したいと思います。以上」
- ナレーター
- 大切なのは話し方である。内向的な鈴木氏の番が来た。
- 鈴木
- 「神奈川県から参りました鈴木将之です」
- 講師
- やる気が全くない」
- 鈴木
- 「はい」
- ナレーター
- すぐに講師に止められた。2回目、もっと最悪。
- 講師
- 「鈴木将之!」
- 鈴木
- 「はい」
- 講師
- 「聞こえない!外で練習してきなさい!」
- ナレーター
- 早速、外で講師の特訓を受けることになる。3回目、やっと、自己紹介や目的を述べることができた。
- 鈴木
- 「鈴木将之です。今まで弱気で率先力が全くありませんでした。13日間、ここでこの欠点を直したいと思います。やる気がある人間だと見られたいです。以上」
- 講師
- 「頑張って下さい」
- 鈴木
- 「ありがとうございます」
- 講師
- 「礼!」
- 鈴木
- 「ありがとうございます」
- ナレーター
- 訓練は始まったばかりだというのに、新入訓練生である鈴木氏の顔は蒼白である。鈴木氏の不安が伝わってくる。講師によると、これから本当の訓練が始まるという。
- 講師
- 「声が小さい、動きが遅い、やる気が全く見えない。これから訓練生達の意欲を出すために、もう1段階プレッシャーを掛けていく予定です」
- ナレーター
- 更なるプレッシャーが掛かる前に、定期健康診断で午前中を終える。
- 医者
- 「鈴木さん、落ち着いてください」
- インタビュアー
- 鈴木氏の場合、血圧がとても高い。
- 医者
- 「178です」
- ナレーター
- 高血圧の症状。
- 医者
- 「ここに来てください」
- ナレーター
- 高血圧はとても危ない病状である。事故を起こさないために、医者が鈴木氏の診断を行う。
- 医者
- 「通常だと血圧はいくつですか」
- 鈴木
- 「130ぐらいです」
- 医者
- 「特に病気はありますか」
- 鈴木
- 「いえ」
- ナレーター
- 鈴木氏の血圧は、続くといつ失神してもおかしくないほどだ。
- 医者
- 「ちょっと様子を見ましょう。それから再度血圧を計りましょう。血圧が下がったら、続けましょう。そうではない場合、訓練は続けられません」
- ナレーター
- これから毎日、鈴木氏の健康状態をチェックする予定だ。ただこれは鈴木氏だけではない。管理者養成学校の統計によると訓練生の5パーセント位はプレッシャーに耐えられない人がいる。診療室には数人の患者が休憩をとっている。
- 鈴木
- 「血圧は170です」
- 訓練生
- 「こっちは最悪、190です。何でだろう」
- ナレーター
- このような健康状態では鈴木氏の様な訓練生が13日間訓練を続けられるかどうか分からない。
一方、後藤氏は徐々に訓練に慣れて来ているようだ。学校で認められているタバコ休憩をとっている。
- 後藤
- 「今の様な時間がここには全然ないので、休憩とらないと」
- インタビュアー
- 「学校にはもう慣れましたか?」
- 後藤
- 「はい。もう友達を見つけたし」
- 訓練生
- 「本当?」
後編
訓練2日目
- ナレーター
- 訓練2日目。5時半、起床。
- 講師
- 「左へ!」
- ナレーター
- 訓練生の1人が、プレッシャーに耐えられず、帰宅。鈴木将之氏と後藤卓也氏はまだ頑張っている。今朝の訓練は管理者養成学校の校歌の練習から。
- 講師
- 「だめ!聞こえない!」
- ナレーター
- 内容は社員の会社への貢献。
- 歌声
- 「男の心すべて~、捧げて悔いなき、君よその名をあげよ、若鷲よ~~」
- ナレーター
- 若鷲はこの管理者養成学校の象徴、日本の国旗の隣に掲げられている・・・毎朝、国旗と校旗の掲揚は繰り返される。それが終わると小走りで訓練が進められる。時間は全て計測されている。
- ナレーター
- 鈴木氏は、健康状態が優れない中、訓練を続けていた。
- ナレーター
- 日本
- インタビュアー
- 「血圧は計った?」
- 鈴木
- 「いえ、後で」
- ナレーター
- その後、鈴木氏の血圧は安定してきたようだ。
- ナレーター
- 毎朝、清掃は10分で終わせなければならない。ただ、本当にきれいにするためには、1時間は必要だろう。10分が経過し、講師が班長と細かく確認する。
