結果を出すマネージャーと出さないマネージャーの違い

2015年11月15日(日)

結果を出すマネージャーと出さないマネージャーの違い

管理職に求められるものとは

このような経験があります。社員旅行で生まれて初めてスキーをした時のことです。「冬は小学校に毎日スキーを履いて通学していた」と豪語する雪山育ちの先輩が私にこう言いました。「怖がらずに思い切って行けば転ばない」と。いきなり上級者向けのゲレンデに連れ出しておいて無茶な話です。何度も転倒する私に、彼は「ほら、ビビッてるからだよ」と罵声にも似た声援を送り続けます。

見かねた新入社員の女の子が教えてくれました。なんと彼女は大学で体育会スキー部に所属していたとか。「進もうとする力のベクトルに逆らわずに体重をかけていると転ばないのよ」と。言わんとすることは同じですが、説得力が違います。他にも「山足・谷足」とかの言葉やボーゲンでの滑り方など極めて理論的で具体的です。

それ以後は転ばずにロッジまでたどりつけました。それどころか、すっかり恐怖心も消え、人が見ているところでは直滑降でスピードを堪能し、こっそりとボーゲンで方向転換するなど、自分なりに工夫してその楽しさを満喫していました。いわゆる「暗黙知」と「形式知」、「精神論」と「科学的理論」の差異です。

後から振り返ってみると、私にスキーを教えてくれた2人は管理職としての明暗を顕著に示していたように思います。精神論で教えてくれた先輩と理論に基づいて的確にアドバイスをくれた新人では、明らかにマネジメントの観点からも差異が見て取れるでしょう。

山本五十六司令官の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば人は動かじ」の言葉は今もなお、人材マネジメントの極意として有名ですが、”言って聞かせて”の部分が抽象的な「真剣に取り組む」などの精神論では無意味です。自分のやってみせた行動のポイントを、具体的にかつなぜそうすべきなのかの明確な理由も併せて丁寧に説明することが”言って聞かせて”の真意だと思います。

そのためにはマネージャー自身が、自分の持つノウハウを具体的に言葉で説明できる知識(形式知)・スキルを磨かねばなりません。

マネージャーの、そしてマネージャーたる以前の知識吸収も、つねに「人に伝えられるレベル」を前提にして臨む必要があります。「何かの本に書いてあった」程度の”御高説”では説得力もなく、人を動かすことなどできるはずもありません。まず自分自身が、その知識や方法を現実の仕事に適用して得た成功体験と確信を持つことが必要です。

成果を出せるマネージャーとは

優れた経営者やマネージャーは必ずと言ってよいほど、『バイブル』を持っています。まさしく”宗教”に近いほどに心酔し、自己の行動の規範となるものです。

それは著名な学者の著書かも知れませんし、偉人の伝記や哲学である場合もあります。そうしたものは通勤の車中で読む類のものではなく、自宅でじっくりと何度も繰り返して読み、一字一句の意味や重みを確認する読書からしか生まれません。時には傍線を引き、ノートに転記して「自分のもの」とする読書法です。

これには二種類の書物が必要です。一つは、ビジネスに関する具体的な理論書・学術書。もう一つは人としての生き方を問う人生論や哲学。もちろんその両者が相乗して各々の論旨を確たるものとする内容であることが求められます。その両者の中から掴み取ったものが、当人にとっての揺るがぬ「自己哲学」や「ビジネス理論」としての新たな価値を生み出すのです。

逆に、成果が乏しいマネージャーに多く見受けられるのは、確固たる行動規範を持ち合わせていない、薄っぺらな知識に基づき行動していると周囲の人々が感じてしまうといったケースです。特にマネージャーともあろう役職において、持ち合わせている知識が正確なものでなければ、周囲からの信頼に大きく影響を与えてしまうことは周知の事実となるでしょう。

これまでは、もっぱら『知識』の重要性について述べて来ました。ビジネスパーソンとして必要とされるスキルは①テクニカルスキル②ヒューマンスキル③コンセプチュアルスキルの3つであり、それらの占める構成比重は職階が上がるにつれて、①→②→③へと、シフトすると言われています。

リーダーや中間管理職では②のヒューマンスキルのウェイトが最大となる図式です。従ってリーダーシップであるとかコミュニケーション力、さらには人間的な魅力といった諸要素が求められますが、ただこれもあくまで上記で述べてきた『知識』の正確さと精度がベースとなります。

人は十人十色。マネージャーとしてのリーダーシップにも様々な形が存在します。多弁で陽気な人物。口数も少なく物静かな人物。それは政財界の著名な人物を見ても明らかです。

ただ重要なのはメンバーから「この人と一緒に仕事がしたい」と思われるか否かの一点です。そのベースとなるのは、やはり「確かな知識」でしかありません。メンバーからその知識や発言に対して、容易く揚足をとられたり、誤りを指摘されたりで、軽く見られたりするようでは失格と言わざるを得ません。

マネジメント力を高めるために企業が為すべきこと

マネージャーの仕事の基本はチームや組織を総合し管理者として、個々の力の総計以上のプラスアルファを生み出せるか否かのマネジメントにあります。

そこには基本戦略の策定やビジョンの創出、現状把握や分析から始まる一連の問題解決、リソース配分計画から個別戦術・施策の立案、各施策でのKPI設定による進捗状況管理といった「マーケティング」「戦略立案」プロセスに関する充分な専門知識やスキルも要求されます。企業としては、マネージャーが実務を行う上で必要とされる通例のマネジメント教育の強化だけでなく、問題解決力から戦略立案、マーケティングノウハウといった専門性の高い知識を習得できるような環境を教育の一環として用意する必要があります。

管理者といっても、チームリーダーから中間管理職、管理職、経営者と職階が上がるにつれ、その対象範囲も広がり、さらに高度なものが要求されるようになります。メンバーたちに「役割」や「なぜこれをせねばならないのか」を伝えるにも、確たる裏付けとなるロジックが求められます。

こういった環境の中で、それぞれの役割を担う個人に知識の習得や修練を一任するのではなく、企業としても長期視点から社員の教育に注力していくことが、優秀な管理者を排出できる条件となるでしょう。

「結果をだすマネージャーと出さないマネージャーの違い」…、それは結果に対する目標達成意欲、使命感、責任感といった 精神的なものは大前提として、いかに揺るがぬ正確な知識を有しているか否かにかかっていると思います。



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