報連相研修で社内の風通しアップ!報連相と研修の概略総まとめ
2022年11月29日(火)
2023年8月5日(土)
従業員間の情報共有をスムーズに行うために、社会人として大事な取り組みが「報連相(ほうれんそう)」です。新入社員は業務に役立つビジネススキルを身につけること以上に、報連相をビジネスマナーとして習慣化することが求められます。そのためには、新入社員を教育する側が報連相について正しく理解しておかなければなりません。
この記事では報連相の定義や重要性、軽視されることによる発生するリスクについて解説します。部下に報連相を根付かせる方法についても解説しますので、新入社員の教育や研修を担当されている方はぜひ参考にしてださい。
重要性が軽視されがちな報連相とは
「報連相」は仕事上の情報共有や意思疎通に重要な「報告」「連絡」「相談」をまとめたビジネス用語です。スキルなどという以前の、ごくごく基本的な姿勢としてビジネスパーソンが身に付けておくべき習慣です。
報告・連絡・相談いずれも情報共有の方法ですが、それぞれ相手や内容が異なります。以下に、1つずつ解説していきます。
報連相の「報告」
報連相の「報」は「報告」を意味します。ビジネスにおける「報告」とは、業務の進捗や途中経過、結果を上司などに知らせることです。
ビジネスにおける状況は流動的に変化します。常に状況に合わせた迅速で適切な対応を心がけなければなりません。責任逃れや見てみぬふりをしたい心理から報告を怠ることがありますが、後の会社に与える悪影響を考えると悪い状況こそ早いタイミングで報告する必要があります。
報告の遅れはさまざまなリスクを引き起こします。そのため、「報告」「連絡」「相談」の3つのなかでは報告が最も重要といえるでしょう。
報連相の「連絡」
報連相の「連」は「連絡」を示します。報告と混同されがちですが、こちらは業務に関する情報を上司や同僚に知らせることです。事後対応の報告ではない、定期的な連絡も含まれます。
業務においては、正確性を欠いた情報はノイズとなります。そのため、事実を脚色なく伝える必要があります。連絡する際は、私見を交えず事実だけを伝えることが重要です。業務効率を良くするためには、従業員同士がお互いのスケジュールや進捗などを共有しておく必要があります。
報連相の「相談」
報連相の「相」は「相談」、つまり問題が発生したときに、先輩社員や上司などに意見を求めることです。何か問題が発生したときに初めて実施されます。
ビジネスにおける問題は発生してから長い時間が経過するほど対処が難しくなっていきます。そのため、早期に相談することで問題が深刻化することを防ぐ必要があります。
報連相の目的
報連相の主たる目的は、組織のなかで情報を共有して連携を図ることです。例として、報告が適切に行われ担当者が業務の進捗状況を把握できていれば、何をすべきか迅速に考えることができます。連絡が滞りなく行われていれば業務に取り掛かる時点で必要な情報が出揃っているため、仕事の生産性を向上させることが可能です。相談をしあえる体制が整っていれば、緊急事態への対処を早められ、問題を適切に解決できます。
従業員が情報を独占し、個別に仕事をしている状況では、円滑な連携は期待できません。こうした状況は生産性の低下を招くだけではなく、予期せず発生した問題を大きくしてしまうことにもつながります。生産性向上、リスク回避のためには職場内の報連相を徹底することが大切です。
報連相の効果
報連相を徹底することで、上司と部下の間で良好な人間関係が築きやすくなります。これは、報連相を通して自然とコミュニケーションが図れるようになるためです。職場内の風通しの良いコミュニケーションを促進することは、従業員の働きやすさや信頼関係の構築につながります。
報告や連絡の内容から部下の状況を把握することも可能です。報告や連絡の内容は、部下をフォローすべきかどうかの判断材料にもなります。トラブルを未然に防ぐためにも、報連相を徹底することは大切です。
また、報連相を通して、部下の適正や得意不得意がわかる点もメリットのひとつ。報連相が適切にできる部下には安心して仕事を任せやすくなるでしょう。報連相の徹底度合いを評価の基準にすることもできます。
報連相研修とは
「報連相研修」とは、このように日々の業務を行っていくうえで重要となる報連相について体系的に学ぶ研修です。ビジネスの基本となるため、新人や若手向けの研修の中で報連相を学ぶことも多くあります。しかし報連相だけに特化して、より具体的に報連相について学ぶのが報連相研修です。
