人材育成とは?階層別の考え方・成果を出すための計画~育成方法まで徹底解説
2024年9月11日(水)
企業の企業の成長と成功のカギは「人材育成」にあるといっても過言ではありません。優秀な人材を育てることは企業にとっての大きな投資であり、成果を最大化するためには計画的かつ段階的なアプローチが不可欠です。
特に人材不足に悩む企業が多い昨今においては、人材育成によって社員一人ひとりのパフォーマンスを高めることが望ましいと言えます。
そこで本記事では、企業が持続的に発展するために欠かせない人材育成の基礎や考え方をはじめとして、育成計画の立て方、具体的な育成手法などをわかりやすく解説します。
- 人材育成とは、企業が業績を上げて経営目標を達成できるよう人材を育てること
- 育成対象(階層)によって人材育成を成功させるための考え方やポイントが異なる
- 人材育成計画の立て方・手順は【①課題の把握 ②目的の明確化 ③目標設定 ④スキルの洗い出し ⑤育成方法の検討・決定 ⑥実践・フィードバック】
- 具体的な人材育成方法は【①OJT ②Off-JT ③自己啓発支援(SD) ④eラーニング ⑤ジョブローテーション制度 ⑥メンター制度 ⑦人事評価制度 ⑧外部へ委託(研修)】
人材育成に悩んでいるご担当者様や、力を入れたいとお考えの企業様はぜひ最後までご覧ください。
人材育成とは
人材育成とは、企業が業績を上げ、経営目標を達成するために社員のスキルや知識を向上させ、企業が求める人材へと育てる取り組みのことを意味します。
社員一人ひとりの能力を向上させることで業績の向上が期待できるだけに、人材の成長は、企業の成長にとっても必要不可欠となり、組織の未来を見据えた中長期的な人材育成を通じて戦力へと育て上げることが重要です。
ただ、「人材育成」と言っても、入社直後の新入社員から経験豊富な中堅社員、さらには管理職に至るまで育成対象はさまざまあります。十分な成果を上げるためには、それぞれの段階に応じた適切な育成目標やアプローチが必要です。
また、人材育成と混同されがちな言葉として、「人材教育」や「人材開発」がありますが、それぞれ人材育成との違いを次の項でご紹介します。
人材育成と人材教育の違い
人材育成は、その言葉の通り「人を育てて成長させること」で、社員を会社が考える望ましい方向に成長させることを意味します。一方、「人材教育」は、単純に知識やスキルを教えるということです。
つまり、人材教育は人材育成の土台となるものであり、人材育成は人材教育をより具体的な行動に移したものであると言えます。「人材育成の手段の1つ」として、人材教育が存在しているという位置づけと考えておくとよいでしょう。
人材育成と人材開発の違い
人材育成と人材開発はどちらも、企業の人的資源を強化するための活動ですが、その目的に違いがあります。
まず、人材育成が企業に貢献できる人材を育てることを目的としているのに対し、人材開発は、社員の本来の能力を発揮できるよう一人ひとりの能力やキャリア志向に応じた個別の支援に力を入れて開発していくのが目的です。
つまり、人材育成は成長を促すことであるのに対し、人材開発は「潜在能力を開花させる=人的資源を有効活用する」という意味を含んでいます。
企業における人材育成の重要性
人材育成は、企業の経営資源である人材を育てることで、企業の競争力を高め、利益を最大化するために非常に重要です。
特に現代の日本では労働人口が減少傾向にあるため、限られた人材をいかに育成していくかは経営戦略のひとつの柱となってくると言っても過言ではありません。
実際多くの企業で、今いる人材一人ひとりの能力・スキルの向上を促し、生産性を向上させることが課題となっています。
また、近年テクノロジーの進化により業務の自動化が進んだことにより、他社との差別化が難しくなってきています。技術力や価格では差を出せない…そこで企業の競争力を左右する要素として注目されているのが「人材」なのです。
人材育成はもはや、企業の利益・業績向上のため、企業全体として取り組むべき最重要課題と言えます。
人材育成の現状や企業が抱える課題
多くの企業が効果的な人材育成の計画や実行に苦戦しているのが現状です。具体的に企業が直面している課題には以下のようなことが挙げられます。
- 業務に追われ人材育成に費やせる時間と余裕がない
- 人材教育に比べて後回しにされがち
- 管理職の育成能力やスキル、指導意識が不足している
