新人研修・新入社員研修にきつい・厳しいとの声。指導・育成のポイントは?

2022年7月6日(水)

2024年3月30日(土)

新人研修・新入社員研修にきつい・厳しいとの声。指導・育成のポイントは?

採用活動において、若手人材である新卒・既卒・第二新卒の確保は重要です。しかし、多くの時間と費用をかけて人材を確保しても、早期離職する可能性は否定できません。もっとも危険なのは「新人研修後」のタイミングです。新人研修が「辛い」と感じ、「辞めたい」と感じるに至り離職を検討する人は少なくありません。新人社員研修は、新入社員の定着率を左右する重要なものだということです。辛いとまで言わなくとも、「つまらない」「だるい」と思われる可能性はさらに高いでしょう。そこで今回は、なぜ新入社員が新人研修で「辛い」と感じるのかご紹介します。以下の内容について深堀していきます。

  • 新人研修がきついと感じる原因には、環境の変化のほかは研修の内容や方法に対する感じ方がある
  • 新人研修がきついと感じている社員を放置しておくと、早期退職や社内外にとってマイナスの影響の原因となるリスクがある
  • 今後しばらく新人となる「Z世代」の価値観を理解する必要がある
  • 個を尊重しつつ、ていねいな説明と質問を織り交ぜることなどが重要となる

主な原因や対処法、新人研修の質を高めるメリットについて解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次
  1. 新人研修がきついと感じる4つの原因
    1. 原因|生活環境の変化によるストレスを感じている
    2. 原因|研修で覚える内容が多い
    3. 原因|研修の重要性や価値がわからない
    4. 原因|人材開発や教育担当者の指導が厳しい
  2. 新人研修がきついと感じる新入社員を放置するリスク
    1. リスク|新入社員の早期離職のリスクが高まる
    2. リスク|理解度が低い新入社員が現場へ配属される
    3. リスク|自社の評判が下がる
  3. 新人研修をきついと感じさせないための工夫
    1. 工夫|事前に新人研修の目的を伝える
    2. 工夫|新人研修のメリットを共有する
    3. 工夫|プログラムにグループワークを採用する
    4. 工夫|メンター制度を導入する
    5. 工夫|外部のビジネスセミナーを受講させる
  4. 今後しばらく新人となる世代「Z世代」とは
  5. 「Z世代」の職業観・価値観を理解する
    1. 職業観・価値観|効率を重視する
    2. 職業観・価値観|キャリア形成・成長には積極的
    3. 職業観・価値観|プライバシーや個性を重視する
    4. 職業観・価値観|自発的な行動が苦手
    5. 職業観・価値観|失敗を恐れる
  6. 「Z世代」向けの新人教育のポイント・注意点
    1. ポイント・注意点|精神論でなく理屈でていねいに説明する
    2. ポイント・注意点|1人ひとりに合わせた指導を行う
    3. ポイント・注意点|相手の価値観を尊重する
    4. ポイント・注意点|質問を効果的に利用する
    5. ポイント・注意点|マニュアルを整備しておく
  7. 「新人研修を『きつい』と感じさせないために」

新人研修がきついと感じる4つの原因

新入社員が研修を受けているときにきついと感じる原因についてまとめます。次の4つの原因が挙げられます。

  • 生活環境の変化によるストレスを感じている
  • 研修で覚える内容が多い
  • 研修の重要性や価値がわからない
  • 人材開発や教育担当者の指導が厳しい

1つずつ具体的に見ていきましょう。

原因|生活環境の変化によるストレスを感じている

OJTなどの新人研修がきついと感じる最大の原因が、生活環境の変化です。新入社員は中途採用を除き、先日まで学生の人が大半を占めます。生活リズムは比較的自由で、好きなときに起床・就寝し、学業や遊びを満喫していました。しかし、学生気分のままで社会人に出ると、本人が「つらい」思いをします。

多くの社会人は定時までに出社するため、朝は早く起きて身支度を整えます。電車に揺られて出社した後は朝礼に参加し、取引先からのメールを確認したり、視聴を作成したりと、各種業務を遂行します。その上、上司や同僚に気を遣う、仕事への責任感を持つなど、学生時代には経験しなかったプレッシャーを感じます。

