評価者研修とは?人事評価でよくある課題や導入のメリット、注意点

2022年6月8日(水)

2023年7月22日(土)

評価者研修とは?人事評価でよくある課題や導入のメリット、注意点

人事評価は優秀な人材を登用し、会社の発展に寄与する重要な取り組みです。また、評価を受けた側からすると、自身の努力が認められたり、不足要素を自覚したりできる機会とも言えるでしょう。しかし、これはあくまで適正な人事評価が行われている場合です。実際には、制度や評価者側の問題により、不適切な評価が下されるケースも少なくはありません。

こちらの記事では、人事評価に関する課題や、その解決策としての評価者研修について詳しく解説を行います。人事のご担当者様・部下を持つ方々はご一読ください。

評価者研修とは

評価者研修は、人事評価の目的や評価プロセス・評価基準など基本事項の学習、評価や面談などのスキル習得を目的にしたプログラムです。評価者研修の主な対象者は管理職層、人事担当者、経営層など。つまり、人事評価の実施者です。

研修の成果として、評価者全体のスキル向上が期待できます。また、実施者によって評価に大きな差が生じるといった不公平感の払拭にもつながります。

企業が抱えがちな人事評価の課題

企業が抱えがちな人事評価の代表的な課題として、次の3つが挙げられます。

  • 評価者の経験が不足している
  • 人事評価制度に対して社員が不満を持っている
  • 人事評価が社員の育成につながっていない

それぞれについて見ていきましょう。

評価者の経験が不足している

人事評価はある程度の属人化を要します。評価は必ずしも定量では判断ができず、定性的な要素を含むからです。そのため、人事評価の制度は担当者の評価能力に少なからず影響を受けるとも言えるでしょう。

ここで起こる問題が、評価者のスキル不足です。仕事や人柄などを見て評価を下すには、経験や知識が必要です。しかし、担当者がその能力を身に付けていないと、どうしても主観を優先した評価になりがちです。また、自身としては主観が混ざっていることに気づけないケースもよくあります。

さらに問題なのが、人間関係が及ぼす影響です。贔屓と言うほどではないにせよ、人は自分に近しい人物に信頼を抱き、好印象を持つのが当たり前。それ自体は悪いことではありませんが、人事評価としては公正かつ正当とは言えないでしょう。評価者に近い範囲のみで判断がなされてしまうことも、優秀な人材の登用を阻む要素になり得ます。

人事評価制度に対して社員が不満を持っている

人事評価制度は公平性が保たれたシステムであるべきです。しかし、時が経てば社内事情も変わりますし、定年者が増え新卒者が入社すれば、会社の風土もだんだんと変わっていきます。すると、数年前に立案した人事評価制度がうまく機能しなくなることも考えられるでしょう。

とくに評価のポイントや基準があいまいだと、どんな行動をすれば認められるのかを社員が把握しにくく、行動に結びつきにくくなります。その評価項目の説明があいまいなせいで従業員が理解できなければモチベーションにもつながらないでしょう。また、結果ばかりが見られる能力評価中心の制度の場合、プロセスが無視されがちです。結果はもちろん大事ですが、その社員がプロジェクトを成功に導く上でどのような活躍をしたかも評価材料にしなくては、公平性も保てません。

このように、人事評価制度は定期的な見直しが求められます。その上で、改正されたポイントや評価方法、その意義をしっかりと社内へ周知しておくことが大切です。

人事評価が社員の育成につながっていない

役職や給与・賞与金額などを決めるだけが人事評価の目的ではありません。まだ未熟な新人に対し人材育成の役割があることも踏まえた設計が必要です。たとえば、適切な目標設定と目標管理、上長および教育担当者からのフィードバックは、部下育成の推進に効果があります。

また、企業の人材マネジメントの観点でも人事評価は大きな意味を持ちます。従業員の成長を促す制度が整えられていなかったり、モチベーションにつながる評価が行われていなかったりすると、社員の育成を妨げる要因にもなり得るのです。