- 講師
- 「ここ、汚い。全部掃除したんですよね。もう、隅も汚いよ!」
- ナレーター
- 講師は、訓練生達が必ず見逃す細かいところをすべて分かっている。
- 講師
- 「もう、ここも汚いよ。ちゃんと拭いたの?」
- ナレーター
- さらに、訓練生たちが思いもつかないような基準を持ち出してくる。
- 講師
- 「ここ、座布団の縫目は窓側に揃えて下さい。班員へ命令を出して!」
- ナレーター
- 点検結果は完全に不合格。講師が訓練生の力を引き出すため、訓練生を叱咤激励する。
- 講師
- 「今回の掃除の点数は100点の内5点です。平均は60点です」
- 訓練生達
- 「ありがとうございます」
- 講師
- 「班長、ここに来て」
- 班長
- 「皆さん、もう1度、全部やり直しです。ちゃんと聞いてください。号令を掛けます。はじめ!」
- ナレーター
- 皆パニック状態になっている。更に衝撃を強めるため、講師がストップウォッチを取り出す。
- 講師
- 「何分かかりますか」
- 班長
- 「10分でやります」
- 講師
- 「かかりすぎ」
- ナレーター
- 訓練生は急いで動きはじめる。座布団の縫目、階段の隅、広場の掃除。プレッシャーをかけられた鈴木氏が徐々にやる気を出し始めている。
- インタビュアー
- 「家でお掃除はやってますか」
- 鈴木
- 「はい、たまにやります」
- インタビュアー
- 「訓練は鈴木さんにとって、いい経験ですか」
- 鈴木
- 「はい、そう思います」
- ナレーター
- 厳しい目で見守る講師の目の前で訓練生たちが張り切る。だが、時間は刻々と進んでいく。
- 講師
- 「何してるんですか?誰に窓を拭いてって言われたんですか?」
- ナレーター
- 訓練生が最大限の力を発揮しても、講師はさらに厳しい指示を出し続ける。
- 講師
- 「今8時半です。清掃は8時に始まりました。時間がかかりすぎ。更に掃除はできていない。もし会社でも同じだったら、来客の方にはあなた達のレベルの低さがすぐに分かってしまいますよ」
- ナレーター
- 鈴木氏がここまで訓練を続けられるとは、誰も予想をしなかった。しかし、これから、連続して試験が始まる。1つの試験で1つ。合格すれば、リボンが1つずつ取れる。すべてのリボンが取れてはじめて修了できるのだ。
訓練5日目
- ナレーター
- 5日目、管理者養成学校から初めて外に出る。目的地はJR富士宮駅。有名な歌唱試験をこれから受けることになる。 恥ずかしがりやの鈴木氏にとって、おそらくこれが一番難しい試験である。鈴木氏の顔が徐々に引きつる。歌詞を間違い、すぐ講師に止められる。
- 鈴木
- 「ありがとうございました!」
- 講師
- 「歌詞を間違った」
- ナレーター
- 2回目、また、講師に止められる。やる気がまだ見えない。
- 鈴木
- 「ありがとうございました!」
- ナレーター
- 大声で何度も繰り返すせいで、鈴木氏の声が枯れ、出ない。
- 鈴木
- 「「喉が痛い。あ、あ、こんな感じ」
- ナレーター
- しかし、合格するしか道はない。頑張る鈴木氏の限界が徐々に現れる。講師は、鈴木氏の気力を計りたい。
限界まで行かせて、やっとOKを出す。
- 鈴木
- 「ありがとうございます。ありがとうございます」
- ナレーター
- 鈴木氏にとって、一番難しい試験に合格した。喜んでいる。同じチームの人達も喜んでいる。皆が鈴木氏のことを応援していた。
- 鈴木
- 「声がずっと涸れていました。ただ限界まで行くしかないと思っていました」
- ナレーター
- 5日間の訓練で鈴木氏の様子が変わったように見える。
- 鈴木
- 「前だったら、知らない人の前で歌うことなんかとても出来ませんでした」
- インタビュアー
- 「なにか変わったと感じることはありますか」
- 鈴木
- 「よく分かりません。でも多分、私も前向きで元気な人になれるんだということが分かりました。それは会社にとってプラスになると思います」
- ナレーター
- しかし、訓練を修了するためには鈴木氏は今まで以上に頑張らなければならない。まだ訓練は8日間残っている。その8日間で試験は更に厳しくなる。