- 育成を受ける人の意欲が低い
- 計画的に行えていない
- 自律型人材が育たない
1つずつ詳しく見ていきましょう。
業務に追われ人材育成に費やせる時間と余裕がない
知識とスキルを身に付けることが目的の人材教育なら、学習環境さえ整えられれば個人の努力でもなんとかなります。一方で人材育成は、育成対象者への指導を行う上司や先輩が必要であり、多忙な業務の合間を縫って人材育成を行わなければなりません。
また、人材育成は一朝一夕で効果が出るわけでなく、人材育成には多くのリソースを割かなければなりません。
しかし、自身の業務に追われる日々で、育成のための十分な時間を割くことができていない現状があります。日常業務を回すために人手が足りず、短期的な業績重視のため、長期的な育成への投資が困難な状況なのです。これでは、効果的な人材育成を実現するのは容易ではありません。
そのため、人材育成の計画の段階で、社員の業務負荷や時間的制約などの現状を十分に考慮し、現実的に実行可能な計画を立てることが重要となります。
人材教育に比べて後回しにされがち
そもそも「人材育成自体が後回しにされがち」ということも課題としてよく挙げられます。
特に前述したような業務優先の現場では、教育や研修の機会が後回しになりがちです。日常業務の遂行が最優先とされ、教育や研修は「余裕があれば」という位置づけに留まってしまいます。
また、通常業務に加え、コロナ禍でテレワーク化が進み、対面でのコミュニケーションの機会が減少したこともこの問題を助長しています。
その結果、必要な知識やスキルの習得が遅れ、競争力を維持するための人材の育成が難しくなっているのが現状です。
管理職の育成能力やスキル、指導意識が不足している
人材育成を効果的に進めるためには、育成を担当する人(管理職、上司、先輩など)自身が必要な知識やスキルを身につけていることが大前提です。
しかし、人材育成に関する専門的な知識やノウハウの蓄積が十分でないケースが多く見受けられます。
また、個人の育成能力に依存する育成方法では、指導ができる人材が限られるうえ、属人化してしまうほか、指導者のスキルによって育成対象者の知識やスキルにも大きな差が生まれてしまいます。
加えて、指導や注意を恐れるなど、適切な指導方法が分からないという管理職も少なくありません。この結果、成長を阻害し、企業全体の成長にもマイナスの影響を及ぼします。
そのため、指導者向けの研修プログラムなどを実施するなどして育成能力や指導意識を高めていく必要があります。
育成を受ける人の意欲が低い
人材育成の効果は、育成対象となる人の意欲にも大きく左右されます。しかし、必ずしもすべての人材が積極的に取り組むとは限りません。
中には、現状に満足していたり、新しいことに挑戦することに抵抗を感じたりする方も存在するでしょう。まさに育成を受ける側である社員の意欲の低さも大きな課題なのです。
また、多忙な業務の中で育成の重要性を見出せない場合や、将来のキャリアに対する明確なビジョンが持てない場合、組織のサポート不足や個々に応じた育成が行われない場合は、モチベーションも低下してしまいます。
人材育成の取り組みを成功させるためには、経営層や育成担当者だけでなく、社員一人ひとりが育成の重要性を理解し、積極的に参加することが重要です。
計画的に行えていない
人材育成は、社員一人ひとりのニーズや目標に合わせて、計画的に行うことが望ましいと言えます。しかし、計画的に人材育成を実施できている企業は少ないのが現状です。
育成の計画が欠如していれば当然、教育プログラムやトレーニングが断続的で一貫性に欠け、効果が薄れます。結果として、育成の目的があいまいになり、組織が求める人材を育成することが難しくなります。
また、計画的ではない人材育成は、効果測定が不十分で改善点が見えにくく、育成施策の質が向上しないうえ、費用や人などあらゆるコストがかかり、かえってマイナスな影響を及ぼしてしまうでしょう。
自律型人材が育たない
企業における育成の課題として、自律型人材が育たないという点が挙げられます。これは、過度に指示待ちの姿勢が蔓延し、自発的な学習や成長を促す環境が整っていないことが要因です。
従来の人材育成は、知識やスキルの詰め込み型が多かったのですが、近年では変化の激しい環境に対応できる、自分で考え行動できる自律型人材が求められており、従来型の育成方法では対応しきれない状況も見られます。