社会生活に慣れるまでは、そのギャップに「つらい」と感じるでしょう。気持ちの切り替えが苦手な人ほど、生活環境の変化にストレスを感じるものです。考えようによっては一番辛い時期であり、「どれくらいで慣れるだろうか」などとのんきに構えていることはあまりおすすめできません。「体調不良で行かない」はずが「行きたくない」になり、おかしいと思ったころにはもう手遅れということになってしまいます。

原因|研修で覚える内容が多い

企業によっては、短期間のスケジュールで新人研修を済ませることがあります。この場合、人材育成のコストの観点からやむを得ず、スケジュールを短縮している場合がほとんどです。対して、新入社員側からすると、多くの業務知識やビジネスマナーを限られた時間内で覚えるのは、容易ではありません。研修で得たすべての情報を理解しきれない可能性さえあります。

新人研修の参加者は、周りに後れを取らぬよう必須に勉強します。ビジネスパーソンとしての基本的な考え方、書類の書き方や作り方、「報連相」などのマナー・ルールなど、覚える情報は多岐にわたります。いずれも今後の社会生活を左右する重要な知識です。

しかし、早い段階で内定した人、最後まで就職活動に明け暮れていた人のほとんどは、勉学から遠ざかっています。久しぶりの「学び」に頭が回らなかったり、すぐに疲れてしまったりする人もいます。教育が不十分な状態で現場に配置されたりと、「どうしたらいいのだろう」と戸惑うケースが少なくありません。「察しが悪い」「要領悪い」と見えても、やむを得ない事情があるケースも多いのです。

原因|研修の重要性や価値がわからない

新人研修に参加する意義や価値を見いだせない新入社員は少なくありません。研修で学んでいることが納得できなかったり、自分にとって本当に役に立つのか、あるいはどのような意味を持つのかがわからなかったりする場合です。当然、学習意欲が沸かなかったり、集中できなかったりするでしょう。社会経験がない状態では、会社が活動していく上での考え方や仕事の進め方などが理解できない場合があるのも仕方がないことです。ただしそれを理解させていくことが新人研修の目的でもあります。

この場合、新人研修の目的や効果を会社側が提示できていない可能性があります。マネジメント層を中心に「新人研修の在り方」を見直す必要があるでしょう。

原因|人材開発や教育担当者の指導が厳しい

社会人としての責任や精神力、忍耐力などを教えるため、あえて厳しく指導する研修担当者はいます。適度なプレッシャーは、学習効率を高める大切な要素であり、新人研修の成長を促すために欠かせません。

しかし、厳し過ぎる指導は逆効果です。参加者は「目をつけられるかもしれない」「怖い」と萎縮し、覚えるべき知識が頭に入りません。戦力化にマイナスどころか、場合によってはハラスメントと受け取られかねません。特に環境の変化などほかの要因もあるため、新人研修を行っている時期はきつさを感じやすい状態にあるとも言えます。ほかの要因と組み合わさると相乗効果でさらにつらさが強く感じられる可能性も高いでしょう。

そもそも、「厳しい」「つらい」の程度は人それぞれであり、研修担当者の裁量にも左右されます。研修担当者には、参加者の立場になった指導や、適切なコミュニケーションが求められるでしょう。

新人研修がきついと感じる新入社員を放置するリスク

新人研修がきついと感じる新入社員を放置しておくことには、さまざまなリスクがあります。具体的には次のような点が挙げられます。

  • 新入社員の早期離職のリスクが高まる
  • 理解度が低い新入社員が現場へ配属される
  • 自社の評判が下がる

1つずつ具体的に見ていきましょう。

リスク|新入社員の早期離職のリスクが高まる

新人研修の厳しさから、新入社員の早期離職リスクが高まります。具体的には、研修で教わった内容に違和感を覚えたり、理不尽な思いをしたりした際に「この会社にはついていけない」「自分には向いていない」と考える社員が多いとされます。こうして離職や転職に舵を切る人材は少なくありません。新入社員が転職サイトなどを閲覧していたら要注意です。

新入社員の早期離職は、会社としてもっとも避けたい事案です。採用活動にかけたコストが水の泡となるほか、人材の埋め合わせも必要になります。半年後、1年後など2新入社員の早期離職は、会社としてもっとも避けたい事案です。採用活動にかけたコストが水の泡となるほか、人材の埋め合わせも必要になります。

リスク|理解度が低い新入社員が現場へ配属される

新人研修で十分な業務知識・スキルが身についていないと、現場入りした際、戦力になりません。ミスが多かったりそもそも業務ができなかったりして配属先の業務に支障をきたし、フォローしなくてはいけなくなったりと他社員の仕事が増える可能性もあるでしょう。周囲の余裕がなくなってくると、厳しく当たるようになったりしてますます居心地が悪くなってしまうかもしれません。

