評価者研修とは?人事評価でよくある課題や導入のメリット、注意点
カテゴリ:中堅社員研修 ロジカルシンキング研修
2022年6月8日(水)
人事評価は優秀な人材を登用し、会社の発展に寄与する重要な取り組みです。また、評価を受けた側からすると、自身の努力が認められたり、不足要素を自覚したりできる機会とも言えるでしょう。しかし、これはあくまで適正な人事評価が行われている場合です。実際には、制度や評価者側の問題により、不適切な評価が下されるケースも少なくはありません。こちらの記事では、人事評価に関する課題や、その解決策としての評価者研修について詳しく解説を行います。
企業が抱えがちな人事評価の課題
人事評価はある程度の属人化を要します。評価は必ずしも定量では判断ができず、定性的な要素を含むからです。そのため、人事評価の制度は担当者の評価能力に少なからず影響を受けるとも言えるでしょう。
ここで起こる問題が、評価者のスキル不足です。仕事や人柄などを見て評価を下すには、経験や知識が必要です。しかし、担当者がその能力を身に着けていないと、どうしても主観を優先した評価になりがちです。また、自身としては主観が混ざっていることに気づけないケースもよくあります。
さらに問題なのが、人間関係が及ぼす影響です。贔屓と言うほどではないにせよ、人は自分に近しい人物に信頼を抱き、好印象を持つのが当たり前。それ自体は悪いことではありませんが、人事評価としては公正かつ正当とは言えないでしょう。評価者に近い範囲のみで判断がなされてしまうことも、優秀な人材の登用を阻む要素になり得ます。
人事評価制度は公平性が保たれたシステムであるべきです。しかし、時が経てば社内事情も変わりますし、定年者が増え新卒者が入社すれば、会社の風土もだんだんと変わっていきます。すると、数年前に立案した人事評価制度がうまく機能しなくなることも考えられるでしょう。
とくに、評価のポイントや基準があいまいだと、どんな行動をすれば認められるのかを社員が把握しにくく、行動に結びつきにくくなります。その評価項目の説明が曖昧、従業員の理解がなければモチベーションにもつながらないでしょう。また、結果ばかりが見られる能力評価中心の制度の場合、プロセスが無視されがちです。結果はもちろん大事ですが、その社員がプロジェクトを成功に導く上でどのような活躍をしたかも評価材料にしなくては、公平性も保てません。
このように、人事評価制度は定期的な見直しが求められます。その上で、改正されたポイントや評価方法、その意義をしっかりと社内へ周知しておくことが大切です。
役職や給与・賞与金額などを決めるだけが人事評価の目的ではありません。まだ未熟な新人に対し人材育成の役割があることも踏まえた設計が必要です。たとえば、適切な目標設定と目標管理、上長および教育担当者からのフィードバックは、部下育成の推進に効果があります。
また、企業の人材マネジメントの観点でも、人事評価は大きな意味を持ちます。従業員の成長を促す制度が整えられていなかったり、モチベーションにつながる評価が行われていなかったりすると、社員の育成を妨げる要因にもなり得るのです。
このように、人事評価は会社全体の問題につながります。しかし、すでにご紹介したとおり、正しい運用のためには人事評価に関するスキル・知識を持った人材が欠かせません。そこでおすすめしたいのが「評価者研修」です。
評価者研修とは
評価者研修の主な対象者は管理職層、人事担当者、経営層など。つまり、人事評価の実施者です。人事評価の目的や評価プロセス、評価基準など基本事項の学習、評価や面談などのスキル習得を目的に、プログラムが実施されます。
研修の成果として、評価者全体のスキル向上が期待できます。また、実施者によって評価に大きな差が生じるといった不公平感の払拭にもつながります。
評価者研修では、受講者参加型のロールプレイングやグループワーク、能力開発のトレーニングなどが行われます。会社に持ち帰ったときにしっかり活用できるよう、実践的なケーススタディやフレームワークなどがプログラムとして組み込まれている傾向にあります。
なお、経験が浅い評価者に向けて、基本講義や演習なども用意されています。最近では、eラーニングでのオンライン研修も活用されるようになってきました。
人事評価では人間の認識・考え方・感情などの傾向から、多くのエラーが起こりやすいとされています。以下は、その代表的な傾向や誤差等です。
*中心化傾向:社員の評価が中央値に集中してしまうこと
*極端化傾向:最高あるいは最悪に評価が二極化してしまうこと
*寛大化傾向:被考課者への配慮で評価が甘くなってしまうこと
*厳格化傾向:すべての被考課者に対し、実際より厳しい評価を下すこと
*逆算化傾向:逆算による帳尻合わせで不適切な評価を下すこと
*論理誤差:実態を把握・確認せず評価者自身の論理・理屈で評価をしてしまうこと
*対比誤差:評価者が自身と被考課者とを対比し不適切な評価を下すこと
*期末誤差:期末期間のうち、最後のほうの印象を重視して評価してしまうこと
*ハロー効果:特定項目の印象がその他の事項に影響し、不適切な評価を下すこと
上記のような傾向や誤差等が発生している状況は、適正な人事評価が行われていないと言えます。公平な評価の手法を学び、対策をして、エラーによる偏りを極力抑えることが求められます。
評価者研修のメリットと注意点
評価者研修には、人事制度の運用を成功へと導き、人材育成の成果をもたらすというメリットがあります。
「がんばれば認めてもらえる」という環境は、当たり前のようでなかなかありません。そのため、社員が納得する基準で付けられた適正な評価は、仕事に対するモチベーションにつながります。
また、何が評価されるのかが明確になると、目標も生まれます。被評価者の意識が変われば、仕事への取り組み方にも変化が現れるでしょう。こうした意識改革が社全体に広がれば、組織の活性化も促進されます。
そのほか、現在の人事評価制度を見直したいといった場合にも評価者研修はおすすめです。近年ではリモートワーク(テレワーク)も、多くの会社で導入されています。しかし、管理職の立場からすると、部下の行動や業務への取り組み方が見えにくくなっているケースも少なくありません。
評価者研修に参加すれば、現在で求められている評価の方法に加え、リモートワークにおける評価の仕組みについても学べます。新しい時代に合った人事評価制度を採り入れたい場合に、ぜひご活用ください。
当たり前ではありますが、研修で身に着けたスキルは、人事評価の現場で生かす必要があります。必要に応じて、人事評価制度の改善を検討するよう働きかけてもよいでしょう。単に知識をインプットするだけでは、会社には影響がありません。人事制度の質を高めることが研修の目的ですから、その心構えを忘れないように注意しましょう。
また、評価者同士が情報共有をし、社内の課題を全員で把握できていることも大切です。とくに人事評価は全社的な取り組みであるため、各員が同じレベル感でコミュニケーションできなくては、解決に向けた運用改善は行えません。評価者研修を受けたことで見えてきた課題などがある場合は、それを社に持ち帰って報告・ディスカッションしてみましょう。また、今後、評価者同士で活用できそうな知識・スキルがあれば、惜しみなく伝え合う姿勢が大切です。
「評価者研修で適切な人事評価を」
適切な人事評価は、社員のモチベーションを向上させ、目的意識の明確化にもつながります。そのためには、評価者が正しい知識・スキルを身に着けることが重要です。
管理者の任務を一から確認し、適切な人事評価や効果的な指導ができる管理者を目指すプログラムとして、「組織力向上研修」をご提供しています。適切な人事評価を社に根付かせ、組織力を強化したいという方は、ぜひご活用ください。