社会人経験がない完全な新人向けに基礎を習得させたり、多少経験を積んだ若手向けにより適切な報連相を行う方法を学ばせたりする内容が一般的です。
報連相研修の内容例
報連相研修の具体的な内容の例としては、次の事項が挙げられます。
- 報連相の目的・意義の理解
- わかりやすい報告・連絡の方法
- 報連相のタイミング
もちろん提供される研修によって内容は異なるので、上記のほかの内容の場合もあり得ます。では、上記の例について1つずつ見ていきましょう。
内容例|報連相の目的・意義の理解
まずそもそも何のために報連相が行われるのか、報連相がどのような意義を持っているのかについて確認します。具体的には、報連相を行わないとどのようなことが起こるのか、逆に行うことによってどのようなメリットがあるのかなどについてです。講義形式だけではなく、ディスカッションなどを通して理解を深める方法でも行われます。
もちろん報告・連絡・相談とはそれぞれどのようなことなのか、それぞれの違いについても確認します。
内容例|わかりやすい報告・連絡の方法
また報連相研修では、わかりやすい報告や連絡の方法についても学びます。報連相の中でも、報告と連絡は日常的に行わなくてはならないからです。報連相に苦手意識がある理由の1つがうまく説明できないことです。またわかりにくい説明だと怒られるのではないかと尻込みしてしまうケースもあります。
しかし報連相はある程度型があり、それに当てはめて説明すれば格段にわかりやすい説明ができます。わかりやすい方法を学ぶことで、より活発に報連相が行われるようになります。ロールプレイングなど実践的な形式で行われることが多いでしょう。
内容例|報連相のタイミング
さらに報連相を行うタイミングについても学習します。場合によっては、報連相が遅れたせいでミスの対処が手遅れになることもあります。また途中経過の報告をしなかったせいで上司も対処できず、業務の締め切りに間に合わなくなることもあるでしょう。トラブルを避けたり上司が安心して仕事を任せたりするためには、適切なタイミングで報連相を行わなくてはなりません。そのタイミングを学びます。
また報連相を避けがちになる理由として、上司の業務を中断させるのに抵抗があることが挙げられます。これもある意味では、適切なタイミングを計れていないことが大きな原因です。その対策として、相手の状況を判断する基準について解説することもあります。
報連相の基本
報連相の基本についてまとめます。以下の点が挙げられます。
- 結論から述べる
- 事実と意見を区別する
- 悪い情報ほど早く伝える
これらの点はごく基本的なことですが、これら上記の点を意識するだけでもわかりやすく適切な報連相ができるようになるでしょう。もちろん報告・連絡・相談で多少異なるところもありますが、上記はその3つに共通して役立ちます。以下、それぞれについて見ていきましょう。
基本|結論から述べる
とくに報告と連絡について、結論を先に述べて理由や経緯を後に説明すると聞く側は理解しやすくなります。「結局何が言いたいのか」がわかった状態で詳しい解説を聞いた方が、スムーズに理解できるからです。
そのためには、話す前にある程度内容を整理しておく必要があります。漏れなくていねいに説明するためにはあらゆる点に触れなくてはなりませんが、まとまりがなくなる可能性もあります。不要な内容はカットするなど、内容を整理してから話すことが大切です。もちろん仮に言いにくいことでも、必要であれば触れなくてはいけません。
基本|事実と意見を区別する
わかりやすさと誤解防止のためには、報告・連絡・相談いずれも事実と意見を区別して説明することが大切です。両者を混在させないように、初めにまとめて事実を述べてから意見や推測・解釈をそのあとに話します。事実は5W1Hを意識して伝えると内容が明確になります。
また自分の想像や解釈は、事実かのようにあいまいに話してはいけません。たとえば商談で相手が話した言葉ではないことを「先方は〇〇と思ったようなのですが」と表現すると、事実なのか憶測なのか聞き手は区別がつきません。意見や推測は話す前に「ここからは私の意見ですが」など断りを入れるよう教えましょう。
基本|悪い情報ほど早く伝える
