中堅社員の役割と必要なスキルとは?企業の中核人材へ育てるポイント
2017年11月11日(土)
2023年9月30日(土)
将来企業を支える立場となる中堅社員には、管理職を目指した教育を行う必要があります。では、中堅社員とはどのような立場を指し、どういった育成を行うのが望ましいのでしょうか?中堅社員とは何か、またその育成方法について配慮したいポイントなどを解説します。
中堅社員の育成に関して理解しておくべきポイントは次の4点です。
- 中堅社員は、管理職と新人の間で管理職を補佐し新人を育成する位置にいる
- 中堅社員育成のポイントは、後輩を育成・指導するスキルの習得
- 中堅社員流出は損失が大きいため、予防として評価制度や条件・待遇の改善を検討すべき
- キャリアの展望を示して実現のチャンスを提案することで、モチベーションを高める
では上記のポイントについて、以下の記事の中で具体的・詳細に解説していきます。
中堅社員は管理職と新人の間の役割
中堅社員は、管理職と新人の間にある存在です。その位置にある社員ならではの、両者をつなぐ役割が求められます。なお企業により細かい定義が異なる場合もあります。
以下より具体的に、中堅社員はいつからいつまでか、また中堅社員が果たすべき役割は何かについて見ていきましょう。
中堅社員はいつからいつまで?
一般的に、中堅社員と呼ばれるのは入社6~10年後の社員です。場合によっては、入社後3年程度の業務経験があり、かつ役職に就く前の社員を中堅社員と呼ぶこともあります。明確な定義はないものの、基本的には組織において新人と管理職の間にあたる立ち位置を指します。企業の中核となり、将来的に大きな活躍が期待される存在といえるでしょう。
中堅社員が果たすべき役割
中堅社員は、主に管理職を補佐する役割を担います。上司と部下の間に立ち、現場で新入社員や若手を指導するポジションにあるためです。管理職を補佐するためには、企業および所属部署の目標や方針を、正しく理解している必要があります。また、自身の実力や経験を生かして創意工夫し、担当業務を完遂できる力も不可欠です。ほかにも、所属部署での専門知識や技術を十分に習得し、企業の重要な戦力として貢献が求められています。
中堅社員が身に付けるべきスキル
中堅社員が身に付けるべきスキルについてまとめます。具体的には以下のスキルが挙げられます。
- リーダーシップ
- コミュニケーション能力
- 後輩を育成・指導するスキル
- マネジメントスキル
1つずつ確認していきます。
リーダーシップ
中堅社員は、新入社員や若手を統率するリーダーシップを身に付ける必要があります。そのためには社員が主体的に行動し、自分の考えや行動を周囲へ積極的に示すことが大切です。後輩にあたる社員をはじめとして、身の回りの人間を巻き込める影響力があると良いでしょう。常に当事者意識を持ち、問題解決の陣頭指揮を執るリーダーになれると理想です。
コミュニケーション能力
ビジネスパーソンは、会社での経験年数を重ねるとより高度なスキルを求められます。コミュニケーション能力は、中堅社員の課題となる難易度の高いビジネススキルを習得するうえでも、基礎として必須のスキルです。メンバーの間に立つ中堅の立場として、相手の目線に立ったコミュニケーションが、チームビルディングの成果をあげることにつながります。
後輩を育成・指導するスキル
現場で業務経験を積んだ中堅社員は、次のステップとして後輩の育成・指導の役割が与えられます。企業の将来を担う新入社員や若手の育成は、組織の今後を左右する重要な職務です。多くの企業で導入されるOJTでは、単に現場で実務を教えるスキルに加えて、後輩を心理的にサポートするスキルを含め、広い意味での育成力や指導力が問われます。
マネジメントスキル
中堅社員は、目の前にある具体的な仕事に取り組むだけでなく、チーム全体のマネジメントを意識した働き方ができると理想です。組織の課題を見つけ出し、解決へ導くスキルが求められます。日々の業務から課題を創出するためには、常に広い視野でものごとを見る力が欠かせません。また、仕事のアサインや進捗管理など、組織を動かす経験も必要です。
現代の中堅社員とは?
