アサーティブコミュニケーションとは?定義や種類、必要性を解説
2022年5月30日(月)
テレワークの浸透や企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)促進により、一部の企業では、自宅から社内システムにアクセスしたり、オンライン会議なども容易に行えたりする仕組みが導入されています。ワークライフバランスを重視する人も増え、政府主導の「働き方改革」は着実に浸透しているといえます。私たちの働き方が変化した一方、多くの企業で、従業員同士のコミュニケーション不足が指摘されています。そこで注目されているのが、「尊重」を重視したコミュニケーション方法の一種、「アサーティブコミュニケーション」です。
今回は、アサーティブコミュニケーションの定義や特徴、具体例とともに、効果的に習得する方法などをご紹介します。
アサーティブコミュニケーションとは
お互いに尊重しながら行う自己主張の手法のこと
アサーティブコミュニケーションとは、互いの意見や立場を尊重し、自身の意見をハッキリと伝えるコミュニケーション方法です。アサーティブコミュニケーションの具体例を見ていきましょう。
- 相手の立場や尊重した上で、客観的な視点も含めて意見交換を行う
- 相手との関係性に合った適切な表現を選ぶ
- 場の状況や流れを意識して会話を運ぶ
- 相手の気持ちに配慮する
※我慢せず、自分自身の意見をハッキリと伝える - 相手の意見を真摯に受け止め、感情的にならない
- 意見が対立した場合、お互いが納得する結論を模索する
アサーティブコミュニケーションはあくまでも、双方の尊重の上に成り立つ自己主張の手法です。直訳で「強い自己主張」や「言い張る」、「積極的」を意味するアサーティブ(Assertiveness)ですが、この場合は違います。上記で挙げた具体例のように、一方的な自己主張・自己表現にはならず、万が一意見が食い違った際も、対立したままでは終わりません。意見交換を重ね、双方が納得できる落とし所を探ります。
ビジネスシーンにおけるアサーティブコミュニケーションは、社内コミュニケーションの活性化や、健全な意見交換の実現に欠かせません。とりわけ近年は、新人社員研修などの人材育成、管理職向けのマネジメント研修、ビジネスマナー研修においても、アサーティブコミュニケーションを取り上げる機会が増えています。
アサーティブコミュニケーションの起源
アサーティブコミュニケーションは、1949年にアメリカの心理学者「アンドリュー・ソルター」氏が実践した認知行動療法がルーツとされます。当時のアメリカ国内では、ジェンダーや人種差別に関するトラブルが社会問題となっていました。その是正のため、人種・性別を超えた自己主張の在り方を模索した結果、アサーティブコミュニケーションが生み出されました。
アサーティブコミュニケーションが日本に広まったのは、2000年代以降のことです。当初はビジネス活用ではなく、認知行動療法におけるトレーニング方法の一種として広まりました。
アサーティブコミュニケーションが注目される理由
アサーティブコミュニケーションが注目される理由は、大きくわけて2つあります。1つは、国内企業を取り巻くビジネス環境の変化です。
現状、さまざまな業種において、ビジネスのグローバル化が加速しています。市場開拓や人材雇用において、国籍や民族、文化が異なる人々とのコミュニケーションが欠かせなくなりました。そのためには、尊重と自己主張を重視するアサーティブコミュニケーションが重宝します。
もう1つ、企業における「ダイバーシティ経営」の推進が挙げられます。ビジネス環境が急速に変化する今、世界基準の企業競争力を持つには、多様な人材の確保が欠かせません。アサーティブコミュニケーションとダイバーシティ経営は親和性が高く、円滑な社内コミュニケーションの実現、ひいては企業成長を後押しする重要なファクターです。
コミュニケーションスタイルの主な種類と特徴
アサーティブコミュニケーション促進の施策を展開する前に、「ノンアサーティブ(非主張的)」なコミュニケーションスタイルについて知っておきましょう。
特に「攻撃的なノンアサーティブコミュニケーション」「受け身的なノンアサーティブコミュニケーション」「作為的なノンアサーティブコミュニケーション」の3種類は覚えておきたいところです。ここでは、各スタイルの特徴や傾向に加え、アサーティブコミュニケーションとの違いを徹底解説します。
攻撃的なノンアサーティブコミュニケーションの特徴
相手の意見を尊重せず、自身の主張を通そうとするタイプです。別名「アグレッシブタイプ」ともいいます。自己中心的なコミュニケーション手法であり、多くの人に避けられたり、プレゼンなどにおいても、自分の意見を受け入れてもらえなかったりします。
攻撃的なノンアサーティブコミュニケーションの原因は、自己否定の感情にあるといわれます。彼らは自身の弱みや苦手領域、不得意な能力などに触れられないよう、攻撃的な姿勢で自分自身を守るのです。そのため、常に不機嫌な態度を取ったり、意見が通らないと暴言を吐いたりすることが少なくありません。
組織マネジメントの観点では、扱いが難しい人材といえるでしょう。いかに「いなして」対応できるかが、経営者やリーダーに求められるスキルです。
受身的なノンアサーティブコミュニケーションの特徴