トラブルやミスなど、悪い情報・話しにくい情報ほど早く伝える必要があります。対処が早ければ早いほど、問題の拡大を防ぐことができるからです。ミスやトラブルは、時間が経つほど状況が悪化するのがふつうです。仮に独断で「このぐらいなら大丈夫だろう」と黙っていると、取り返しがつかないことになりかねません。
そのため、対処するかどうかは自分で判断せず、まずは正直に上司に報告させるようにしましょう。そのうえで情報の共有が必要かの指示を仰ぎ、必要に応じて同僚などに連絡を行わせることを習慣化させます。
研修で習得できる報連相に役立つスキル
報連相に役立つスキルのうち、研修で習得できるものを解説します。ここでは次の3つのスキルについてまとめます。
- コミュニケーションスキル
- ロジカルシンキング
- プレゼンテーション能力
順に見ていきましょう。
役立つスキル|コミュニケーションスキル
まず1つ目として、人に情報を伝えて共有するためのコミュニケーションスキルが挙げられます。コミュニケーションスキルはいくつかに細分化できますが、そのうちとくに相手に伝わるようにアウトプットする能力があると、報告や連絡を行う際に誤解なく相手に理解してもらうことができます。
コミュニケーションスキルは業務遂行のうえでも非常に重要なので、特化した内容の研修も多く存在しています。そういった研修で学んだ内容も、報連相に役立てることができます。
役立つスキル|ロジカルシンキング
次にロジカルシンキングも報連相に役立つスキルとして挙げられます。ロジカルシンキングとは、込み入った内容を分解して整理し、論理的に結論を導き出す思考方法です。論理的に考えられるようになると、理解しやすい体系的な形で報連相の内容を伝えられるようになります。
ロジカルシンキングも、プロジェクトの進行や営業などの場面で役立つスキルです。そのため、特化した内容の研修がさまざまな研修会社によって提供されています。
役立つスキル|プレゼンテーション能力
プレゼンテーション能力も報連相に役立ちます。プレゼンテーション能力とは、説得力のある発表を行うスキルです。文字通り、営業や会議などでプレゼンテーションや発表を行うときに必要となる技術ですが、伝わりやすい説明スキルが報連相にも有益となります。
プレゼンテーション能力を磨く研修も数多く提供されています。説明の場での立ち振る舞いなどに加えて事前の準備についても学ぶため、報連相の前に伝えるべきことを整理するときの姿勢も身に付けることができます。
報連相をしないと起こること
報連相が適切に行われていない場合、上司などが部下たちの仕事の状況を正確に把握できません。結果として、業務の進捗状況がわかりづらくなってしまいます。仮に問題が発生したとすると、原因の究明に時間がかかってしまうでしょう。情報の共有遅れによって対応が後手に回ると、問題が深刻化するおそれがあります。
例として、顧客への納品が遅れればクレームに発展してしまうこともあるでしょう。報連相の不備によって起きた問題であれば完全に自社の責任のため、信頼を落とすことは免れません。実際に、社内の報連相が機能していなかったことによって問題が起きた事例は少なくありません。
また、報連相の不足によってコミュニケーションの機会が少なくなるため、組織内の意思疎通が図れません。このことにより、組織内の連携がとれなくなるケースが考えられます。業務の効率が低下する、情報の行き違いにより不備が生じる、といった事態が頻発してしまうでしょう。
報連相ができない原因
報連相ができない場合、原因としては以下のような点が考えられます。
- 必要性を理解できていない
- 上司の雰囲気が話しかけづらい
- 失敗を責められると思っている
社員だけの問題と思われがちですが、報連相を受ける側に問題があるケースもあります。それぞれについて確認していきましょう。
原因|必要性を理解できていない
報連相ができない原因として考えられる主な理由が、社員が報連相の必要性を的確に理解できていないことです。日常的な業務が忙しくなると、こうした社員が報連相を後回しにするケースが散見されます。報連相の時間がもったいない、通常業務と比較して優先度が低い、時間の無駄、と考えている社員も少なくありません。
また、報連相を受ける側に問題があるケースもあります。報告をしたのに対処されていない、連絡をしたのに覚えていない、相談したのに自分で考えろと言われたといったことが繰り返されると、報連相をしても意味がない、行う必要がないと考えるようになってしまうからです。
