中堅社員研修の重要性と内容|キーパーソンこそ受講すべき理由とは?
2019年8月30日(金)
2023年6月29日(木)
中堅社員研修は、企業の規模や1人ひとりの社員の能力にもよりますが、入社3年目以降の社員が対象となるのがひとつの目安です。新人の時期を過ぎたら中堅社員としての自覚を持たせ、かつ次のステップを意識させるために研修を受講させると良いでしょう。
ここでは、中堅社員研修の対象や必要性、主なプログラムについてご紹介します。中堅社員を成長させ、さらには組織の成長につなげるために、研修の重要性を理解しましょう。
中堅社員研修の対象
入社した当初は新人や新入社員と呼ばれ、場合によっては「実習生」や「研修中」といったネームマークを付けられることもあります。いわば、「仕事を始めたばかりですので、どうぞよろしくお願いします」や「新人でテキパキ仕事がこなせない状態を大目に見てください」というメッセージです。
このマークは1~3カ月程度で取り外すことがほとんどで、その後は現場で一通りの仕事を習得したうえで、新人としてできることから頑張っていく時期になります。1年が過ぎたら後輩となる次の新人が入ってくるため、先輩としての自覚を持つことが大切です。いつまでも新人気分が抜けず、いざとなったら上司や先輩など周囲が面倒を見てくれると思っていてはいけません。次なるステップへと進むときがやってきたというわけです。
新人の次はいわゆる中堅と呼ばれる世代になりますが、入社後だいたい何年目の社員がこのクラスに該当するのでしょうか。会社の規模や取り組む仕事の内容、さらには社員それぞれが持つ能力やスキルにも影響されますが、入社3年目以降となると部署内でのほとんどの仕事は1人でこなせるようになるのではないでしょうか。
しかし、入社後3年以上が過ぎても、ほとんどの社員はまだ係長や主任といった何らかの役職には就いていません。従って1~3年目を若手社員と位置づけ、中堅社員はその上に位置する、より責任のある仕事ができる社員グループと考えて間違いないでしょう。
中堅社員のあるべき姿
では、中堅社員のあるべき姿とはどのようなものなのでしょうか。その姿こそ研修のゴールとなると言うことができるでしょう。多くの企業では、中堅社員に以下のような姿や役割を期待しています。
- 若手社員を育成する
- 上司のサポートを行う
- 実務の中心的役割を担う
- 管理職としてのスキルを身に付けていく
1つずつ見ていきましょう。
若手社員を育成する
人材の育成と言うと管理職やリーダー職の業務と思われがちですが、若手社員の育成には中堅社員の働きが欠かせません。若手から見ると中堅社員は管理職よりも年齢が近く、ふだんから身近な存在として接する機会が多いためです。上司からもサポート役を任されることが多いでしょう。
チームの先輩として若手の相談に乗ったり自分の経験で得たノウハウを伝えたりするほか、知らず知らずのうちに身近なお手本になっていたりするものです。実際には、意図していなくても育成にかかわっています。そしてそれは中堅社員に求められていることでもあります。
上司のサポートを行う
また、中堅社員は上司のサポートを行うことも期待されます。具体的には、上司の指示をチームに伝えたり現場の状況を上司に報告したりしてマネジメントの補佐を行うことや、上司から求められる成果を上げるため行動することなどです。
このように中堅社員には、チームの中にあって上司の指示や意図を酌むことが求められます。上司と現場のパイプ役となって上司をサポートすることも中堅社員の役割です。
実務の中心的役割を担う
さらに実務の中心的な役割を担うことも求められます。中堅社員の目安である入社3年ともなると、一定の経験を積んで知識が身についている頃です。業務を行うための具体的なノウハウについては、むしろ管理職より詳しいことも珍しくありません。
中堅社員は仕事への理解も深まり、自信と活力にあふれて心身ともに充実した状態にあることが多いでしょう。中堅社員には、経験の浅い若手をリードしながらチームの中心として実務にあたり成果を上げていくことが求められます。
管理職としてのスキルを身に付けていく
中堅社員は管理職としてのスキルを少しずつ身に付けていくことも求められます。現場のリーダー的存在としてチームをまとめていくということは、徐々に管理職に近づいていくということでもあります。