- ナレーター
- 訓練8日目、今回、一番の体力を試される試験を受けることになる。山道を40キロ歩く訓練だ。鈴木氏は張り切っている。
- 鈴木
- 「看板あった?あそこの
- ナレーター
- 一方、同僚である後藤氏は、リラックスしていた。
- 後藤
- 「この試験が終わったら、ビールが飲める。1本一気に飲みたいですね!」
- ナレーター
- この女性の様に、距離を増すごと、年配の社員達の疲れも徐々に増してくる。既に5時間歩いた鈴木氏も疲れている。しかし歩くしか仕方がない。
- 鈴木
- 「もう、疲れました」
- インタビュアー
- 「この試験を拒否することも出来るのですか」
- 鈴木
- 「ま、断ることは可能ですが、会社にまだいたいのだったら断れないです。会社が訓練の費用を負担していますから」
- インタビュアー
- 「と言うことは、途中で訓練をやめたら、首になるってことですか?」
- 鈴木
- 「はい、そうです。会社がこの訓練のお金を出していますから」
- ナレーター
- 首になると職を失う。日本人にとって、不況の真っ只中にあって、今一番怖いことである。だからどんなに疲れている訓練生もカメラの前では決して文句を言わない・・・
- 女性訓練生
- 「足が痛い」
- インタビュアー
- 「でもすごく頑張っていますね」
- 女性訓練生
- 「最後まで絶対に行きます」
- ナレーター
- 夜になると皆無口になる。10時間経過。最後尾をのろのろ進む人もいるし唸りながら進む人もいる。
- 訓練生たち
- 歌声
- ナレーター
- 23時、鈴木氏のチームが1番で管理者養成学校に到着。誰もいない。ライトも消えている。
- 訓練生
- 「指導部まで来いって書いてある」
- 訓練生
- 「行こうか」
- 訓練生
- 「行こう」
- ナレーター
- 指導部前へ行くと講師が待っている。
- 講師
- 「報告して下さい」
- 訓練生
- 「報告します。基礎コース第3班、問題なく12人全員無事に戻ることが出来ました。以上」
- 講師
- 「了解です。到着時間は23時8分です。お疲れ様でした」
- 訓練生
- 「ありがとうございます!」
訓練最終日
- ナレーター
- 訓練最終日、あと一息だ。
- 訓練生
- 「やるぞ、やるぞ、やるぞ!」
- ナレーター
- 訓練最終日のこの日、鈴木氏は今や数人に満たない最優秀訓練生の1人となっていた。残すリボンはあと2枚。後藤氏はまだ5枚残っている。 今日の試験にパスすれば見事修了、家に帰る事ができる。不合格だと、また更に3日間、管理者養成学校でやり直しとなる。応援のため、訓練生の社長が現地に来ている。学校の広場で個別に儀式を行う。 13日間の苦労の末、後藤卓也氏は社長と初めて顔を合わせる。
- 後藤
- 「報告します」
- ナレーター
- だが、すぐ言葉が詰まってしまい、涙が出てくる。
- 後藤
- 「ここに来た時とても否定的でした。大声で話す練習など必要ないと思っていました。自分の考えていることを発表してもしょうがないと思っていました。完全に誤解していたことについて十分理解しています」
- 社長
- 「会社では皆後藤さんが早く戻って来て欲しいと願っています。あと少しですから」
- 後藤
- 「はい」
- 社長
- 「頑張って」
- 後藤
- 「はい」
- 社長
- 「諦めないで」
- 後藤
- 「はい」
- 社長
- 「出来るから」
- ナレーター
- 最後は、リラックスさせようと社長が後藤氏を激励する。
- 社長
- 「頑張って、な。できるから、な。頑張って」
- 後藤
- 「はい。どうもありがとうございました!」
- ナレーター
- 日本
- ナレーター
- その後、社長は鈴木氏を激励する。社長は特に鈴木氏に対してこの訓練を勧めていた。だからこそ、鈴木氏の出した成果を特に賞賛する。
- 社長
- 「鈴木さんは学力のある人です。最初から潜在能力はあるのに、会社ではうまく発揮されていなかった。色々なことが出来るのですが、どこか会社と合っていない部分がありました。能力を全て引き出すにはショックが必要だと思っていました」