また、情報の理解度が低いと、新入社員自身もつらい思いをします。つらい思いは早期退職の原因になる場合もあります。

社内全体に悪影響が広がり、業務効率や生産性の低下、コミュニケーション問題が発生する恐れがあります。とくに悪い状況は悪いスパイラルを生みがちです。1つの悪影響が次なる悪化の原因になりかねません。

リスク|自社の評判が下がる

放置することは2つの意味で自社の評判を下げる可能性があります。まず、新入社員本人がSNSやクチコミサイトなどに不満を書き込むケースです。研修がきついと感じるのは一人前の社会人になるためにやむを得ない部分もあります。しかしきついと感じているのを放置することは、対処する義務を放棄することでもあります。それは不満につながり、批判されても仕方のないことでしょう。放置した結果、悪評が広まってしまう可能性があります。

もう1つは、取引先などからの評判が下がるケースです。不満を持っている新人が、社会人に求められる最低限のビジネスマナーを守るとは言い切れません。OJTなどで取引先とのやり取りがある場合はそのリスクがあります。また業務やマナーを理解していない場合もありえるため、外部から見たとき教育不足という印象を与える可能性もあります。

新人研修をきついと感じさせないための工夫

新入社員には、研修をきついと感じさせないことが必要です。そのための工夫についてまとめます。具体的には次のような方法があります。

  • 事前に新人研修の目的を伝える
  • 新人研修のメリットを共有する
  • プログラムにグループワークを採用する
  • メンター制度を導入する
  • 外部のビジネスセミナーを受講させる

それぞれ具体的に解説していきます。

工夫|事前に新人研修の目的を伝える

新人研修において重要なのは、あらかじめ実施する「目的」を伝えることです。そもそも新人研修は、自社における業務知識の向上やスキルアップを図る場にほかなりません。しかし、社会人になりたての新人にその重要性を伝えるのは、簡単ではないでしょう。

研修担当者には、参加者のモチベーションや学習意欲の向上、興味・関心を引く進め方が求められます。たとえば、図・グラフを多用したわかりやすいカリキュラムを用意したり、ゲーム形式を採用したワークショップ型の研修を行ったりするのが効果的です。さらに研修のゴールを明確にし、参加者のモチベーション向上を促しましょう。やる気を引き出す仕組みを構築することで、新人研修が「つらい」と感じにくくなります。

また、新人研修が「きつい」と感じるのは、生活環境の変化や精神的プレッシャーだけではありません。目的や意義、研修によって得られるメリットがわからないままでは、「何のために参加しているのだろう?」と懐疑的になるものです。それでは座学を受けても、期待する効果は得られないでしょう。

事実、現代においても、新人研修を通過儀礼・恒例行事として扱う会社は少なくなりません。マネジメント層は、新人研修の在り方および実践方法を今一度見直すべきでしょう。

工夫|新人研修のメリットを共有する

研修に参加するメリットを明確化することで、参加者の興味・関心や意欲をかき立てるのがポイントです。特に促したいのが、これから社会人として生きていくための意識変革でしょう。

上記の通り、新入社員は先日まで学生であった若者です。多くは人間関係が狭く、自身の行動に最低限のみ責任のみ持ち、自由に暮らしていていました。高校・大学を卒業して社会人になると、時間的な制限を受けます。

さらに仕事への責任、同僚・上司・部署・取引先との人付き合いなど、個人の好き嫌いの範疇(はんちゅう)を超えた意識や行動が求められるようになります。新人研修は、新入社員に社会人としての自覚を持たせるのに最適なプロセスなのです。そのメリットをハッキリと伝える必要があります。

また、時間的コストの関係で、ビジネスマナーの研修を最低限に留める会社が少なくありません。名刺交換のマナーを筆頭に、適切な電話応対や来客対応は教えるものの、物足りなさは捨てきれません。社内で適切な新人研修を実施できないと判断した場合、ビジネススクールなどから講師を招くのも1つの手です。

工夫|プログラムにグループワークを採用する

研修プログラムにグループワークを採用するのがおすすめです。同期と交流する場やきっかけを持たせることで、仲間意識が芽生えやすくなります。

一方で、同期はライバルでもあります。研修中に互いに刺激を受け、仲間として認めあったり、協力して仕事することに「やりがい」を見いだせたりする可能性があります。結果、組織における自身の役割を理解したり、コミュニケーション能力やチームワークが向上したりする効果が期待できます。