この結果、変化に柔軟に対応できる人材が不足し、企業の競争力にも悪影響を及ぼしてしまうのです。
反対に、自分で考え行動ができる自律型人材を育成できれば、指示を待たず迅速に行動できる人材が増え、企業の成長スピードはどんどん増していくでしょう。
【階層別】人材育成を成功させるための考え方やポイント
人材育成といっても育成対象はさまざまです。例えば階層別に分けると新入社員、中堅社員、管理職などを指し、それぞれ人材育成の考え方やポイントが異なります。
ここからは3つの階層別に、人材育成の考え方やポイントを詳しくご紹介していきます。
新入社員の育成
新入社員を対象とする人材育成は、専門性よりも社会人の基礎を身に付けることがメイン。
社会人として持つべきマインドや知識、マナー・スキルを身に付けることに重きが置かれますが、具体的なポイントは以下の通りです。
新入社員の特徴を把握することからはじめる
まずは新入社員の世代固有の特性を捉え、新入社員が持つ価値観や人間性、キャリアに対する期待や意識を理解することが肝要です。
多様な学歴や経歴を持つ新入社員は、それぞれ異なる強みや弱みを抱えているため、これらを理解した上で、1on1ミーティングなどで定期的にコミュニケーションをとり、サポートしていきましょう。
また、新入社員は学生時代とは大きく変わった環境の中、慣れない業務へ挑戦し、ときには失敗することもあります。少なからずプレッシャーやストレスを感じているため、厳しく指摘するだけでなく、メンタル面を意識した育成を行うことも重要です。
ビジネスマナーやスキルを習得・定着させる
新入社員が社会人としての基礎を固める上で、ビジネスマナーやコミュニケーション能力、時間管理といった必須スキルの習得は極めて重要です。
これらのスキルは単に教わるだけではなく、実践的な研修を通して日常業務で使いこなせるレベルまで高めることが求められます。
外部講師を招いて行う集合研修形式での学びも基礎知識の習得には有効なうえ、スキルの習得にはOJTやメンター制度を通じた実践形式での学びも非常に効果的です。
組織の一員としての役割と責任を自覚させる
新入社員には、組織の一員として自らの役割と責任を認識させることも大切です。これには、企業の理念や目標を理解させ、自身の業務が組織全体にどのように貢献しているかを伝えることも含まれます。
ただ、新入社員は、入社後しばらくは自社や業務についての様々な知識習得に追われるため、自らの役割を自覚するまでには至らないことも少なくありません。
そこで、改めて「自分が組織から期待されていること」や「自分はこの組織でどうなりたいのか」を考える機会を積極的に設けて、組織における自らの役割を自覚させましょう。
自らの役割や目標が明確となることで、チームでの協働や自主的な問題解決能力を養うことができ、より責任感のある行動が取れるようになります。
中堅社員の育成
着実に実力がついてきた中堅社員は、現場の主軸でもあり、将来的な管理職候補という立場でもあります。次世代のリーダーとなるためには、社員の意識を変化させ、自身の役割を認識させることが重要です。
中堅社員の育成のポイントは次の通りです。
現場の中枢となる中堅社員としての役割を認識させる
中堅社員は組織の中枢を担う存在です。現場のチームリーダーや調整役(管理職のフォロワー)としての役割を認識させることは、組織全体の効率を高めるために欠かせません。
中堅社員は、業務にも慣れて効率的に成果を上げられるようになる一方、「慣れ」や「マンネリ化」による効率ダウンやモチベーション低下も懸念されています。
そのため、自分の立場が全体の成果にどう影響するのかを理解し、主体的に行動できるよう促すことが大切で、これにより責任感とモチベーションが向上します。
具体的な育成方法としては、役員や管理職による研修や、個別面談、キャリアプランの確認などが挙げられます。状況に応じて「ジョブローテーション」も有効活用してみましょう。
成長機会・実践的な経験を積む機会を与える
中堅社員の人材育成を成功させるためには、実践的な機会を設ける必要があります。
中堅社員が目指すべきキャリアの方向性を示し、実践的な経験を積む機会や一人ひとりに合った成長機会を設けることで、モチベーションの向上と能力向上を図りましょう。
例えば自身で行動計画を立ててもらったうえで、責任のある業務を任せたり、権限を委譲したりします。
また、ケーススタディやロールプレイなど、実際の業務環境を模倣した実践的な研修やトレーニングを行うこともおすすめです。