中堅社員のリーダーシップの習得は、中長期的に企業の運営を見たときに将来を大きく左右します。まずはメンバー1人ひとりに目を配りフォローしつつ、チーム全体の成果を追求するのも中堅社員に求められる姿です。
中堅社員研修の目的
中堅社員研修は、より具体的には次のような目的で行われます。中堅社員に求められる姿を実現するために必要なポイントだと言い換えることもできるでしょう。
- リーダーとしての意識改革
- スキルアップ
- チームワークの向上
1つずつ見ていきましょう。
リーダーとしての意識改革
中堅社員研修では、主にリーダーとしての意識改革を行います。中堅社員は現場での実務に精通していても、指導者として組織全体を導く経験はまだ浅いといえるでしょう。
リーダーになるためには、指導する側としてどのように考えるか、何をするべきかを理解しなくてはなりません。時には部下を叱る必要もありますし、逆に言葉に出してほめる必要もあります。リーダーとしての自覚がない状態では気後れしてしまうようなことも、リーダーになったら行うことが求められます。
まだリーダーの自覚がない社員をリーダーに近づけていくためには、意識と行動の両面で変化を促さなくてはなりません。中堅社員研修では今後の昇進を視野に入れ、中堅社員にリーダーとしての自覚を芽生えさせます。
スキルアップ
中堅社員研修では、現在の中堅社員という立場に必要なスキルの強化を行います。中堅社員は実務の中核を担わなくてはいけません。実務でより高い成果を上げられるようになるためには、スキルアップが必要です。たとえば、新人よりも広い視野で物事を見る能力や、後輩よりも上の立場として指導する能力は、中堅社員に必須のスキルです。そのほか営業職なら営業スキル、技術職ならより高度な作業スキルが求められます。
これらはすべて今の企業の経営に直接かかわってくるスキルです。もちろんこのほかにも、業種や職種によって多種多様なスキルが必要です。研修では上記の一例を含め中堅社員のスキル向上を目指します。
チームワークの向上
中堅社員研修では、中堅社員という立場や役割から、チームワークに貢献する能力を学びます。上司へのフォロワーシップを発揮し、後輩への指導や同僚との協力を積極的に行い、周囲の人間を巻き込める中堅社員が理想です。
そのためには上司と後輩の間に立ってコミュニケーションを取りながら、両者の調整を行ったりチームをまとめて業務を進めたりする能力を身に付ける必要があります。また1人のメンバーとして、周囲を見ながら自発的に行動する観察力と行動力も中堅社員に求められる能力です。中途研修はそういった行動ができるよう育成することも目的となるため、研修を受けた後ではチームワークの向上も期待できます。
中堅社員研修で身に付くスキル
中堅社員研修では、以下のようなスキルが身に付きます。
- リーダーシップ
- フォロワーシップ
- コミュニケーション能力
- 課題解決力
これらのスキルは、先に述べた中堅社員研修の目的を果たすためにより具体的に必要となるスキルです。1つずつ見ていきましょう。
リーダーシップ
中堅社員研修では、部下や後輩の手本となり、適切な指導ができる力を身に付けます。中堅社員がチーム目標と個人目標の両方を把握し、積極的にそれぞれの個人目標の達成をサポートしつつ、チーム目標の実現のために行動できると理想です。
リーダーシップを身に付けるためには、状況認識能力(コンセプチュアルスキル)・対人関係能力(ヒューマンスキル)、業務遂行上の専門知識・技術(テクニカルスキル)の3つのスキルを習得することが必要だと言われます。中堅社員研修ではこれらのスキルを得ることでリーダーシップを身に付けることができます。
フォロワーシップ
中堅社員研修を通して、フォロワーシップが身に付きます。フォロワーシップとは、上司をサポートすることで、チーム全体のレベルアップを図る力のことです。リーダーシップが後輩に対する対応のスキルなのに対して、フォロワーシップは上司に対する対応スキルです。これら2つのスキルが求められるのは、上司と後輩の両者の間で業務を進める中堅社員ならではと言えるかもしれません。
ただし、いずれも成果を上げるためという目的は共通しています。上司の苦手な部分や自分のほうが優れているスキルがあれば、強みを生かして提案やフォローを行います。
コミュニケーション能力
中堅社員研修では、ビジネスシーンに必須のコミュニケーション能力が培われます。上司と若手社員の間に立ったり、ビジネスパートナーと交渉したりする中堅社員のキャリアにおいて、コミュニケーション能力は重要性が高いスキルです。
