部下のストレスマネジメントと対処法
2016年10月21日(金)
上司と部下の信頼関係がきっちりと醸成されていないと、業績が悪化してしまうことにもつながり、何よりも働き辛い職場の雰囲気が出来上がってしまい、日増しにストレスが生産される現場になってしまいます。仕事がし辛い職場で働けば部下のモチベーションが下がることにもつながり、再び業績が悪化するといった具合に負の連鎖が誕生してしまうため、業績向上を望むのであればどこかでこの鎖を断ち切る必要があります。
パワハラと部下の委縮
何かと「ハラスメント」を持ち出す世の中になりました。上司と部下の間にもパワーハラスメントが叫ばれることがあり、このせいで上司は部下に対して強く物を言えなくなってしまったどころか、怖々、弱々と言わなければならないようになってしまいました。これは上司の叱り方の問題でもありますが、あまりにきつく言ってしまうと部下は委縮してしまいかねないため、守って欲しいルールや指示をいかに的確に話せるかが重要となってきます。
一度喝を入れ、恐怖によって部下を支配してしまうことの問題点は、委縮するために伸び伸びと仕事ができなくなり、最終的には「またミスをしたらどうしよう」という心理状態に陥ってしまう点にあり、また上司自身もミスをすることができなくなってしまうため、相互の信頼関係を醸成するには至りません。君主一人に対して部下が付き従う、専制政治や恐怖政治を考えてみると分かりやすいでしょう。
君主は正しい行いと正しい路線を行くことによって部下に態度を示し、そして活躍できていない部下や自身に反旗を翻す部下を弾圧することで自らの正しさを主張します。これによって委縮してしまった部下達は確かに命令通り動くことになりますが、予想以上の成果をあげることは無く、また君主の素行がひとつでも間違ったものならば、これを反抗の種にすることになります。専制政治がなかなか上手くいかないことは歴史が証明していると言っても過言ではないのです。
適当過ぎる対応も信頼を失う
それでは専制君主型の管理体制の他にはどのような方法が考えられるのでしょうか。ありがちなのが「消極」「放任」という手法になります。これは良く言えば部下のやりたいようにやらせる方法ではありますが、悪く言うと無責任とも言え、更に上司が責任を負おうとしなければ部下のモチベーションを下げることにもつながります。
放任型の管理をしていると、部下は活動に自由度が増す代わりに「正しく評価されていない」という不満や「気にされていない無意味な存在」という不安を抱えることになりストレスを感じてしまいますので、この管理体制は理想的と言い切ることはできません。ただし部下に有能な人材が集まっていれば、放任型は自ら率先して意欲的に仕事へと取り組むことになりますので、業績の方も伸びていくことになるでしょう。
しかし、上司側としても放任型は決して最上の方法とは言えません。上司には上司の誇りがあり、部下があまりに有能な人材が揃っていると上司の自尊心が傷つくことにもつながり、自身の存在意義が見出せず、こちらもストレスを抱えてしまう可能性を孕んでいるのです。
配慮尊重型の上司と部下のストレス的な負担
専制型の管理と放任型の管理は一長一短で、それぞれ制度を的確に使いこなすことができれば部下のストレス的な負担を軽減させることも可能で、また業績の方も良い成果をあげられるようになりますが、これらの方法で完璧に管理しきるのは至難の業なので、部下のストレスという問題が大々的に取り沙汰されてしまうわけです。部下のストレスも考慮したいわゆる「良い上司」の在り方とは、つまり配慮尊重型の管理体制であり、専制型と放任型の良い部分のみを取り入れた、それぞれの悪い部分を排除した管理制度となります。
配慮尊重型とは部下が何か問題を抱えていた時には専制型のように強く叱りつけるのではなく、かといって放任型のように放置しておくわけでもない、優しくコミュニケーションを取りながら、中長期的に見て問題を改善していくという手法です。力加減が非常に難しく、人によっては精神が弱く傷つきやすい人もいることから、どの程度までなら言っても心が折れないのかを上手に推し量っていく必要があります。
配慮尊重以外にも、場合によっては良いタイプの上司はいる
この他にも厳格型や情熱型といったタイプの上司がおり、いずれも良い上司になり得る可能性がありますが、しかしながらこれらが最良の方法であるとは言い切れません。厳格型は仕事の全てをきっちりと規則を設けることによって可能な限り公平に回していくというタイプになりますが、こちらは柔軟な対応を迫られた際に対応しきれない可能性があるという点や、上司自身が自分の作った規則によって首を絞めてしまう可能性もあります。
情熱型については精神的にタフな部下にとっては良い上司になり得ますが、万人受けするわけではありませんので、こちらも必ずしも良いとは限らないと言えるでしょう。あらゆるケースを考慮するとなると、やはり部下への配慮や部下の意見を尊重できるような上司が「良い上司」に最も近い存在と言えます。