原因|上司の雰囲気が話しかけづらい
報連相を受ける側が話しかけづらい雰囲気を出している可能性もあります。マネージャーなど、報連相を受ける側が忙しそうにしていると、部下は話しかけるタイミングが見つからないと感じるでしょう。「些細なことで時間をとらせては申し訳ない」と報連相をためらうようになっていきます。
また過去に報連相を行ったときに、嫌な顔をされたり後回しにされたりしたといった経験があると、ますます話しかけづらいと感じるようになってしまいます。必要性に疑問を感じていたりするとその傾向は強化されるでしょう。
原因|失敗を責められると思っている
またミスやトラブルがあった場合など、報告や連絡をすると責められると考えて伝えずにおく場合もあります。これも必要性を理解できていなかったり上司が話しかけづらかったりとほかの要因と組み合わさると、報告しようという意欲は下がってしまいます。
あるいはミスなどでなくとも、報連相がうまくできないせいで怒られると感じているケースもあります。わかるように説明しろ、何が言いたいのかわからない、などと言われるのを恐れている場合です。
報連相を徹底するには
報連相を徹底するためには、次の2点を意識的に行いましょう。
- 報連相をしやすい職場環境を整備する
- 報連相の相手とタイミングを明確にする
報連相を行う側だけの問題とせずに、環境や仕組み・ルールを整えることが大切です。それによって徐々に回数も増え、内容も的確になっていきます。それぞれについて見ていきます。
報連相をしやすい職場環境を整備する
報連相を活性化させるためには、職場内の環境づくりが大切です。具体的には、部下から上司にいつでも話しかけられるような環境を目指す必要があります。組織内の簡単なコミュニケーションの機会を増やすことで、立場を超えて話しやすい関係性が構築されるでしょう。
部下が自分から上司にコミュニケーションをとっていくのは難しいため、上司からきっかけを作っていく必要があります。日常的な業務のなかで、上司から部下へ交流していくことが大切です。懇親会や社内イベントなど直接仕事と関係ない行事で、立場を超えた関係性が構築されるケースもあります。業務化して、面談などの形でコミュニケーションを取る機会を定期的につくるのも効果的です。
トラブルを起こした状況やミスをした状況の報告で叱責しないことも注意点のひとつです。トラウマや恐怖心を部下に植え付けてしまうと、次に問題が起きた際に報告をためらってしまうかもしれません。報告の内容に関わらず適切な言葉でアドバイスを行い、相手をフォローしましょう。
報連相の相手とタイミングを明確にする
報連相の相手とタイミングを明確にしておくことも大切です。対象となる窓口とタイミングがはっきり決まっていれば、部下はルールに従う形で遠慮なく報連相ができます。上司と部下の認識を共通させるためにも、効果的な方法です。
同僚、マネージャー、直属の上司など、報告する相手を整理しておくと、効率的に情報の伝達が行われるほか、伝達ミスも防げるでしょう。重要な報告は例外なく上司が受けるようにするのが一般的です。
「こうした場合は、報告をしてください」と業務の指示を出す際に報連相をするタイミングについてもあわせて伝えておきましょう。作業が完了したタイミングやトラブルが発生したタイミングなどで報連相を行うようにルールとして決めておくと、部下が迷うことがありません。
「重要性を周知して報連相を部下に根付かせよう」
チーム内での報連相の重要性について解説しました。報連相は仕事の基本であると同時に、いかなるときも意識して続けなければならない大切な仕組みです。社会経験を積めば自然と報連相ができるようになっていきますが、新入社員の場合はまだ慣れていないことがあります。なぜ報連相が重要なのか、報連相を怠るとどういったリスクがあるのか、といった基本を積極的に周知し、取り組みを浸透させていきましょう。
この記事の監修者
株式会社社員教育研究所 編集部
1967年に設立した老舗の社員研修会社。自社で研修施設も保有し、新入社員から経営者まで50年以上教育を行ってきた実績がある。30万以上の修了生を輩出している管理者養成基礎コースは2021年3月に1000期を迎え、今もなお愛され続けている。この他にも様々なお客様からのご要望にお応えできるよう、オンライン研修やカスタマイズ研修、英会話、子供の教育など様々な形で研修を展開している。