コミュニケーション能力は、かみ砕いてわかりやすく伝えるスキル、利害が一致しない相手との落としどころを見つけて納得させる交渉スキル、相手の意見を傾聴するスキルなどに細分化できます。チームビルディングやビジネスマナーに共通するテーマであり、昇進を視野に入れたレベルアップにも有効といえます。
課題解決力
中堅社員研修では、課題解決力の強化が期待できます。中堅社員には業務上の課題に適切に対処し、解決する力が求められます。チームの抱える課題を発見して具体的な解決策を提示するほか、ボトルネックとなっている部分を解決して目標を達成するスキルも必要です。
受講者は客観的かつ論理的な判断を基に、組織にとって最善の解決策を提示できるようになるでしょう。また、自己の意思決定に必要な情報を収集し、適切な解決策を導き出す思考力も身に付きます。
中堅社員研修の必要性
昨今、多くの企業では新人よりも中堅社員に対する研修に力を入れることが多くなってきました。その理由として大きいのは、役職付きの管理職ではないものの、職場においてバリバリ仕事をしている即戦力レベルの社員が、もっとも多いからです。
場合によっては、他の部署から人事異動によって配属されてきた役職付きの社員よりも、中堅社員のほうが遥かに仕事内容に精通していることもあります。その人がいないと仕事が滞るケースも珍しくありません。そのため、中堅社員は管理職になる前により大きな役割を果たし、マネジメント能力を身に付けたうえで昇格してもらいたいという狙いが、会社側にはあります。
中堅社員は仕事をバリバリこなせる一方で、仕事内容と給与の兼ね合いや、上司と若手社員との間に挟まれることで、自分のしたい仕事ができないケースも発生します。自らの実績を生かして転職してしまう社員も多いのが特徴です。しかし、会社側からは上司と若手社員の間に立ち、指導者的な立場として若手社員を育成しよりレベルアップさせてほしいと考えられています。また、役職付きの管理職の下では、上司の仕事がスムーズに進められるよう、これまでの経験から補佐的な役割も期待されるでしょう。中堅社員がどれだけ力をつけ能力を伸ばせるが、会社の業績を大きく左右するといっても過言ではないのです。
中堅社員研修のプログラムの例
最後に、私ども社員教育研究所で提供している中堅社員向けの研修のプログラム例をご紹介します。ここでは以下の2つのコースについて概略をまとめます。
- 管理者養成基礎コース
- 指導力開発訓練
なお、このほかにも実務的な内容の中堅社員向け研修も実施しています。ご興味おありの方は、このページのTOPにある「研修を探す」かページ一番下からチェックしてみてください。
では、上記2コースの概略をご紹介します。
「管理者養成基礎コース」
管理者養成基礎コースの目的は、管理者に求められる考え方や、行動の基準を習得することです。カリキュラムを通して中堅社員のマネジメントスキルを強化。また、相手に伝わりやすい話の構成力を習得し、リーダーにふさわしい説得力のある話し方を身に付けます。
プログラムの内容には、短期間で自身の考えを相手に正しく伝える訓練をする「40の質問」や、管理者の理想像を導き出して自身の指針を掲げる「管理者の条件訓練」が含まれます。管理者に選ばれる基準や期待されること、任務などについて参加者同士で議論して理解を深め、仕事での成果へつなげる効果が期待できます。
研修スケジュール
中堅社員向け研修「管理者養成基礎コース」の資料請求はこちら 中堅社員向け研修「管理者養成基礎コース」の申し込みはこちら「指導力開発訓練」
指導力開発訓練の目的は、中堅社員へ管理者となる人材にふさわしいリーダーシップを身に付けさせることです。現場では部下への指導力が不可欠です。カリキュラムでは難易度の高い場面を想定してロールプレイを実施し、効果的に部下を指導するスキルを強化します。
研修プログラムでは、まず「指導力10則」でリーダーシップの原理と心構えを理解させます。中堅社員は指導者に求められる行動指針の基本を身に付けられるでしょう。その後は「正しい仕事の与え方」「注意する」「誉める」といった具体的なロールプレイの実践を重ね、現場を想定した厳しい訓練で指導者としての認識をより活性化させます。
研修スケジュール
中堅社員向け研修「指導力開発訓練」の資料請求はこちら 中堅社員向け研修「指導力開発訓練」の申し込みはこちらキーパーソンこそ中堅社員研修を受講すべき理由とは?