またグループワークはインプットではなくアウトプット型の学習なので、気分転換になるほか参加意識・モチベーションを持ちやすくなります。また単純に、インプットではないため覚えなくてはいけないというプレッシャーもなく、ワークの結果も個人だけのものではありません。そういった意味でも不安を感じずに参加できるという側面があります。

工夫|メンター制度を導入する

先輩の従業員にメンターとしての役割を与え、新人研修に参加させるのもおすすめです。これを「メンター制度」といい、すでに現場で活躍している先輩社員に研修後のケアやアフターフォローを任せます。メンターは、他部署の社員など新入社員と利害関係や業務上のつながりがない社員を選びます。

新入社員からすると、先輩社員は上司に比べて距離感が近く、業務に関する不安・悩み、課題を相談しやすい傾向にあります。新入社員の声をヒアリングすることも可能になり問題の解決が期待できるほか、人に話を聞いてもらうだけでも気が楽になったり自分の中で問題点を整理できたりするメリットがあります。

部署を超えたネットワークが社内に構築されていくことにつながり、コミュニケーションが活発になって会社にとっても有益です。

工夫|外部のビジネスセミナーを受講させる

社員研修の専門サービスを利用し、プロの元で指導を受けさせる手法もあります。特に効果的なのがビジネスマナーの研修です。ビジネスマナーは汎用性が高く、外部に委託しやすい内容です。委託する場合は専門講師が担当するため、短期間で効率的にビジネスマナーを習得できます。社内の負担が減る分、企業理念や実務のスキルなど自社でしかできない内容に注力することもできます。実際、業務に関する研修は社内で実施し、ビジネスマナー研修は社外に委託する企業は少なくありません。

たとえば、「社員教育研究所」では新入社員向けの研修プログラムを豊富に用意しています。テレワークを採用する企業に適したオンライン研修にも対応するため、社内から研修を受けられるのもメリットです。詳しくは「社員教育研究所」の公式サイトや関連記事をご覧ください。

今後しばらく新人となる世代「Z世代」とは

「Z世代(ゼットせだい)」とは、1990年半ばから2010年代前半生まれの世代のことを指します。現在新入社員として入社してくる世代に当たります。そして今後10年以上、このZ世代の入社が続くことになります。

Z世代の特徴や価値観を理解することは、新入社員の研修のみならず業務上の対応などを行う上で大きなプラスとなります。仕組みを設計する際にその考え方を反映させると、より高い効果を期待することができます。今後労働力の減少が進むため、人的資源を確保するために大きなアドバンテージとなるでしょう。

Z世代は今後消費の中心となっていく世代でもあり、ビジネスの内容によってはメインとなる消費者として自社のターゲットにもなっていきます。あらゆる意味で、Z世代を理解しておくことは企業にとって役立ちます。

「Z世代」の職業観・価値観を理解する

企業にとって理解しておくとプラスとなる、Z世代の職業観や価値観をまとめます。ここでは次の5つの点について解説します。

  • 効率を重視する
  • キャリア形成・成長には積極的
  • プライバシーや個性を重視する
  • 自発的な行動が苦手
  • 失敗を恐れる

1つずつ見ていきましょう。

職業観・価値観|効率を重視する

まず効率を重視するという点が挙げられます。実際に、Z世代は効率化に必須となる情報処理能力が高いとよく言われます。そのため、効率が悪いと感じられる業務の進め方は敬遠されます。ムダな会議なども同様です。フレックスタイムやテレワークなど、仕組みについても能率的なものを好みます。研修も効率を意識しましょう。

そのほか、あらかじめ調べて情報を得てから行動に移す傾向があります。Z世代はデジタルネイティブ(幼少期からスマートフォンなどデジタルデバイスに慣れ親しんでいる世代)でもあり、インターネットで検索することにも積極的です。

ただしデジタルネイティブという点については、コンピューターよりスマートフォンを主に使ってきているためコンピューターの操作が苦手な傾向があります。コンピューターの基本操作は研修内容に盛り込んだ方がよいでしょう。