スキルマップを活用する
中堅社員の育成にはスキルマップの活用が非常に有効です。スキルマップとは、社員が持つスキルや知識を可視化し、各自の強みと成長領域を明確にするツールです。
中堅社員は、業務の中心的な役割を果たすと同時に、キャリアの過渡期に位置しています。そこでスキルマップを作成することで、年次や役職で獲得すべきスキルが明確になり、人材育成のスピードが上がります。
「どのレベルを目指すのか」、目標とするスキル獲得のため「いつまでに・具体的に何をやるのか」を1on1などで一緒に考え、スキルマップを作成してみましょう。
マネジメントスキルを身に付ける
中堅社員になると、チームリーダーとして部下や後輩の育成を担当する場面も増えていきます。将来の管理職候補としても期待がかかるため、以下のようなマネジメントスキルを身につけていく必要があります。
- リーダーシップ
- 目標管理能力
- 問題解決能力
- コミュニケーション能力
- スケジュール管理能力
- ロジカルシンキング
- クリティカルシンキング など
これらは定期的な研修や、実際の業務を通じたOJTを通じて習得させることが重要です。
また、メンター制度を導入し、経験豊富な上司や同僚からのアドバイスを得られる環境を整えることで、実践的な知見を深めることができるでしょう。各スキルをeラーニングなどの学習で補うとさらに効果的です。
管理職・管理者の育成
管理職・管理者は、企業理念や経営層の経営方針を正しく理解し、目標達成に向けて社員をマネジメントしていく役割を担っています。
そんな管理職・管理者の育成ポイントは以下の通りです。
企業のビジョンや経営戦略を認識させる
管理職の育成では、企業のビジョンや経営戦略を深く理解させることが重要です。これにより、組織の長期的な目標に沿った意思決定が可能となり、部下への的確な方向付けも期待できます。
まず、管理職に対して企業のビジョンや戦略の背景、目的、期待される成果についての知識を体系的に提供する必要があります。
例えば、企業理念やビジョンを浸透させる研修の実施や経営層による研修、外部研修への参加などが有効で、企業が目指すべき姿や競争環境を理解させると効果的です。
リーダーとしての自覚を促す
管理職にはリーダーとしての自覚を促すことが不可欠です。特に新任の管理職には、管理職としてのマインド養成が第一関門となります。
リーダーとしての役割を自覚することで、周囲への影響力や責任感が生まれ、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
これには、リーダーシップ研修や実践的なトレーニングを通じて、具体的な行動を学ぶ機会を提供することが重要です。また、実際の業務やプロジェクトを通じてリーダーシップを発揮し、自らの役割を体感させることも効果的。
これにより、管理職としての自信と責任感が培われ、組織の求めるリーダーシップが自然と育まれます。
部下の育成・指導に必須の知識やスキルを定着させる
企業のビジョンや経営戦略に基づき、担ってほしい役割や身に付けてほしい能力・スキルを明確にしたうえで、必要な知識やスキルを定着させることが求められます。
これにはコミュニケーション、コーチング、フィードバック、目標設定、問題解決能力などが含まれますが、これらのスキルを習得できる研修の実施や、OJTを通じた実践的な学びの機会を提供することが有効です。
学んだ知識やスキルを実践できるレベルまで定着させることが求められます。
指導する側の研修やサポート体制を整える
管理職の育成に限ったことではありませんが、企業の人材育成力を高めるためには、指導する側の育成にも取り組む必要があります。管理職や上司、OJTトレーナーなど、育成担当者が有効な指導を行うためには、指導する側の研修やサポート体制の充実が欠かせません。
研修の導入や定期的なフォロー、セミナーへの参加、メンター制度など、育成する環境を整えることではじめて、効果的・継続的な人材育成が期待できます。
人材育成計画の立て方・手順
人材育成計画は、企業の将来を見据えた重要な戦略の一部ですが、効果的な人材育成を行うためには、適切な計画が欠かせません。
適切な手順を踏むことで、組織全体の能力向上と社員のモチベーションアップが実現できます。ここからは、人材育成を進めるための計画の立て方・手順を解説していきます。
自社の課題を把握する
