組織マネジメントの核心

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2016年2月17日(水)

組織マネジメントの核心

組織マネジメントとは企業経営である

企業経営・マネジメントとは、「ある目的の推進・達成にむけて、人・物・金・情報などの経営資源(リソース)を適切に配分・組織化し、有効に機能させることで高い成果をあげさせること」です。つまり、組織マネジメントとは「企業経営そのもの」であるとも言えます。

組織をマネジメントするということは、単に「チームやグループを円滑に運営するための人間関係作り・調整」といった視点から脱して、もっと広い視野で捉え直すことが出発点になるのではないでしょうか。

組織を機能させるための7S理論とは

1962年アルフレッド・チャンドラーは、『戦略と組織』という著書の中で「組織は戦略に従う」という有名な言葉を残しています。組織と戦略の基本的な関係性を示す原点とも云うべきものですが、近年それを単なるハードとしての「組織図」というだけではなく、さらに有効に機能させるための諸要素を加えて提唱されたのが、以下7項目を指す『7S理論』です。

  1. STRUCTURE (組織構造・事業部制などのマネジメント体制や上司部下の関係など)
  2. SYSTEMS (情報システム、管理システム、業績評価システム、給与制度など)
  3. STRATEGY (戦略や経営課題など)
  4. SKILL (販売力・技術力などの組織に備わっている技術や社員が持つ特定の能力、競争優位源泉とも云うべきもの)
  5. STAFF (個々の人材・スタッフ、採用方針、人材育成など)
  6. STYLE (経営スタイル、組織文化など)
  7. SHARED VALUES (会社のよりどころとなる経営理念や価値観)

アメリカの超優良企業数十社を詳細に分析し、「価値観の共有」という新たな成功の鍵を提示し、その後の「CI (Corporate Identity)ブーム」の火付け役となったベストセラー『エクセレント・カンパニー』(1982)の中で紹介されたものです。現在では、企業組織を分析・診断する際の基本的なフレームワークとして広く受け入れられています。

オリジナルの著書では、彼らの主唱する「SHARED VALUES (共通の価値観)」を中心として六角形に配された各要素が相互に直線で結ばれ、「密接に関係・影響しあう」ことを示しています。言い換えれば、共通の価値観によって各要素・機能が決定されると同時に、逆に各要素・機能の連関から、共通の価値観や企業文化・社風が生み出されるということです。

日本の受験勉強の影響からかも知れませんが、ビジネスを学ぶに際しても、4C、5Pとかファイブ・フォース、SWATなどという略語を見ると、つい「何と言う言葉の略語か知りたい(=試験に出る)」という強迫観念にも似た発想で覚えがちなのですが、この「7S」についても同じような傾向があります。

しかし、7つの頭文字の意味を知ること以上に、「それらが密接に影響し合う」ことを肝に銘じることの方がはるかに重要なのです。不遜な言い方かも知れませんが、マッキンゼーのスタッフがその主張を簡潔化するために、「S」の頭文字の単語を配したに過ぎません。もっと多岐にわたる要素を含めて考えることも可能です。

7Sを上手に機能させる組織マネジメントのポイント

「7S」を有効に機能させる『組織マネジメントのポイント』は、STRATEGIC(戦略的に)、SIMPLY(単純に)、SYNTHESIZE(総合化し)、SYNCHRONIZE(同期させ)、SYNERG Y(相乗効果を生ませる)、SOPHISTICATED(洗練された)、SENSIBILITY(感性) というように7つの単語で表現することができます。さらに一言で表すならば、「COORDINATION」とというワードが適切なのではないでしょうか。

いかに高額な投資をしてERPやSFAのシステムを導入しようと、一流の講師を招いて研修を実施しようと、思うほどの成果につながらないのは、ひとえにこのコーディネイトのアンバランスに起因するケースが殆どです。「ソリューション営業への転換」を謳い、システム投資や教育投資を如何に充実させようとも、マネージャーのKPIと称する管理項目が相変わらず「訪問件数」「見積もり提出件数」で、業績評価項目も「売り上げ金額」一辺倒であれば、改善どころかモラールの低下や組織への不信感といった弊害を生むことすらあります。

特に高額なものを身につけずとも、色やデザイン、組み合わせで、如何にお洒落な雰囲気を演出できるかが、優れたファッション・センスです。逆に「一点豪華主義」で、見事に悪趣味をアピールしている人との差は何でしょうか?それは、予め全体像(コンセプト、イメージ…「戦略」)を明確にして、必要なパーツをコーディネイトしているか否かの差です。個々のパーツに固執しすぎると残念な結果になることが多いのは、ビジネスもファッションも同じです。

「組織」の定義を「7S」の集合体と置き換えれば、50年以上も前に明言された「組織は戦略に従う」は今なお普遍の真理と云えます。『広く全体を見渡せる能力・センス』をぜひ若い時から磨いていただきたいものです。

熊本県のヒットキャラクター「くまモン」の生みの親である水野学さんが面白いタイトルの本を2014年に出版されました。『センスは知識からはじまる』(朝日新聞出版)。「『センス』とは、特別な人に備わった才能ではない。それはさまざまな知識を蓄積することにより、『物事を最適化する能力』であり、誰もが等しく持っている」と。「ビジネスセンスを磨く」などと云うと抽象的ですが、答えは単純明快なのです。


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