現在中堅社員と呼ばれる人たちは、大学卒業後に入社した30代くらいの世代で、当時は就職氷河期と言われた頃でした。そのため絶対数は他の世代よりも少なく、しかし就職戦線を勝ち抜いた、一般的には優秀であり学習意欲も高い人たちという傾向があります。
しかし彼らは管理職候補として育成される立場にありながらそれを望まず、同時に部下を育てる意欲も少ない傾向が多くなっているのです。自分が責任をとることや世間から注目され目立つことを避け、より安定して無理なく働くことを強く願う人が多いという状況になっています。とはいっても、中堅社員は優秀でありながら少数なため、早期に育成をしなければ将来のマネジメントに影響が出てくる可能性があります。
中堅社員に関する課題
中堅社員は実務面で中心的な戦力となる社員ですが、いろいろな悩みや問題を抱えているケースも少なくありません。中には企業から見ても放置できない課題があります。具体的には次の3点が挙げられます。
- モチベーション低下
- 退職
- 伸び悩み
それぞれについて見ていきましょう。
モチベーション低下
まず中堅社員の仕事へのモチベーションが低下してしまっているケースがあります。中堅社員は自律的に仕事に取り組めるようになっている世代ですが、自由に仕事の方針を決めたりできるわけではありません。そのギャップのせいで、キャリアへの不安や漠然とした不満を感じやすくなります。
あるいは膨大な量の仕事を抱え、疲弊してしまっているケースもあります。また徐々に社内の様子が理解できるようになってきて、会社の将来性などに疑問を持つに至ることもあるでしょう。
このように、様々な理由からモチベーションが下がってしまう可能性があるのです。
退職
モチベーションが低下した状態のまま問題が解決されない場合など、退職に至るケースもあります。主な退職の理由には以下のような例があります。
- 会社の将来性に不安を感じる
- 会社の中での自分の将来性に不安を感じる
- 上下関係など、人間関係に不満を感じる
- 仕事の量や内容と評価・待遇が釣り合っていないと不満を感じる
会社に残るメリットとデメリットを比べたときに、デメリットの方が大きいと感じると退職につながります。詳しくは後ほど以下でまとめますが、中堅社員の退職はさまざまな意味で会社にとって大きな損失となってしまいます。
伸び悩み
また伸び悩みが問題となるケースもあります。理由はケースバイケースですが、例として次のような理由が挙げられます。
- 業務をこなすのに精一杯で新しいことにチャレンジできない
- 挑戦することに不安を持っている
- 会社に人材を育成する体制が存在しない
- 会社の育成方法がうまく機能していない
- 会社が求めるスキルやビジョンが明確でない
本人に原因がある場合と会社に原因がある場合とに分けられます。いずれにせよ適切な対処が必要です。
中堅社員の退職による損失
中堅社員が退職すると、さまざまな点で損失となります。具体的には次のような点が挙げられます。
- 退職の連鎖が起こる
- 残った社員の負担が増える
- ノウハウの蓄積ができなくなる
それぞれについて解説します。
退職の連鎖が起こる
まず1人の退職が連鎖して、ほかの社員の退職を引き起こすリスクがあります。家庭の事情などやむを得ない場合を除いて、基本的に退職は会社に残るとデメリットの方が大きいと判断した場合に起こります。つまり退職は会社への評価の表れだとも言えるのです。
中心的な社員や影響力のある社員が退職する場合、周りに与えるインパクトは大きくなります。中堅社員に限らず、新人の不安も増して退職につながる可能性もあります。
残った社員の負担が増える
次に、残った社員の負担が増える可能性が高まります。中堅社員は業務の中核となっていることが多いため、1人抜けると残った社員で多くの業務を分担しなければならなくなります。残った中堅社員もそもそも多くの業務を抱えているのが普通です。また新人に任せるにしても教育やフォローが必要だったりするなど、スムーズに移譲できるとは限りません。
残った社員の負担増は不満にもつながり、退職の連鎖の原因にもなりえます。
ノウハウの蓄積ができなくなる
ノウハウや技術の蓄積・継承ができなくなるリスクも高まります。中堅社員は自律的に業務に当たっていることが多いほか、上司への報告内容も経過や結果が中心でしょう。具体的なノウハウや技術・コツなどが、退職とともに途絶えてしまう可能性があります。
とくに属人化している業務の場合、業務の質が下がるどころか業務自体ができなくなってしまうケースもありえます。
人の入れ替わりが激しい会社ほど、ノウハウが蓄積されず人も育たないという悪循環に陥ってしまいます。
中堅社員が退職する原因と対策