まず初めに行うべきは「課題」を把握することです。組織全体・各部署・各階層において、現時点でどのような課題が存在するのかを明確にします。
現場の管理職だけでなく、部下にあたる一般社員や新入社員まで幅広くヒアリングすることで、多面的な視点で課題を抽出できます。
部署のパフォーマンスや社員のニーズ、外部環境の変化など、多様な視点から課題を認識することで、人材育成の方向性が見えやすくなるでしょう。
目的を明確にする
課題を把握した後、次に行うべきは人材育成計画の目的を明確にすることです。目的を具体化することで、社員が身に付けるべき知識やスキルなどが明確になり、育成の方向性をぶらさず進めることができるでしょう。
人材育成の目的例としては、例えば、「次世代リーダーの育成」や「特定スキルの向上」、「マインドの醸成」などが挙げられます。
目的が明確であればあるほど、社員も自身の学びの意義を理解しやすく、積極的に取り組むようになり、効果的な人材育成を実現することができます。また、企業の将来像を具体化するために経営者との連携も欠かせません。
目標を設定する
具体的な目標設定も欠かせません。目標は、自社が理想とする人材像へ社員を成長させるための指標です。この目標は客観的に判断できるものであり、企業としての成果に繋がるものである必要があります。
育成担当者は各部署から吸い上げた課題や目標を取りまとめ、研修やセミナーなどの育成施策の企画に活用しましょう。
また、各社員が目標に向けて取り組むことにより、組織全体での一体感が生まれます。
必要なスキルを洗い出す
目標を設定した後は、その達成に必要なスキルを洗い出します。この過程では、企業の目標達成に向けて欠けているスキルや知識を特定し、社員がどのような能力を身につけるべきかを明確にしましょう。
スキルの洗い出しは、社内の専門家や外部のコンサルタントの協力を得て行うことも有効です。
また、スキルマップを作成し、個々のスキルレベルを数値化することで具体的な長所・短所を把握し、個別面談などで社員一人ひとりに最適なオリジナルの育成計画を立案しましょう。
課題に合う育成方法を検討・決定する
次は、課題や洗い出したスキルに基づき、それに合った育成方法を検討・決定する段階です。育成方法は、OJT、OFF-JT、ジョブローテーション、メンター制度、eラーニングなど多岐にわたります。
たとえば、実践的スキルの向上を目的とする場合には、実際の業務を通じて学ぶOJTや専門的な外部トレーニングが効果的です。また、一般的な知識や概念の習得には、eラーニングや社内研修が適している場合もあります。
育成担当者自身のスキル向上も重視し、効果的な研修プログラムを設計することもポイント。これにより、現場の負担を軽減しつつ効果的な人材育成が実現できます。
それぞれの方法にはメリットとデメリットがあるため、社員の学習スタイルやスキルレベル、組織のリソースに応じて最適なものを選ぶことが重要です。
実践・フィードバックを繰り返す
人材育成計画は立てて終わりではありません。設定した目標達成に向け、実践とフィードバックを繰り返すことが大切です。
学んだスキルや知識を実際の業務で活用することで、実務にどのように役立つかを体感できます。また、研修や教育プログラムの参加後にスキルの習得状況を確認し、フィードバックを行いましょう。
その結果を分析し、次回の計画に反映させることが、組織全体のスキルアップと継続的な成長に繋がります。
人材育成の目標設定で大事なポイント
企業において効果的な人材育成を実現するためには、明確な目標設定が不可欠です。人材育成の目標設定において特に重要な3つのポイントは以下の通りです。
- 定量的な目標を設定する
- 育成期間を明確にする
- 会社やチームの目標を共有し意識する
1つずつ見ていきましょう。
定量的な目標を設定する
1つ目のポイントは、定量的な目標を設定することです。人材育成の効果を正確に評価するためには、具体的な数値で目標を設定することが欠かせません。
それは曖昧な目標では進捗を評価しづらく、成果の確認が困難だからです。定量的な目標を設定することで、育成の進捗を具体的に把握することができます。
また、評価基準が明確になり、育成対象者も目指すべきゴールを理解しやすくなるでしょう。
育成期間を明確にする
2つ目のポイントは、育成期間を明確に設定することです。効果的な人材育成を実現するためには具体的な期限を設け、その期限に向けた逆算の計画を立てることが必要です。