若手社員にとっては指導者的立場の先輩となり、役職付きの上司からは仕事に精通した頼れる部下という立場になることから、中堅社員が各部署のキーパーソンとなる年代の社員であるのは紛れもない事実です。自分自身がこれまで積んできた経験から仕事の進め方を明確に理解し、たとえミスをしても失敗からカバーする方法を学んでいます。
仕事をこなすうえで特別な勉強をする必要がない中堅社員が学ぶべきなのは、「現在の自分について」や「今後の自分について」です。中堅社員は、職場の重要なキーパーソンの位置にいます。従って、自分の仕事に専念するのではなく、会社という組織の中で広い視野を持ち、全体像を掴みながら仕事を進める重要性に気づいてもらう必要があるのです。
中堅社員に必要な研修は、今後リーダーとして求められる役割を把握させ、自分の仕事と共に職場の人たちをまとめ、なおかつ会社全体を見据えて仕事を進めていく意識に変えるような研修と言えます。仕事のスケジュール管理や目標達成までの流れ、効率よい仕事の仕方といった業務のスキルアップももちろん大事ですが、それよりも中堅社員として意識の変革を促すために研修を行うのが、一番の目的と言えるでしょう。
中堅社員研修は受講者それぞれの特徴に合わせた内容に
中堅社員研修は、受講者1人ひとりの特徴に合わせた内容を提供できると理想です。中堅社員だからといって、社内の中堅社員を一括りに同じ内容で勉強させるのは、経費の無駄遣いになりかねません。部署によっては個人で仕事をする方が効率よい場合もありますし、先述のようにチームを動かす能力が仕事をスムーズに進めていくカギになる場合もあるでしょう。いずれにしても、企業において適材適所の人員配置が業績に大きく響くのは明らかです。
新人教育であれば、全員が一斉に同じスタートラインに立ち、ビジネスパーソンとして必要な最低限のスキルを学んだのち、配属先で必要な知識を新たに吸収していきます。しかし、若手を卒業して次なるレベルの年齢層になると、部署ではなく人を選んで仕事を頼むというケースがしばしば出てきます。その人にしかできない仕事があったり、丁寧ながらも早く仕事を仕上げたりと、個人の能力が浮き彫りになるのが一番の理由と言えます。専門知識の豊富さや適性を考慮し、「頼むならこの人に」といった具合になるわけです。
中堅社員研修では、若手社員を卒業した段階で見えてくる、仕事ができるか否かの能力の差を見極める必要があります。よりメンタルを重視した内容の研修を受講させるか、それとも個人の能力をより一層引き上げる研修を受講させるかで、社員一人ひとりの成長が大きく変わってくるでしょう。
ただし、リーダーシップはどんなタイプの中堅社員にも共通して求められる要素です。今後より一層リーダーシップの発揮が求められる点ではどの中堅社員も同じですので、リーダーシップを強化する研修は不可欠かつ、全員が共有して問題ないと考えられます。
この記事の監修者
株式会社社員教育研究所 編集部
1967年に設立した老舗の社員研修会社。自社で研修施設も保有し、新入社員から経営者まで50年以上教育を行ってきた実績がある。30万以上の修了生を輩出している管理者養成基礎コースは2021年3月に1000期を迎え、今もなお愛され続けている。この他にも様々なお客様からのご要望にお応えできるよう、オンライン研修やカスタマイズ研修、英会話、子供の教育など様々な形で研修を展開している。