リーダー育成に必要な要素とは

2015年9月8日(火)

リーダー育成に必要な要素とは

マネージャーとリーダー

急激な構造変化の中で、変化の前面に立って人々を導くリーダーの存在が求められています。しかし企業をはじめとする組織では、マネージャーの育成には力を入れてきましたが、リーダー育成は十分に対応できていませんでした。リーダーシップは個人の資質によるもので、リーダー教育は難しいという考えもありますが、決して育成困難なものではありません。

実践的なリーダー論を展開することで名高いアメリカの経営学者であるウォーレン・ベニスは著書『リーダーになる』の中で、次のように語っています。

「リーダーとマネージャーの違いとは、状況を把握した人間と、状況に降伏した人間のちがいではないか。」

マネージャーとリーダーの違いを下記図表に記しますので、ご参照ください。

※図表:リーダーとマネージャーの違い

項目 マネージャー リーダー
役割 管理者 改革者
行動資質 コピー、模倣 オリジナル、創造
現状意識 現状受入れ、現状維持 現状挑戦、現状打破
時間志向 短期志向 長期志向
問題設定 いつ、どのように なにを、なぜ
思考枠組み 戦術 戦略
求めるもの 安定 変化
重視すること 形式 内容
行動指針 規則 冒険
実行プロセス 計画と予算を決め、資源を配分 ビジョンを決め戦略立案、実行

尚、ここで明確にしておかなければならないのは、リーダーシップはマネージメントより重要であるとか、マネージメントに変えてリーダーシップを発揮すべきということではありません。リーダーシップとマネージメントは相互補完すべきものなのです。どちらも組織の運営と存続において重要な役割を分担しています。マネージャーもリーダーもどちらも必要とされているのです。

しかし、今までの組織においてはマネージャー重視、マネージメント至上主義に陥っており、リーダーシップ不在の要素が強いといえます。企業に代表される組織が不確定な時代に存続をして生き延びていくには、リーダーの育成が不可欠です。優れたリーダーシップと強固なマネージメントを結びつけることが重要なのです。

リーダー育成はどうあるべきか

これからのリーダーには、マネージャーに不足している次の三つの能力が必要です。そしてその能力育成のありかたについて整理しておきます。


(1)状況把握力育成

リーダーの仕事の第一歩は状況の正確な把握から始まります。状況把握の対象は、社内事情と社外事情に分けられます。社内事情については現在の担当部門や今まで経験してきた部署のことだけでなく、できる限り全社的に理解やネットワークを築くことが必要となります。なぜなら変化する時代の顧客対応における問題解決に際して、社内のさまざまな部門の協力を得なければ実行が難しいからです。たとえば、営業部門のリーダーは営業のことだけわかっていればよいのではなく、自社の研究開発や製造部門のことを理解し、協力を得なければ顧客対応において改革を進めることはできません。

社内・社外の人々の声に耳を傾け、謙虚に情報収集を行い、成長の芽となるポイントがないか敏感になるような訓練を積む必要があります。何事にも好奇心を持ち、形ばかりの報告を鵜呑みにせず、みずから積極的に疑問をぶつけていくという調査能力の向上がリーダーには求められます。

(2)ビジョンとコンセプト構築力育成

ビジョンづくりやコンセプト構築は、なかなか実務の上で繰り返し経験することは少ないものです。しかし、改革を進めていくリーダーにとって重要な要素であるため、さまざまなケーススタディや疑似体験を通じてこの力を育成していく必要があります。

例えば、マーケティングの改革や、新規事業開発というテーマで、事業計画書のフォーマットを用意しておき、それに沿って考えをまとめるという作業などが有効です。

また、作り上げたビジョンやコンセプトをわかりやすく、的確に組織に伝えるコミュニケーション能力の向上も欠かせません。

(3)情熱・豪胆さと品格の育成

情熱や豪胆さは、教育などで育成することは難しいと思われがちでありますが、この能力の根本は本人の自信がベースとなります。新しいこと、経験したことのないことを遂行するには誰しも不安が付きまといます。この不安をカバーするのは、上記にもとりあげた疑似体験やケーススタディの数をこなし、問題に直面した時に自信を持って取り組めるような準備をしておくことが必要です。将来のリーダー候補に、小さなグループ企業の経営に参加させたりすることが重要なのは、こうした理由からであります。

品格の育成は、率いる人々の動機づけのために重要な要素であります。最近、リーダー育成のために哲学や歴史といったリベラルアーツを取り入れる動きが広まりつつあります。一見、経営とは離れた分野でありますが、リベラルアーツを学ぶことで、多様な考え方や多様な文化を理解し、正しい経営のありかたについて考える基盤が作られます。人間的な魅力が増すことでリーダーとしての信用力が高まるのです。

こうしたリーダーに必要な能力を向上させる教育は一朝一夕にはできません。長期的な仕組みづくりが重要です。リーダー育成のためのキャリアパスの考慮や社内や社外での研修の仕組みが必要となります。しかし管理者と呼ばれるマネージャー育成は体系化がなされつつありますが、リーダー育成は体系化が不十分であるのが現状です。

まずは組織の中に核となるリーダーをつくり、その中から次のリーダーを育成する指導者を見つけ出し、リーダー育成を継続して組織の中に組み込む努力が求められています。


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