育成期間が明確であれば、進捗状況や目標達成度を定期的に評価し、育成担当者と育成対象者の双方が進行状況や成果を確認し、必要に応じて計画を修正することができます。
また、人材育成はすぐに効果が出るものではなく多くの時間を要します。また、すべての人が同じペースで成長するわけではないため、一定の余裕を持たせたスケジュール設定も重要です。
目標とするスキルや業績の向上度を明示し、それを達成するための具体的な期日を設定しましょう。これにより育成対象者も自身の成長を具体的にイメージしやすくなります。
会社やチームの目標を共有し意識する
3つ目は、人材育成の目標を立てる際に、会社やチームの全体目標も共有し意識することです。人材育成は担当者1人に任せきりにするのではなく、会社全体で取り組むべき課題です。
会社やチームの目標を共有することで人材育成が組織全体の重要な課題として認識されるようになり、育成担当者だけでなく他の社員も協力しやすくなり、育成の効果がさらに高まります。会社・部署・チームが一丸となって人材育成に取り組む姿勢が大切です。
人材育成の具体的な方法
ここからは、具体的な人材育成方法をご紹介します。人材育成を効果的に進めるためには、どれか1つにこだわる必要はなく、様々な手法を組み合わせて活用することが重要です。
組織の課題や思い描く人材像に合わせて適切な方法を柔軟に取り入れてみましょう。
OJT
OJTは、実務を通じて知識やスキルを習得する育成方法です。職場の上司や先輩がトレーナーとして1対1で指導を行うため、実践的なスキルが身につきやすくなります。
即戦力化が図れるだけでなく、実務の中での課題解決能力も養われるため、実践的なスキルの向上に最適です。また、直接的なコミュニケーションが取れるため、チームワークや協調性も養うことができます。業務を進めながら自然に学べるため、効率的かつ効果的な育成方法です。
ただし、指導担当者の指導スキルによって効果にばらつきが出やすいことはデメリットとして挙げられます。また、日常業務に追われながらも指導する指導担当者の負担が大きいのも懸念点。そのため、OJTを継続的に行うためのOJT制度を整えることも重要です。
Off-JT
Off-JTは、日常業務から一時的に離れて行う育成方法です。集合研修や外部セミナー、eラーニングなどがこれに該当します。体系的な学習を行えるため、知識やノウハウを整理しながら効果的に身につけることができます。
集合研修や外部セミナーでは専門知識やノウハウを持つ講師から、自社では実施できない高度な研修を受けられるだけでなく、講師との質疑応答を通してより深い学びを得ることができる点もメリットです。
また、他業種や他企業の事例を学んだりすることで、幅広い知識や考え方を取り入れることが可能。職場での実務とは異なる環境での学びが、新たな気づきを与えることも多いです。
しかし、研修に参加するために業務を離れる必要があり、他の社員に負担がかかる場合があるほか、遠方の場合は交通費が発生するなどコスト面は他に比べてかかります。
自己啓発支援(SD)
自己啓発支援は、社員の自主的な学習意欲を高め、自己啓発を支援する人材育成方法です。例えば、書籍購入補助や資格手当、外部セミナーの参加費補助など、様々な施策を通して社員が自らの成長に主体的に取り組める環境を整えます。
社員は、自身の興味やキャリア目標に合わせた学びを追求できるため、モチベーションが向上しやすく、組織全体のスキルレベル向上にも貢献します。
企業にとっては相応のコストや運用面での負担が発生しますが、社員の成長は企業全体の発展につながるため投資する価値は十分あると言えるでしょう。
eラーニング
eラーニングは、オンライン学習システムを活用した人材育成方法です。スマートフォンやパソコンさえあればOK。時間や場所を選ばず学習できる利便性や、個々のペースに合わせて学習を進められる柔軟性などがメリットです。
また、動画や音声、アニメーションなどを活用した教材を用いることで、より効果的な学習が可能となります。教育の質を均一に保てるほか、多人数で受講すればコスト面でも従来の研修に比べて削減できるケースが多いでしょう。
ただし、個別に学習を進めるためモチベーションの維持が難しく、思うような成果が得られない可能性もあります。
ジョブローテーション制度
ジョブローテーション制度は、社員を様々な部署や職種に数か月単位で配置転換することで、幅広い知識や経験を積ませる人材育成方法です。