上記のような損失を防ぐために、中堅社員が退職する原因と対策についてまとめます。以下の3つの原因と対策が挙げられます。
- 不透明な評価制度の改善
- 労働条件・待遇の見直し
- コミュニケーション不足の解消
残ることにメリットがあると実感させることが退職の予防につながります。それぞれについて見ていきましょう。
不透明な評価制度の改善
まず評価制度を点検し、不透明な部分があれば改善しましょう。頑張りや成果が評価されない制度では、どうしてもモチベーションが上がらないものです。また同じような成果を出した社員がいる場合に、人によって評価が異なると不満が高まります。
どのような成果に対してどのような評価がなされるのかを明文化してオープンにしましょう。もちろんその制度に基づいて評価を行います。上司との面談などでも、なぜそのような評価に至ったのか説明できるようにします。
公平かつ透明性の高い評価制度は、退職を防ぐだけでなく社員のモチベーションを高め業績の向上も期待できます。会社への信頼度も高まり、よいスパイラルが生まれる可能性も高まるでしょう。
労働条件・待遇の見直し
休日や拘束時間など日常的な労働条件や待遇も点検して、必要に応じて改善しましょう。効率化や生産性向上などと両輪で行う必要がありますが、労働条件が改善することで社員の負担を減らして退職予防に役立てることができます。
制度作りでおしまいにせず、その制度が守られる環境を作ることも大切です。例えば有給休暇の制度があっても、現場レベルで有休を取りにくい雰囲気があれば実質何も改善されません。すぐに環境を整備するのは難しいかもしれませんが、徐々に改善していくことが必要です。
労働条件の改善は、働きやすい環境作りでもあります。働きやすい場所で働きたい人が多いのは当然です。そのため、労働条件の改善は退職予防だけでなく新規の人材募集にもよい影響が期待できます。
コミュニケーション不足の解消
さらに中堅社員とのコミュニケーションが取れているか見直してみて、不足しているようであれば意識的にコミュニケーションを取りましょう。お互いに感じていることや考えていることを伝え合うことによって、相互理解が深まり信頼感も強くなっていきます。
また社員の側も悩みの相談がしやすくなります。その結果、問題が発生しても早期に手を打つことができて退職の芽を摘むのにも役立ちます。業務上の失敗のケアとリカバーも同様です。
さらにキャリアプランや将来的なビジョンなどについて話す機会を持つのも有効です。社内の自分の立ち位置や将来の姿が明確になり、将来性への不安を払拭することができます。もちろんセットでプランにのっとった待遇や育成を行うことが必要です。
中堅社員を育成するポイント
中堅社員を育成するためには、いくつかのポイントがあります。次にそのポイントについて解説します。具体的には次の4点が挙げられます。
- 自分の立場を自覚させる
- モチベーションを高める
- キャリアの展望を示す
- キャリアにつながるチャンスを提案する
退職予防と重なる部分もあります。それぞれのポイントについて確認していきましょう。
自分の立場を自覚させる
まず一定の実務経験を経た中堅社員であることの自覚を促すと良いでしょう。新人の頃よりも求められる水準が高まっていること、上司や管理職のフォローも行っていくべきことを理解させなくてはいけません。管理職へと育成するうえで、能力に偏りがない状態へ導く必要があります。
そのうえで、立場に見合ったスキルが備わっているかどうかも自覚させる必要があります。そのために、中堅社員が基礎をきちんと習得しているかどうか、育成時に改めて本人に確認させましょう。自己流のやりかたにこだわると、基本を忘れるおそれがあるため、知識や技術は定期的な見直しが必要です。
モチベーションを高める
中堅社員の時期は、仕事に大きな変化が起こりにくくなります。新たな仕事や役割を任せて、モチベーションの向上につなげるような支援があると良いでしょう。たとえば、あえて初めて経験する業務にチャレンジさせ、仕事を完遂させることで成功体験を積ませるのはその一例です。中堅社員から管理職へとステップアップが期待できるようになります。
さらに並行して、すでに述べたように評価制度の見直しや労働環境の改善も行いましょう。育成そのものではありませんが、環境面からモチベーションを高めることになります。やりがいと正当な評価・働きやすい職場環境がそろえば、おのずとモチベーションは高く保たれます。
キャリアの展望を示す
新人や若手社員の頃は目の前にある仕事をきちんとこなしていくことが成長の第一歩でしたが、中堅社員になるとその先まで見据えた行動が必要です。そのためには中堅社員自身がこれから先どのようにキャリアを積んでいくのかを知っておくことも育成のポイントになります。
