チームワークの基本
2015年12月19日(土)
組織には「総合力」、社員には「チームワーク」が求められる
今から45年前、米国の学者たちが提示した「情報化社会」「知識社会」などの言葉は、SFの未来社会予測にも似た響きを持っていました。そしてそれは、大企業の電算室に設置され始めた大型コンピュータにその気配を感じる程度のものでしかありませんでした。A.トフラーに至っては、『未来の衝撃』(1970)の中で「将来、人は加速度的な情報量の増大と変化のスピードに飲み込まれる」と警告を発し、見事なまでにその予測を的中させてしまいました。
今や当時の巨大なコンピュータの性能・機能を遥かに凌駕する端末が小学生の手のひらに乗っています。高度化、多様化、複合化、システム化、ネットワーク化、ボーダレス化、グローバル化…変化はさらに新たな変化とニーズを生み出し続けます。
事務機や生命保険の営業をはじめ、あらゆる仕事が自己の単体の商品・サービスの優位性を説く仕事ではなくなりました。ハード・ソフトを組み合わせた総合的な提案力が無ければ、他社との差別化は不可能ですし、顧客側もより高度な”ワンストップ・ソリューション”を求めます。時には同業・異業種企業との連携すらも必要となります。まさしく組織としての総合力が問われているのです。
一方で、組織で働く社員たちも変化し続けています。価値観・ライフスタイルの多様化、女性の社会進出、非正規社員の増加、高齢化など、ひと昔前の「全社一丸となって」の掛け声やイベント・褒賞で”盛り上げる”組織運営を脱した、より高度な組織マネジメントが求められています。成果を上げるためには、個人の知識・スキルアップが最重要であることは勿論ですが、各人の意欲・スキルを最大限に発揮させる”仕組み”の最小単位として、チームワークが重要性を増しています。
組織構造に即した二種類のチームワーク
チームワークには2つのタイプが存在します。
ひとつは「多機能分担型」。上記の事務機をはじめ、建設、広告、金融などに多い”カタカナの肩書”等を持つメンバーを各チームに配した組織です。システムエンジニア、インテリアコーディネーター、グラフィック・デザイナーなど、各自が自己の明確な専門領域を持つスペシャリストたちである場合は、比較的容易に有機的で良好なチームワークが生まれます。お互いに相手を必要とし、認めあっているからです。しかも活動を通じて、互いの異なる視点や知見が相互に新たな知識・スキルとしての幅を広げ、個人も大きく成長させることが出来る理想的な”学習組織”となる可能性があります。
もう一つは「単機能並列型」。営業分野では自動車、生保、不動産、人材派遣などや事務・スタッフ組織にも意外に多い形態です。全員が同じような仕事に従事し、ときにはスーパーマン的”一匹狼”が誕生したりするのもこの型の組織です。即戦力重視の中途採用の拡大、徒弟制度的な年功序列人事の崩壊、実力・成果主義の導入と”個人主義”の拡大を促すような人事制度が近年主流となってきたことも事態をさらに複雑化させたのかも知れません。チームワークの醸成が比較的に難しい組織のタイプです。ひと昔前のような組織運営が通用しないことは先に述べた通りです。ある意味ではこのタイプにこそ、高度な組織マネジメントが求められており、大きな変化や成果を生み出す可能性を秘めているとも言えます。
そもそも上述のように社会や顧客のニーズ自体が変化しているのですから、仕事のやり方や組織構造自体が変化していないことの方が不自然です。経営者や管理職はいちど原点に立ち返って、自己組織の存在理由や目的を問い直すことから始めることが、大仰なようで実は結果的には近道であり、直接的な改善効果だけでなく、複合的・相乗的に多くの成果が得られるはずです。
チームワークに必要なポイント
良好な”チームワーク”に必要なポイント、つまり「マネジメントの基本」は以下の5つといわれています。
- 明確な目標
- 役割分担
- 自立性・自発性
- 情報共有
- 実行力
特に重要なのは「1.明確な目標」がメンバーにとって納得性や魅力のある「共有できるもの」であるか否かにあります。売り上げ倍増やノルマ必達などの経営者の願望や経営指標をそのまま掲げても、メンバーの共感は得られません。
そこが経営者・管理職・リーダーの腕の見せ所です。メンバー個々の声に耳を傾け、彼らにとって魅力のある“結果”や“目指す姿”の実現を目標として、結果としての数値目標達成を図る。そのためのチームの運営方法をリーダーとメンバーが共に考え、意見を出し合い、作り上げるプロセスこそが強力なチームワークを生み出します。これは小規模なチーム運営から企業組織、国家運営に至るまでの共通原則です。政府が「GDP600兆円の達成」よりも、「一億総活躍社会の実現」を前面に出すのもまさにこれです。
「2.役割分担」以降のそれぞれポイントは、1で設定した目標の共有によって、自然と細部まで設計・構築されていきます。マーケティング戦略・組織構成・必要スキルなどの“7S”要素も逐次改善・変革されるはずです。それらの総体が「企業の共有価値」や「企業文化」となって、企業としての競争優位を創出します。
「ブランディング」だの「CSV経営」だのと世の経営書は新奇な表現を送り出し続けますが、基本は小さなチームの優れたチームワーク作りと同一のものです。是非じっくりと取り組んで、その成長のプロセスを楽しんでください。
この記事の監修者
株式会社社員教育研究所 編集部
1967年に設立した老舗の社員研修会社。自社で研修施設も保有し、新入社員から経営者まで50年以上教育を行ってきた実績がある。30万以上の修了生を輩出している管理者養成基礎コースは2021年3月に1000期を迎え、今もなお愛され続けている。この他にも様々なお客様からのご要望にお応えできるよう、オンライン研修やカスタマイズ研修、英会話、子供の教育など様々な形で研修を展開している。