職業観・価値観|キャリア形成・成長には積極的

Z世代はキャリア形成や自己成長に積極的です。バブル崩壊以降に生まれ、不況・経済的停滞の世界しか知らないこともあり、自分の身を自分で守るという意識が強いと言えます。少子高齢化がますます進む将来のことを考えても、自分のキャリアに対してはシビアで現実的です。そのため生活していくために有益なキャリア形成や自己成長には自発的に取り組みます。

研修においても、学んでいる内容がキャリアにどのようにプラスになるのか、どのような成長につながるのかを伝えると、モチベーションを高めることができるでしょう。

逆に、研修も就業後もキャリアにプラスとならないと思われてしまうことがあると自社にとってマイナスです。業務内容をステップアップさせていったり評価制度を整備したりするなど、成長を実感させる仕組みづくりが重要です。

職業観・価値観|プライバシーや個性を重視する

プライバシーや個性を重視するという特徴もあります。多様性を受け入れることが自然だという価値観があるため、自分と違う考えに寛容であると同時に自分の考えも尊重されることを期待します。またプライバシーやプライベートに立ち入られることを好みません。

そのため仕事においては、ワークライフバランスを重視し、長時間労働や飲み会の強制参加なども嫌います。距離を縮めようという気持ちからであったとしても、過度なコミュニケーションや付き合いの強要はモチベーションを下げる結果となります。注意しましょう。

研修においても、立ち入ったことを聞かない、時間オーバーにならない研修内容・時間配分に抑える、といった配慮が必要です。Z世代は情報収集能力が高いため、不満や違和感を感じさせると他社の情報を集めて比較されるものと思いましょう。

職業観・価値観|自発的な行動が苦手

Z世代には自発的に行動することが苦手という面があります。相手を尊重しながら協力して作業するのは得意ですが、反対に自分で判断して自力で進めていくのは不得手です。受け身と評価されがちですし、Z世代へのアンケートを見ると本人たちにもその自覚があるようです。

そのため指示されたことしかやらない、できないとよく言われます。またZ世代は周囲とうまくやっているか不安に感じる傾向がありますが、それも協力し合うことの方を重視する表れだと言えるでしょう。

自発的な行動を促すためには、自力で考えるための考え方の道筋・ロジックを教えたり、自分の判断が許される範囲や自分の役割を示したりすることが必要です。多くの企業において、Z世代の自発性・能動性を育てることが課題となっています。

職業観・価値観|失敗を恐れる

失敗を恐れるという性格もZ世代に共通する特徴です。失敗を恐れるあまり新しいことに挑戦することが苦手です。競争が苦手というのも失敗を恐れる気持ちとつながるかもしれません。事前に情報を収集するのも同様です。

成長に失敗はつきもので、失敗から得られることは数多くあります。しかしあえて失敗させて学ばせたい場合は注意が必要です。失敗しても大丈夫としっかり伝えたりサポートの環境づくりをしたりして、安心感を持たせましょう。また先輩や上司も失敗しながら現在進行形で努力・改善しているのだとわからせるのも効果的です。

なお失敗を恐れる傾向はマイナス面ばかりではありません。新規プロジェクトの立ち上げなども、初めに情報を収集してリスクの対策をしてからスタートします。Z世代の思考はこの立ち上げのやり方に似ています。活用する方法を模索するのも1つの方法です。

「Z世代」向けの新人教育のポイント・注意点

先に世代を問わず普遍的な新人教育のポイントを示しましたが、ここではZ世代の特徴を踏まえたポイントや注意点についてまとめます。以下の点について解説します。

  • 精神論でなく理屈でていねいに説明する
  • 1人ひとりに合わせた指導を行う
  • 相手の価値観を尊重する
  • 質問を効果的に利用する
  • マニュアルを整備しておく

1つずつ見ていきましょう。

ポイント・注意点|精神論でなく理屈でていねいに説明する

まず伝えたいことをロジカルに説明することが大切です。今管理職にある世代は理不尽な上司に耐えながら実績や地位を築いてきた人も多く、それを通過儀礼や必要悪と考えたり基準にしたりしているかもしれません。しかし終身雇用制が崩壊した現在において、効率を重視するZ世代にはその考え方はもはや通じません。

「教わるのではなく見て覚える」「部下はあうんの呼吸で察するもの」といった教育や指示になっていない考え方も無意味です。本来は当然なのですが、わかるように説明して効率よく育成することが求められます。

OJTのような場面はもちろん、座学の研修も論理的に習得させることを前提に設計します。内容を確認・点検する際も、ロジカルな組立になっているかどうかという視点で行いましょう。