このように、人事評価は会社全体の問題につながります。しかし、すでにご紹介したとおり、正しい運用のためには人事評価に関するスキル・知識を持った人材が欠かせません。そのために有効なのが「評価者研修」なのです。

評価者研修の目的

評価者研修の主な目的としては、次の4つが挙げられます。

  • 人材育成
  • 労働力の流出予防
  • 人事評価制度の改善
  • 業績の向上

評価者が公平な評価を行えるようにしてさまざまな面の改善につなげることが、評価者研修のより具体的な目的だと言えます。それぞれの目的について具体的に見ていきましょう。

人材育成

評価者研修には、人事制度の運用を成功へと導き、人材育成の成果をもたらすというメリットがあります。評価者研修の目的の1つが人材育成の実現です。

「がんばれば認めてもらえる」という環境は、当たり前のようでなかなかありません。そのため、社員が納得する基準で付けられた適正な評価は、仕事に対するモチベーションにつながります。

また何が評価されるのかが明確になると、社員は評価につながる行動を取るようになります。さらには目標も生まれ、目標達成への意欲も高まるでしょう。被評価者の意識が変われば、仕事への取り組み方にも変化が現れます。こうした意識改革が社全体に広がれば、組織の活性化も促進されます。

労働力の流出予防

労働力の流出予防も評価者研修の目的の1つです。評価者研修によって公平かつ適正な評価が行われるようになると、社員の離職を減らすことができます。社員の納得度と満足度が高まるからです。

20代~30代会社員のほぼ半数が「会社の人事評価に不満がある」と回答したアンケートもあります。評価する側は現状のままでも問題ないと考えているかもしれませんが、実は評価する側とされる側とでは認識に大きな隔たりがあるのです。

社員が現在の評価に不満があれば、正当に評価される企業に転職してしまう可能性が高まります。しかし適正と感じられる評価が行われれば、評価に満足して定着することが期待できます。どの業種でも人手が不足している現在、労働力の流出予防は企業にとって大きなメリットです。さらには「公平に評価してくれる会社」として、求人がしやすくなる可能性も高まるでしょう。

人事評価制度の改善

そのほか現在の人事評価制度の見直しのために評価者研修が活用されることがあり、目的の1つとなっています。近年ではリモートワーク(テレワーク)が多くの会社で導入されています。しかし管理職の立場からすると、部下の行動や業務への取り組み方が見えにくくなっているケースも少なくありません。

評価者研修に参加すれば、現在求められている評価の方法に加え、リモートワークにおける評価の仕組みについても学べます。もちろんリモートワークに限らず、適切に評価する方法を知ることができ、学んだことを人事評価制度の改善に役立てることが可能です。新しい時代に合った人事評価制度を採り入れたい場合に、評価者研修を活用することができます。

業績の向上

適正かつ公平な評価の最終的な目的は業績向上ですが、評価者研修によりそれが実現できる可能性が高まります。公平な評価が行われることで人材育成が進み労働力も確保しやすくなると、業務が効率的に行われるようになります。モチベーションが高くスキルのある人材が増えるからです。当然その結果、業績も改善されることが期待できます。

業績が向上すれば待遇もさらに改善しやすくなり、ますます社員のモチベーションが高まります。こうしてポジティブなスパイラルが生まれ、さらに業績が向上していきます。短期間で得られる効果ではありませんが、少しずつ企業としての体質改善を進めていくのに近いと言えるでしょう。

評価者研修の研修内容

評価者研修の主な研修内容としては、次の内容が挙げられます。

  • 評価制度の理解
  • 適切な目標設定の方法
  • 公平に評価する方法
  • 効果的なフィードバックの方法

もちろんほかの内容で実施されることもありますが、上記は多くの研修でよく行われている内容です。それぞれについて見ていきましょう。

評価制度の理解

まず、根本的なこととして評価制度そのものを理解することを学びます。たとえば、なぜ評価制度が存在するのか、自社の評価制度はどのような方針によりどんな点を評価するよう設計されているのか、適切に制度を運用するためにはどのようなことを守らなくてはならないのか、などといったことです。