異なる職場や部署を経験することで様々な業務に関する知識やスキルが幅広く身につくとともに、組織全体の理解が深まります。また、社員は多角的な視点や柔軟な対応力や問題解決能力を養えます。
キャリアの選択肢を広げることで、社員の自己成長や満足度向上にもつながり、多角的な人材育成が可能になります。この制度は社員の適性を見極める手法としても有効です。
しかし、専門性を高めたい場合や移動初期のパフォーマンス低下などのデメリットも考慮する必要があります。
メンター制度
メンター制度は、新入社員や若手社員をベテランの先輩社員(メンター)がマンツーマンでサポートする制度です。メンターが業務やキャリアの相談にのってくれるため、悩みや不安を解消し、精神的に安定した状態で業務に集中できます。
また、メンター自身の指導スキルの向上にも期待できます。ただし、メンターの負担が増す点や、メンターのスキルによって成長度が左右されること、相性が悪い場合のリスクがあることは知っておく必要があるでしょう。
メンター制度をスムーズに実施するためにも、ペアとなった両者をフォローする上司の存在が欠かせません。
人事評価制度
人事評価制度は、社員の業績や能力を評価し、フィードバックを行う制度です。ただ社員を評価するためだけの制度ではなく、人材育成の手法としても重要な役割を担います。
適切な評価を通じて社員の強みや弱点、「何が足りないのか」および「何を身につけるべきか」を明確にでき、次の個々の成長目標を設定するための指針となります。
また、評価結果に基づく昇給や昇進、報酬などが明確になることで、モチベーションの向上や目標達成への意欲を引き出す効果もあります。
やはり何を評価されているのかわからない状態だと、頑張っても評価されないという考えが先行してしまうため、育成計画には必ずセットで評価基準を設けてください。
上記のように人材育成には様々な方法があります。それぞれの方法の特徴を理解し、組織の課題や目標に合わせて、最適な方法を選択することが重要です。
人材育成の成功事例
弊社「社員教育研究所」の研修・訓練を活用して、人材育成を成功させた企業様の事例をご紹介します。
株式会社SHIOSAWA様
弊社の新入社員向け研修に新入社員を派遣されているほか、数多くの訓練・研修にご参加いただいている山口社長が自ら教壇に立ち、毎月階層別研修を実施。
これにより社員の意識の統一が図られ、個々のパワーアップ、それに付随し企業としての大きなパワーを生み出している事例。
株式会社アカイ様
多忙な社員が3日間時間を割く事で実務に相当負担がかかった中、全員が学ぶ事に肯定的になり、研修後の面談では組織の課題について積極的に意見するように!
社内で育ていく風土・教育システムが確立された事例。
株式会社ビジョンサービス様
新入社員の皆様を弊社合宿訓練に派遣。研修後の表情を見ると研修に派遣してよかったと感じられたとのこと。
社員が駐在している広告代理店等から、変化に驚いたとの声が挙がるほど育成効果を得られた事例。
まとめ:人材育成を成功させるには、最適な育成計画と実践が不可欠!
人材育成の成功は企業の成長に直結します。ただ、そう簡単に人がすぐに成長するわけではありません。それだけに、目指すべき人材育成のゴールを明確に定め、適切に計画し、自社の目的や課題に応じた最適な方法で中長期的に取り組んでいく必要があります。
自社で人材育成施策を計画・実行するのが難しい場合は、人材育成のプロに相談するのもおすすめです。
弊社社員教育研究所は、長年の人材育成の経験と実績に基づき、企業のニーズに合わせた最適な人材育成プログラムを提案・提供し、貴社の人材育成を成功へと導きます。
豊富なノウハウと専門知識を持つ講師が課題解決に向けてサポートいたしますので、人材育成に関する疑問やお悩みをお持ちでしたら、まずはお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
株式会社社員教育研究所 編集部
1967年に設立した老舗の社員研修会社。自社で研修施設も保有し、新入社員から経営者まで50年以上教育を行ってきた実績がある。30万以上の修了生を輩出している管理者養成基礎コースは2021年3月に1000期を迎え、今もなお愛され続けている。この他にも様々なお客様からのご要望にお応えできるよう、オンライン研修やカスタマイズ研修、英会話、子供の教育など様々な形で研修を展開している。