ポイント・注意点|1人ひとりに合わせた指導を行う

1人ひとりの個性に合わせて指導方法を変えることもポイントになります。多様性を認めることが当然のZ世代にとっては、自分の個性を認められることも当然だからです。性格を踏まえた指導が好まれます。

しかしZ世代に共通する特徴を考慮すると、共通して有効と考えられる方針・姿勢もあります。たとえば成長に積極的という性格に合わせて、相手に伝わるように良いところを褒めます。競争を好まない、個性を尊重してほしいという傾向にも、それぞれの良いところを褒めることは有効です。失敗を恐れる傾向の対策としては、叱るときは理由もセットで説明して繰り返さなくて済むように伝えます。もちろん理不尽なほど強い調子や感情的な口調、人前で見せしめに叱ることなどは厳禁です。

これらの指導方針はどれもネガティブなものではないので、安心してどの新入社員にも適用できるでしょう。

ポイント・注意点|相手の価値観を尊重する

相手の価値観を尊重するのも大切です。1人ひとり指導方法を変えることと似ている部分がありますが、そちらは価値観というよりは主に相手の性格に関する注意点です。

価値観は「どういうものをよしとするか」の基準です。確かに、多くの人が同じように持っている「経済的に安定した暮らしがしたい」のような価値観もあります。同じ価値観の下では、優劣を付けることができて「どちらの方がよいか」という判断も共有できます。たとえば経済的な安定度なら給与額で優劣を決めることができます。

しかしたとえば「安定したい」と「挑戦したい」とでは価値観が異なります。またどちらが正しいと決めることも困難です。このように価値観が異なっている場合、とくにZ世代に対しては頭ごなしに相手の考えを否定したり決めつけたりしてはいけません。相手の考え方を尊重することが求められます。

ただし企業としての方針に反する場合などがあるかもしれません。何でも受け入れる必要はなく、バランスや妥当性が必要となります。

ポイント・注意点|質問を効果的に利用する

質問を効果的に利用することもZ世代の育成に有効です。Z世代は自分を尊重することを求める傾向や受け身になりがちな傾向があります。考えを押し付けられることは好みませんが、それと同時に自発的に考えたり行動したりするのが苦手でもあります。質問はどちらの問題も解決することが可能です。

質問により自分で気付かせることができれば、押し付けられたと感じることがありません。また質問することで自分で考えるきっかけになります。相手を尊重しながら、主体的に考える力や行動力を身に付けさせることができます。

質問の効果を高めるためには、目的やゴールをしっかり伝えて考えさせること、口出しし過ぎないよう黙って見守りながら適切なタイミングを見計らってフォローすることが必要です。

ポイント・注意点|マニュアルを整備しておく

マニュアルを整備しておくこともZ世代の育成に有効です。一度聞いたことを繰り返し聞くことは、新人にとってはなかなかやりにくいものです。失敗への恐れがあるので自力で調べられることは自分で調べますが、調べられないとストレスを感じることとなります。そんなときにマニュアルが用意してあると、自ら学んで学習することができます。

実際に、労働環境が変化しOJT・Off-JTによる研修時間が減少しつつある現在、自力で学習することの重要度が増しています。マニュアルは自ら学ぶ際の大きな助けとなります。

「新人研修を『きつい』と感じさせないために」

新人研修は、自社の業務知識を学ぶと当時に、学生から社会人に意識変革するためのプロセスです。新入社員が「きつい」と感じるのは当たり前であり、また会社側も避けては通れません。したがって、マネジメント層や研修担当者は、「つらい」と感じさせないよう対策することが必要です。

また、新人研修の質は離職率に影響するファクターです。適切な新人研修の実施が難しいと判断した場合、「社員教育研究所」をはじめとするビジネスセミナーの活用を視野に入れましょう。このページの最上部やこの下にも連絡先がありますので、お気軽にご相談ください。



この記事の監修者

株式会社 社員教育研究所 編集部

株式会社社員教育研究所 編集部

1967年に設立した老舗の社員研修会社。自社で研修施設も保有し、新入社員から経営者まで50年以上教育を行ってきた実績がある。30万以上の修了生を輩出している管理者養成基礎コースは2021年3月に1000期を迎え、今もなお愛され続けている。この他にも様々なお客様からのご要望にお応えできるよう、オンライン研修やカスタマイズ研修、英会話、子供の教育など様々な形で研修を展開している。

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