人事評価や反応を気にしすぎて、物事をハッキリと決められないタイプです。発言しやすい機会が用意されない限り、自分の意見をほぼ主張しません。「気遣いを前提としたコミュニケーション手法」であるため、相手が期待通りの反応を示さない場合、不満に感じるケースが少なくありません。また、「申し訳ございません」「すみません」が口癖の人が多くみられます。
主体性の低さから、明確に「NO」を提示できないのも特徴です。たとえば、無理なスケジュールで仕事を請け負ってしまったり、「NOといわなくても伝わっている」と思い込んでいたりします。マネジメントの観点では管理しやすく思えますが、互いの思考を読めないのが難点です。
作為的なノンアサーティブコミュニケーションの特徴
攻撃的と受身的、双方の特徴を持つ厄介なタイプです。表面上は受身的で、言葉を使って発信できない場合は態度・行動などで示すことが多くみられます。ただし、裏ではハラスメント行為をしたり、人間関係をかき回したりして、自分の都合の良いように、物事を進めるのが上手です。コミュニケーション能力は決して低くありません。
作為的なノンアサーティブコミュニケーションを取るメンバーが組織にいると、内側から崩壊する可能性があります。マネジメント層としては発見次第、早急に対処・対策すべき人材です。自身の行動・言動が組織にどのような影響を与えるのか、コミュニケーション研修などを受けさせて「気づき」を与えるのがおすすめです。
アサーティブコミュニケーションの実践で実現できること
社内コミュニケーションの活発化
アサーティブコミュニケーションで社内コミュニケーションが活発になり、風通しの良い職場環境を実現します。とりわけ近年はテレワークが普及し、社内コミュニケーションに関する課題を抱える企業が少なくありません。アサーティブコミュニケーションの浸透により、従業員同士が本音で意見交換できる企業風土に変革されます。上司や部下、別部署のスタッフなど、立場の異なる社員同士が良好な関係性を構築できるのがポイントです。
社員のストレス軽減
アサーティブコミュニケーションは従業員のメンタルヘルス対策にも有効です。第一に、一人ひとりの自己主張を促すことで、不満・疑問を溜め込む社員の減少が期待できます。ストレスフリーな勤務環境により、モチベーションや業務効率が改善されるでしょう。個々の生産性が向上し、企業競争力の底上げに繋がると考えられています。
アサーティブコミュニケーションスキルを高める方法
アサーショントレーニングを取り入れる
アセーショントレーニングとは、誠実・対等・率直・自己責任といったアセーションに関わるスキルを鍛える訓練法です。企業のOJT研修で使われる「DESC法」や「Iメッセージ」なども、アセーショントレーニングに含まれます。
DESC法とは、「Describe(描写する)」「Express(説明する)」「Suggest(提案する)」「Choose(選択する)」の頭文字を取った会話技法のこと。4つのプロセスにわけて主張することで、相手を不快にさせず、自分の意見を伝えて納得感を持たせられるのがメリットです。特段デメリットもないので、意識的に取り組みたいアセーショントレーニングの1つといえます。
また、Iメッセージとは「私」を主語にした自己表現のことです。相手の行動に対し、「私」がどう感じるかを明確に表現します。Iメッセージもまた、アサーティブコミュニケーションに類似する部分が多く見られます。
専門性の高いビジネス研修に参加する
専門性の高い管理職研修などに参加し、アサーティブコミュニケーションを磨くのも有効です。講師の指導のもと、アサーティブコミュニケーションの基礎に触れられるのが魅力。社内研修にノンアサーティブトレーニングを取り入れるコツや進め方、フレームワークの作り方はもちろん、他社での成功・活用事例なども学習できます。プログラムによっては、ノンアサーティブな従業員への対処法や改善策をロールプレイング形式で学ぶこともできます。
「社員教育研究所」の場合、アサーティブコミュニケーションを高めるには「ミドルマネジメントセミナー ヒューマンスキルコース」を受けるのがおすすめです。本プログラムは管理者を対象に、アサーティブな考え方を含めた、高度なコミュニケーションスキルの向上・習得を目指します。
なお、社員教育研究所では、アンガーマネジメント・チームビルディング・コーチング・ファシリテーションスキル・リーダーシップ論を学べるプログラムも用意しています。自身のマネジメント力を強化したい方は、公式サイトで研修内容などをご覧ください。
「ミドルマネジメントセミナー ヒューマンスキルコース」について詳しく知る「アサーティブコミュニケーションは研修で学ぶのがおすすめ」
アサーティブコミュニケーションは、一朝一夕で身につくスキルではありません。とはいえ、多忙なマネジメント層にとっては、短時間で効率的に学習できるのが理想的でしょう。もしもアサーティブコミュニケーションの基礎を学びたいなら、社員教育研究所の「ミドルマネジメントセミナー ヒューマンスキルコース」をはじめとするビジネス研修を受けてみてください。
この記事の監修者
株式会社社員教育研究所 編集部
1967年に設立した老舗の社員研修会社。自社で研修施設も保有し、新入社員から経営者まで50年以上教育を行ってきた実績がある。30万以上の修了生を輩出している管理者養成基礎コースは2021年3月に1000期を迎え、今もなお愛され続けている。この他にも様々なお客様からのご要望にお応えできるよう、オンライン研修やカスタマイズ研修、英会話、子供の教育など様々な形で研修を展開している。