- 講師
- 「鈴木将之!」
- ナレーター
- 訓練の最終試験は、講師の前で、自分の欠点を克服するために、心の内を正直に全て述べなければならない。講師は訓練生の正直な告白の内容によって、可否を判断する。
- 鈴木
- 「今までとても弱気な人間でした」
- ナレーター
- 課長の後押しで会社に入ったことを述べる。そのため、会社では落ち着かない事を。
- 鈴木
- 「課長の後押しで会社に入りました。だから、いつもそれが重荷になっていました」
- ナレーター
- だが、講師は納得がいかないようだ。それが言い訳に過ぎず、今の仕事に対して本音ではないと感じとる。
- 講師
- 「本当のことを言いなさい!」
- 鈴木
- 「はい」
- 講師
- 「事実を隠している!」
- 鈴木
- 「はい」
- 講師
- 「事実を隠している!この仕事は本当にやりたかったことですか?本当のことを言いなさい!」
- 鈴木
- 「はい」
- 講師
- 「そんなことないでしょう。他の仕事をやりたかったが仕方がなかったんじゃないですか」
- ナレーター
- 鈴木氏は、この仕事に興味がない、お金のためだけだったと告白しなければならない。そして最後に、これから必死でこの仕事をすると、誓約をしなければならない。
- 鈴木
- 「建築家なりたかった夢をここで今、捨てます。これからは社長の命令に従い、必死で良い社員になるよう努めます。以上」
- 講師
- 「よし!合格!おめでとう!」
- 鈴木
- 「どうもありがとうございました」
- ナレーター
- 講師の前で鈴木氏は誓約した。日本ではとてもシリアスなことである。講師に最後のリボンを取ってもらう。 試験の全てに合格できた。鈴木氏が驚く。
- ナレーター
- 講師の前で鈴木氏は誓約した。日本ではとてもシリアスなことである。講師に最後のリボンを取ってもらう。 試験の全てに合格できた。鈴木氏が驚く。
- 講師
- 「おめでとう」
- 鈴木
- 「ありがとうございます。どうもありがとうございます」
- 講師
- 「おめでとう」
- 鈴木
- 「ありがとうございます。」
- 講師
- 「おめでとう」
- 鈴木
- 「どうもありがとうございます」
- ナレーター
- すぐに鈴木氏は走って電話へ向かう。13日間1度も連絡ができなかった母も、きっと心配しているに違いない。
- 鈴木
- 「おはようございます。鈴木将之です。報告いたします」
- ナレーター
- ただし、1回目の電話は母親ではなく、社長へだ。
- 鈴木
- 「修了いたしました。応援して頂き、ありがとうございました。以上」
- ナレーター
- 鈴木氏は訓練服を脱ぎ、スーツに着替えて帰る。管理者養成学校から開放されたのだ。もう1晩もここで過ごさなくていいのだ。
- インタビュアー
- 「この13日間で鈴木さんに何が起こったのですか?」
- 鈴木
- 「変わりました。すべての自分の欠点が見えました。13日間で全ての欠点を克服したとはいえませんが、段々に訓練の意味が理解できてきて、とっても楽しかったです」
- ナレーター
- 最初、誰も想像していなかった鈴木氏が、最後には最高のランクで修了した。
ここ静岡の管理者養成学校739回目の「地獄の訓練」で、36人の内8人だけが規定で修了できた。鈴木氏が喜んでいる。創立者である校長から修了証書を授与される。
- 校長
- 「「鈴木将之。おめでとうございます」
- 鈴木
- 「どうもありがとうございます」
- 鈴木
- 「どうもありがとうございます」
- ナレーター
- 後藤卓也氏は最後の試験で本音を伝えることができず、合格できなかった。また学校に残り訓練を続ける。
- 後藤
- 「落ち込んでます」
- インタビュアー
- 「なぜ」
- 後藤
- 「13日で帰れなかったからです」
- ナレーター
- 鈴木氏は家に帰る。社長は今、鈴木氏の昇級を考えている。
- 社長
- 「月曜日!会社で」
- 鈴木
- 「はい」
- ナレーター
- 毎月、管理者養成学校には全国から約500人の訓練生が訓練を受けにやって来る。30年以上前からほとんど何も変わってない「地獄の訓練」と呼ばれるこの訓練は、今もなお威厳を保ち続けている。