実は世の中の多くの中堅社員が自分のキャリア展望についてよく理解しておらず、社内の資格や階級などの制度については認識していても、そこへたどり着く方法を知らないことが多いのです。中堅社員は企業の主力となる存在で、上司と部下の間に立って調整・育成する立場でありながら、個人の業績も高く維持することが求められていると自覚させることも、キャリアを積むための方法です。
キャリアにつながるチャンスを提案する
中堅社員がリーダーや上司となっていくためには、その道筋を知っていることに加えてキャリアにつながるチャンスがあることもポイントです。そのためにはステップアップのためのステージを上司が用意し提案することも、中堅社員のやる気ときっかけ作りに役立ちます。
その際上司はひとりひとりの状況や技能を把握し、それぞれに応じた仕事内容・担当する後輩などの要素をより効果的に振り分けることが必要です。また中堅社員には仕事内容の再確認に加え、自分の殻を破るためにも後輩育成の指導を任せ、上司がそれをうまくフォローしていくことも大切です。
中堅社員向け研修の例
最後に、当社の中堅社員向け研修の例をご紹介します。ここでは次の2つのコースについてまとめます。
- 管理者養成基礎コース
- 指導力開発訓練
前者は中堅社員の意識改革を図ること、後者は中堅社員の指導力を高めることが目的のコースです。では順に内容について解説します。
中堅社員の意識改革を図る「管理者養成基礎コース」
目的
「管理者養成基礎コース」では、組織の管理者に相応しい思考や行動の基準を身に付けることを目的としています。中堅社員のマネジメントスキルの習得に適したコースです。研修中は自身が持つ意見や課題を自覚させ、思考を深めるとともに改善を図ります。また、コミュニケーション能力やスピーチ力など、難易度の高いビジネススキルの習得を目指します。
内容
研修項目の「40の質問」では、短期間で自身の考えを掘り下げ、相手に正しく伝わるように表現する訓練を行います。「行動力基本動作」は、行動力のあるビジネスパーソンが身に付けるべき10箇条を習慣化し、体得させる項目です。ビジネスシーンの基礎である報告・連絡・相談の重要性を改めて学び、行動力を強化します。ほかにも、団結力を高める行進、表現力や発声力を伸ばす歌唱や素読など、多彩な訓練が組み込まれたコースです。
研修スケジュール
中堅社員向け研修「管理者養成基礎コース」の資料請求はこちら 中堅社員向け研修「管理者養成基礎コース」の申し込みはこちら中堅社員の指導力を高める「指導力開発訓練」
目的
「指導力開発訓練」では、中堅社員に管理者としてのリーダーシップを発揮させることを目的としています。部下を統率するリーダーの立場として必要なコミュニケーションを、ロールプレイで具体的に訓練して身に付けさせます。部下への適切な指示出しだけでなく、部下への注意や説得といった難しい局面も含めて経験させ、指導力の強化を図ります。
内容
研修では、まず「指導力10則」としてリーダーシップの原理と心構えを説き、中堅社員に管理者としてあるべき指針を理解させます。「正しい仕事の与え方」「注意する」「褒める」といったロールプレイの項目では、部下を適切に指導するための表現や技術を学びます。さらにコースの終盤では、部下の不満や反発を想定した難易度の高いロールプレイを実施。組織の管理者に求められるハイレベルなコミュニケーションスキルの習得が期待できます。
研修スケジュール
中堅社員向け研修「指導力開発訓練」の資料請求はこちら 中堅社員向け研修「指導力開発訓練」の申し込みはこちら「中堅社員の立場を理解し育成につなげよう」
企業の中堅社員をいかに成長させるかが将来の管理職となる人材の確保につながるため、上司は中堅社員が成長できるための知識や環境を提供する必要があります。具体的な内容をまとめると次のようになります。
- 管理職と新人の間の立場にある中堅社員
- 現代の中堅社員は優秀なものの無理のない仕事を望む
- 育成のためには自分の立場を知り、殻を破らせる
- 社内の資格や階級をアップするにはどうすればいいかを認識させる
- キャリアにつながる仕事を上司が提案する
このようなポイントを知り、上司は中堅社員に配慮しつつ働きかけることで育成に繋げることができるでしょう。
この記事の監修者
株式会社社員教育研究所 編集部
1967年に設立した老舗の社員研修会社。自社で研修施設も保有し、新入社員から経営者まで50年以上教育を行ってきた実績がある。30万以上の修了生を輩出している管理者養成基礎コースは2021年3月に1000期を迎え、今もなお愛され続けている。この他にも様々なお客様からのご要望にお応えできるよう、オンライン研修やカスタマイズ研修、英会話、子供の教育など様々な形で研修を展開している。