これまで述べてきたように評価は被評価者のモチベーションに影響するばかりか、ひいては生活にも直結するような責任を伴う業務です。あらためて根本的なことを理解することによって、理念や目的に添うように評価を行うことができるようになるほか、公平な心構え作りにも役立ちます。

適切な目標設定の方法

評価者研修では、部下が適切な目標を設定する方法についても学びます。これをお読みの方の会社でも、多くが人事評価やマネジメントの手法として「目標達成制度(MBO)」を導入しているのではないでしょうか。MBO以外でも、目標を設定して達成度に応じて評価する方法はいくつかあり、目標設定と評価は切っても切れない関係にあります。

目標の達成度で評価を行う場合、評価方法に合った適切な難易度の目標を設定しなければなりません。評価はもちろん、人材育成や企業としての売上などにも大きな影響があるからです。評価者研修では、適切な目標設定をサポートするための知識を得ることができます。

公平に評価する方法

さらに、公平に評価するための方法も評価者研修の重要な内容です。適正・公平な評価を行うことが出発点となって、人事評価が企業の体質改善につながっていくからです。実務で生かせるようになるため、グループワークやケーススタディなど実践的な形式で学ぶことも多いでしょう。

意図していなかったとしても、人間の判断にはバイアスがかかりがちです。具体的なバイアスやエラーについては以下で解説しますが、偏向のあるままで評価を行うと適正な判断ができません。評価者研修では、バイアスがないか自己分析しながら評価する方法を学びます。

効果的なフィードバックの方法

効果的なフィードバックを行う方法も、評価者研修で学ぶことの多い内容です。評価を育成につなげるためには、評価結果とともに今後期待している点や課題となる点を理解してもらわなくてはなりません。それを適切にフィードバックするスキルが必要ということになります。

評価者研修では、部下が前向きに業務に取り組んでいけるようにフィードバックを行うスキルを学びます。研修により、面談の環境作りから話し方、言葉の選び方など実践的・具体的な技術を身に付けることが可能です。

評価で起こるエラー

人事評価では人間の認識・考え方・感情などの傾向から、多くのエラーが起こりやすいとされています。以下は、その代表的な傾向や誤差等です。

中心化傾向

社員の評価が中央値に集中してしまうこと。5段階評価の3に評価が集中してしまうなどのケースがある。嫌われたくないという心理やあいまいな基準などが原因となる

極端化傾向

最高あるいは最悪に評価が二極化してしまうこと。中心化を避けようとするあまり、評価が両極端になる。基準にのっとって評価するのではなく、バランスを意識しすぎることが原因

寛大化傾向

被考課者への配慮で評価が全般的に甘くなってしまうこと。部下の反発を恐れるときや部下からよく思われたいときのほか、業績など把握しきれていないときにも起こる

厳格化傾向

すべての被考課者に対し、実際より厳しい評価を下すこと。寛大化を意識しすぎるときに起こる。とくにスキルが高い評価者ほど、厳格化の傾向が強くなる

逆算化傾向

逆算による帳尻合わせで不適切な評価を下すこと。印象をもとに最終的な評価結果を先に決めてしまい、それに合わせて項目ごとの評価を決めていくようなプロセス無視の評価方法

論理誤差

実態を把握・確認せず評価者自身の論理・理屈で評価をしてしまうこと。勘違いや先入観・思い込みから、本来別である評価項目を関連付けて類似・同一の評価をしてしまうようなケース

対比誤差

評価者が基準をもとにせずに、自身と被考課者とを対比し不適切な評価を下すこと。自身が得意な項目は厳しく低く、自身が苦手な項目は甘く高く評価をするような例が該当する

期末誤差

期末期間のうち、最後のほうの印象を重視して評価してしまうこと。本来であれば対象の期間全体で実績を上げて評価を受けるべきところ、最後だけよい結果を出そうとする風潮を生む原因に

ハロー効果

特定項目の直近の印象がその他の事項に影響し、不適切な評価を下すこと。明るく元気な印象なので仕事もできると思い込んで高く評価してしまうようなケースが該当する

上記のような傾向や誤差等が発生している状況は、適正な人事評価が行われていないと言えます。公平な評価の手法を学び、対策をして、エラーによる偏りを極力抑えることが求められます。

