ラインケア研修とは?メンタルヘルス対策の重要性や職場環境への効果
2022年6月7日(火)
メンタルヘルスの不調は社会問題としても取り上げられるほど、現代人における大きな問題です。そして、会社にとっては早期発見・対処が必要な課題とも捉えられています。ラインケア研修では、部下のメンタルヘルス不調に関わる兆候を把握し、適切に対応するための方法を学べます。社員の離職といった事態を避けるためにも、ぜひご活用ください。こちらでは、ラインケア研修の概要や研修内容、重要性や効果について解説します。
ラインケア研修の基礎知識
事務所の管理監督者が、メンタルヘルスに関する問題や対応方法について学習することを、ラインケア研修と言います。そもそもラインケアとは、事業場内で上司やマネージャーなどが社員の心身の不調を早期発見し、安心しながら仕事に取り組める体制を面談や指導などを通して作っていく取り組みのことです。研修を受講することは、そのための知識・技能を身につけることにより、職場環境改善につながります。
ラインケア研修では、ラインケアに関する基礎知識から、社内の環境改善に関する効果的で具体的な方法を学びます。たとえば、部下の不調をいち早く把握するためのポイントや、休職している人に対する支援方法などが該当します。
また、受講することでラインケアの目的や効果についても理解が深まります。管理職がラインケアの重要性をしっかりと把握し実行に移すことは、会社全体のラインケアの取り組み強化につながるだけでなく、傾聴力の向上、声掛けの大切さを知ることができます。その意味でも、体系的に学びが得られるラインケア研修は有益かつ効率的です。
ラインケアやメンタルヘルスが重要視される理由
労働契約法第5条には、以下の条文が定められています。
このように、大前提として会社は、社員が会社で安心して健康に働けるよう配慮する安全配慮義務を負っています。たとえば、仕事中のケガや事故を防止するために事務所内設備の安全点検を行ったり、危険な作業がある場合には安全性確保に最大限努めたりしなくてはなりません。
加えて、メンタル面の不調を防ぐことも安全配慮義務に含まれます。必要に応じて就業場所を変更する、作業を転換するといった、適切な措置を講じることが求められるため、社員の健康状況を把握しなくてはなりません。そのためには、メンタルヘルスに不調を来す兆候などを見分けることが重要です。
心身の健康は、仕事のパフォーマンスに直結する問題です。とくにメンタル面の不調は脳機能の低下をもたらし、集中力や判断力の鈍化につながるとも言われます。
たとえば、考えがまとまりにくく、堂々巡りばかりして判断ができなくなるような状況を想定してみましょう。ビジネスにおいて、物事を正しく認識しジャッジしなくてはならない場面は日常的に訪れます。これをいかにスピーディーに処理できるかは、本人の仕事の効率、ひいてはチームの成果にもつながる重要なポイントです。
メンタルに不調を来した状態では、その判断に多大な時間がかかります。また、判断のための思考時間には多くのストレスがかかりますから、心身に疲れがたまります。加えて、上司や同僚からの目が気になりはじめると、不安が大きくなり働くこと自体が大きな苦痛になるのです。
こうした負のスパイラルに陥れば、仕事のパフォーマンスは当然低下するでしょう。メンバーが通常どおり活躍できなければ、その負担はメンバーにも及びます。結果として、会社全体、従業員全体にまで悪影響を及ぼす可能性があるのです。
メンタルヘルスの不調は、うつ病や睡眠障害といった病気を引き起こすことがあります。重症ともなると、長期的な療養が必要になり、離職もやむなしといったケースも考えられるでしょう。
会社にとって、社員の離職は大きなマイナス要因です。とくに、その社員が優秀であればあるほど補填は難しく、新たな人員補充などにも時間・コストがかかり、組織のマネジメントに大きな影響を与えます。そしてそれ以上に、安全配慮義務を怠った結果、離職者を出してしまったということ事態が大きな問題にもなりかねません。
メンタルの不調は事前に察知できるケースも少なくありません。上司やマネージャーが部下の不調に気づけるよう、ラインケアを踏まえたコミュニケーションや対応が求められます。
ラインケア研修でもたらされる効果
上司やマネージャーがラインケアの知識やスキルを身に着けることは、職場づくりにも役立ちます。ラインケア研修では、同僚や部下のメンタル不調の兆候を掴み、不調を見分ける方法などを学びます。また、部下からの相談へ対応したり、メンタル不調の部下が職場復帰するためにサポートしたりといった対応についても習得します。
こうした取り組みについて知ることは、単にストレス要因を事前に把握するだけでなく、リーダーとしてのコミュニケーション能力向上にもつながるでしょう。活発な交流は、職場内の良好な人間関係の構築や、業務改善といった効果が期待できます。また、リーダーシップが発揮されることで、メンバーのモチベーションを向上できます。
このように、職場環境の改善は安全配慮義務を果たすだけでなく、組織全体のパフォーマンスを高める結果をもたらします。最終的には、会社の売上げや利益にもつながる重要な取り組みにもなり得るでしょう。
メンタルケアの不調は、早急な発見が肝心です。その上で、適切な対処を行うことが求められます。
健康上の問題の発生は、社員の離職にもつながります。優秀なメンバーが会社から去る状況は、大きな損失とも言えるでしょう。もちろん、義務である安全配慮が果たされていないこと自体、会社としては避けなくてはなりません。
ラインケア研修で得た知識・スキルを活用すると、メンタル不調の兆候に気付き、適切な判断が行えるようになります。加えて、不調者の相談対応や必要なケアを提供対応につながります。不調者の早期発見ができれば、離職といった事態の予防、防止にもつながるでしょう。
なお、メンタルヘルスの不調は放置することで状況の悪化を招きます。本人にとって辛い時間が続くことはもちろんですが、負担は周囲のメンバーにも及ぶでしょう。できる限り早めに対処するためには、ラインケアの取り組みが欠かせません。
ラインケアが求められるのは、部下だけではありません。実は上司やマネージャーのような管理職にこそ、正しい知識を身につけた上でのセルフケアが必要です。
一般的に、管理職には多くの仕事が集まる傾向にあります。さらに、過密なスケジュールをこなすなかで、人間関係の調整などにも気を揉まなくてはなりません。こうした状況では、ストレスを溜めないこと自体が難しいとも言えるでしょう。実際に、管理職がメンタルヘルス不調に陥る事例は少なくありません。
ラインケア研修で得た知識やスキルは、メンバー向けだけでなく、管理職向けの一面もあります。自分のメンタルヘルス異常の兆候に気がつくことは、その状況を抜け出すための第一歩です。また、不調が起こった際の対応方法を知っていれば、適切な行動を取れるようになります。何より、自分の心身が不健康であると自覚したとき、何をすれば良いのかが分かっていることは、大きな安心感につながるはずです。
「ラインケアは社員と会社を守る」
ラインケアの取り組みは、会社の安全配慮義務にかかわる重要事項です。ただし、その効果は義務を果たすだけにとどまらず、ハラスメント防止、また組織と人員のパフォーマンスを高め、成果を高める結果にもつながります。
当社では「組織力向上研修」をご用意しております。このセミナーでは管理者だけでなく、経営層の皆様に対しても、ラインケアの重要性、考え方を学び、管理者の支援的コミュニケーションのスキルを向上させます。ラインケア研修の一環として取り入れられるプログラムとなっておりますので、ぜひご活用ください。