部下の育成失敗を防ぐには?主な原因や上司が注意すべきポイント
2021年11月15日(月)
入社した社員がパフォーマンスを発揮するまでには、段階的な育成が必要です。指導を開始した序盤はどんな社員も生産性の高い仕事ができませんが、長い時間をかけても期待していたパフォーマンスを出せない社員がいます。そうしたケースでは、選択した教育方法が間違っており、育成が失敗に終わっているのかもしれません。ストレスやモチベーションの低下により社員が職場を去ってしまうようなケースは、明らかな育成失敗です。こちらでは、こうした育成失敗を避けるために上司ができる取り組みについて紹介します。
部下の育成で上司がしがちな失敗
感情的になり怒ってしまう
第一に挙げるのが、上司が自分の感情を抑えられず、部下に怒りをぶつけてしまう失敗です。具体的な例として、大きな声を出す、高圧的な態度をとる、相手の尊厳を傷つける言葉を使う、といったケースが挙げられます。
大切なのは、怒るのは指導とは異なるという認識です。指導の中で感情を優先してしまうと、部下からの信頼を損ねる原因になります。指導の本質を理解した上でどのような反応・行動をとるか判断することが大切です。
成長につながる仕事を与えない
部下に簡単な仕事や責任の少ない仕事ばかりを割り振ってしまうのも、よくある失敗例です。難しい仕事を上司が自分でこなしてしまうと、部下はできる範囲の仕事しか取り組まなくなります。上司からの信頼を得られていないと漢字、部下のモチベーションが上がりにくじのも問題です。
経験が乏しい部下に難易度が高い仕事を任せると、当然失敗してしまうことも考えられます。しかし、確実にできる仕事だけを任せていても部下の成長は期待できません。成果を度外視して難度の高い業務に練習として挑戦させて、レベルアップを促すことも大事です。万が一の結果が出た場合は最大限のフォローをする覚悟で部下に仕事を任せましょう。
自分の考え方を押しつけてしまう
上司が部下の意見を聞き入れず、信頼関係が崩れてしまう失敗もあります。一方的にアドバイスをする、相手の話を最後まで聞かずに遮る、といったケースが代表例です。
こうした例では、相手の気持ちに寄り添う「傾聴」ができていないといえます。「傾聴」とは、相手を尊重して積極的に聞き入れる姿勢のこと。聞く姿勢が悪いと部下が上司を信頼できなくなるきっかけにもなりうるでしょう。部下とはいえ、人間として、ひとりのビジネスパートナーとして価値観を尊重する必要があります。
部下の育成に失敗する主な原因
部下とのコミュニケーションが不足している
信頼関係を構築するには、上司と部下のコミュニケーションを充実させる必要があります。しかし、一方でさまざまな事情により部下とのコミュニケーションが不足してしまいやすいのも事実です。育成失敗の多くのケースは、こうしたコミュニケーション不足によって引き起こされます。部下がどのようなスキルがどの程度不足している確認するためにも、コミュニケーションは重要です。
業務の報告をさせる、定期的にミーティングを開催する、仕事の完了後にフィードバックを行うなど、簡単な対話を日常的に行うことが解決策のひとつです。しかし、日常業務が多忙で部下育成のために十分な会話の時間を確保できないケースもあります。経営層や人事部門が人材育成の重要性を理解して、コミュニケーション不足に関する根本的な対策を講じる必要があります。
上司のマネジメント能力が低い
上司に部下育成のスキルが不足しているケースもあります。スキルが少ないと自身の経験に基づいた自己流の指導になりやすく、共感を得られにくいのが問題です。このように上司のマネジメント能力が低い場合は、取り組みを実施しても人材育成の効果が期待できず、リスクが高い状態といえるでしょう。リーダーシップやコーチングなどを学ぶ機会が上司に必要になります。
人事評価制度に課題がある
適切な評価の指標がない場合は、社員が自分の状況を把握するのを困難に感じます。そのため、仕事に取り組む上でのビジョンや目標を見失い、やる気を損なうことにつながります。社員自身が成長の動機を失っている状態のため、ステップアップは見込めません。
社員が正当な評価を受けられていない場合は育成が難しいだけではなく、退職のきっかけにもなり得ます。こうしたケースでは、人事評価制度の改善や、評価者による育成の仕組みを検討する必要があるでしょう。まずは現状の評価方法が妥当なものかどうか、詳細なチェックが求められます。
部下の育成を成功へ導くポイント
部下の特徴に応じた指導を行う
部下のタイプによって、相性の良い指導方法が異なります。挑戦を好む部下にはやや難度の高い仕事を任せる、競争心の強い部下には目標達成へ向けてライバルの成績を意識させる、まずOJTを行って自信をつけさせる、現実的な目標設定から少しずつ成長していくなど、部下の特徴に応じた効果的な指導を行いましょう。
指導方法を決める上では、部下の適性をよく知る必要があります。部下の性格やスキル、モチベーションなどを把握しておくと良いでしょう。日常的にそれぞれの部下がどんなパーソナリティーを有しているのか注視しておくことが大切です。
心理的安全性を確保する
心理的安全性とは、組織の中で安心して発言できる状態を指します。心理的安全性が確保された状態では、部下がコミュニケーション上の不安やストレスを抱えることが少ない傾向があります。仕事に集中でき、高いパフォーマンスを発揮しやすいため、部下を育成するための状況としては最適です。
心理的安全性を確保するためには、部下が安心して発言できる環境が必要になります。部下が発言しやすい環境を上司が率先して整えると良いでしょう。部下から声をかけられたときは相手のほうを向いて話を聞く姿勢をとる、といった小さな心がけで、部下が発言する際の心理的なハードルが下がる効果が期待できます。
管理職向けの研修を受講する
上司のマネジメント能力を向上させる研修プログラムがあります。上司のマネジメント能力が懸念される場合は、こうしたプログラムを受講させるのもおすすめです。
社員研修を専門とするサービスを利用すると、プロの外部講師から指導を受けられます。管理職の育成では、レベルの高いプログラムが求められるケースが多いため、受講内容を検討しなければなりません。また、実際に効果が期待できるようなレベルの高い受講内容は社内講師のみでは対応が難しいことがあるため、マネジメントの指導に特化した外部講師によるサービスを利用するのが確実といえます。
専門的な研修プログラムでは、管理職に求められる知識や技術を学べるのが魅力です。リーダーシップ、マネジメント、コミュニケーション能力、ロジカルシンキングなどを磨けば、部下の育成サポートを始めとした管理職としての総合的なスキルアップが期待できます。
「部下は大切な資産!失敗のない育成を」
部下育成の失敗例や失敗を回避する方法について解説しました。一度、育成に失敗すると部下からの信頼や部下のモチベーションを損なうケースが多く、カバーは困難です。最悪の場合は部下の離職など深刻な事態が発生してしまうことも考えられます。育成の進め方に工夫を加えるだけで、部下のパフォーマンスが大きく向上することも少なくありません。部下ひとりひとりを大切な資産と考え、育成の方法を慎重に検討しましょう。
この記事の監修者
株式会社社員教育研究所 編集部
1967年に設立した老舗の社員研修会社。自社で研修施設も保有し、新入社員から経営者まで50年以上教育を行ってきた実績がある。30万以上の修了生を輩出している管理者養成基礎コースは2021年3月に1000期を迎え、今もなお愛され続けている。この他にも様々なお客様からのご要望にお応えできるよう、オンライン研修やカスタマイズ研修、英会話、子供の教育など様々な形で研修を展開している。