評価者研修中・研修後の注意点

評価者研修の効果を高めるために、研修を行っている最中・行った後に注意すべき点についてまとめます。次の3点が挙げられます。

  • 実践的な方法で学ぶ
  • 評価される側との信頼関係を築く
  • 情報を共有する

1つずつ見ていきましょう。

実践的な方法で学ぶ

まず、実践的な方法で学べる研修づくり・研修選びが大切です。評価者研修では、受講者参加型のロールプレイングやグループワーク、能力開発のトレーニングなどが行われます。会社に持ち帰ったときにしっかり活用できるよう、実践的なケーススタディやフレームワークなどがプログラムとして組み込まれている傾向にあります。そういった研修で学びましょう。

さらに研修後は必要に応じて、人事評価制度の改善を検討するよう働きかけましょう。当たり前ではありますが、研修で身に付けたスキルは、人事評価の現場で生かす必要があります。単に知識をインプットするだけでは、会社には影響がありません。人事制度の質を高めることが研修の目的です。学んだ内容を現場で実践・活用することによって目的を達成しましょう。

評価される側との信頼関係を築く

評価方法を学んだあと、実際に評価するにあたっては評価される側との信頼関係を築くよう意識しましょう。信頼関係作りには日常的なコミュニケーションが必要で、強固な信頼感を得るためには時間がかかります。継続的な工夫を行いましょう。

日頃からのコミュニケーションにより相談を受けたりして、必要に応じて支援やアドバイスを行います。評価者は往々にして忙しいものですが、日常的にやり取りするのが難しい場合は定期的に話をする機会を作るなど仕組み化しましょう。そのほか、よき見本となるような行動を見せていくことも大切です。

細かな対応の積み重ねが信頼関係を生みます。そして信頼関係は、評価への納得感を生む要因の1つです。納得いかない場合も、信頼関係ができていれば冷静な話し合いが可能になります。時間をかけて、少しずつであっても途切れることのないように信頼関係を構築していきましょう。

情報を共有する

また、評価者同士が情報共有をし、社内の課題を全員で把握できていることも大切です。とくに人事評価は全社的な取り組みであるため、各員が同じレベル感でコミュニケーションできなくては、解決に向けた運用改善は行えません。

そもそも評価者各員が同じ基準で評価することができなければ、実績が同じでも評価が異なる、バラつきがあるということになってしまいます。同じような実績なのに評価者によって評価が異なれば、被評価者の不満が高まるのも当然でしょう。最低でも評価に関する情報はミーティングなどで共有するべきだと言えます。

評価者研修を受けたことで見えてきた課題などがある場合は、それを社に持ち帰って報告・ディスカッションしてみましょう。また、今後、評価者同士で活用できそうな知識・スキルがあれば、惜しみなく伝え合う姿勢が大切です。

「評価者研修で適切な人事評価を」

適切な人事評価は、社員のモチベーションを向上させ、目的意識の明確化にもつながります。そのためには、評価者が正しい知識・スキルを身に付けることが重要です。

私ども社員教育研究所でも、管理者の任務を一から確認し適切な人事評価や効果的な指導ができる管理者を目指すプログラムとして、「組織力向上研修」をご提供しています。適切な人事評価を社に根付かせ、組織力を強化したいという方は、ぜひご活用ください。お問い合わせや資料請求の連絡は、このページの最下部・右側・最上部から可能です。

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この記事の監修者

株式会社 社員教育研究所 編集部

株式会社社員教育研究所 編集部

1967年に設立した老舗の社員研修会社。自社で研修施設も保有し、新入社員から経営者まで50年以上教育を行ってきた実績がある。30万以上の修了生を輩出している管理者養成基礎コースは2021年3月に1000期を迎え、今もなお愛され続けている。この他にも様々なお客様からのご要望にお応えできるよう、オンライン研修やカスタマイズ研修、英会話、子供の教育など様々な形で研修を展開している。

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